Adobe Summit 2024イベントレポート
こんにちは、プロダクトデザイン室で、PdMとして『ゼクシィオンライン招待状』を担当している川端と、『SUUMO』を担当している河野です。
今回は、3月末にラスベガスで行われた、Adobe Summit 2024のイベントをレポートしようと思います!当日の雰囲気や、生成AIをはじめとしたトレンドの最前線をお伝えしていきます。
写真などふんだんに盛り込みながら、当日の雰囲気も含めてレポートできればと思いますが、とりあえずサマリを知りたい!という方は、キーワード・学びの章から読んでいただけると良いと思います👌
この記事では、今回のセッションで使われた言葉をそのまま、もしくは日本語に直訳で利用していますが、先んじてよく出てくる言葉の補足をしておきます。
Adobe Summit とは
Adobe社が運営するイベントで、Adobe Analyticsや、Adobe Experience Manager、Adobe Real-time CDPなどの、データ分析・顧客管理ツールの新機能披露や、利用している企業の事例紹介などが行われます。
今年度は特に、参加者の立ち話でも「生成AI(Gen AI)」という言葉が頻繁に飛び交うほど、AIに関する話題が多くありました。
日本からの参加者も60人と多く、Adobe Japanさん主催で、会場ツアーやラップアップなども行われました。
スケジュール・各日サマリ
基本的には午前中にキーノートに参加し、午後にパラレルセッションが行われるので、そちらは気になるテーマのセッションを選んで参加しました。
懇親会は、ラスベガス最新のクラブAREA15を貸し切って行われ、非常に豪華なイベントでした!
03/25 現地到着🛬 Adobe Summit0日目
この日はイベント前日でしたので、 Adobe Japanさんが主催している事前の会場ツアーに参加しました。
Adobe Summitはベネチアンというホテルの1階から5階のセッションホール全てを貸し切って行われるのですが、とにかく広い(一日平均2万歩以上歩きました)ので、このタイミングでツアーを開いていただいたのは大変助かりました。
また、同じく参加される日本人の皆様との交流もあり、何人かの方とはその後も食事をしながら情報交換を行いました。
03/26 Adobe Summit1日目
初日キーノートでは、今年度のテーマである「Customer Experience Management in the era of AI」が発表されました。最新機能のお披露目も、もちろん生成AIをふんだんに使った内容で、 Cookie レス時代の顧客情報の一人ひとりにあったコンテンツの生成、その後のPDCAまで、多くの作業がAIと協働していけるようになっているのを肌で感じました。
セッションの合間に、Adobe Japanさん、アクセンチュアさんの主催で、ランチ会が行われ、こちらでも生成AIによって何ができるか、情報交換をしました。
03/27 Adobe Summit2日目
2日目のキーノートは、実際にAdobeを導入している企業の事例紹介が行われました。デルタ航空の事例は、同社のCEOが自ら登壇し、顧客のロイヤリティプログラムの裏側を語りました。
またAdobe Summitの目玉として「Sneaks」というセッションがあります。ここでは、まだ実用段階ではないものの、検討中の最新機能が紹介されます。
プロンプトを入力するだけで、顧客一人ひとりに向けたキャンペーン戦略を立案・配信・数値分析することができたり、デザインガイドラインをもとにした、ブランド規定違反のないLPを瞬時に作成したり、など大きな業務効率化が見込めそうなアイディアがたくさん飛び出しました。
また、この日は”Bash”という懇親会のようなパーティーが、ラスベガス最新のクラブAREA15で開催されました。本当に豪華でした、、、!
Adobe Summitの参加者と最新のエンターテイメントを楽しみました(個人的にですが、OMEGA MARTというアミューズメントパーク? が非常に楽しかったです!)
03/28 Adobe Summit3日目
3日目はキーノートはなく、パラレルセッションのみ行われました。そして全て終わった後にAdobe Japanさんが開催する、日本からの参加者向けのラップアップに参加しました。他の参加された企業さんと、感想の交換などもあり、より一層理解が深まる良い機会でした。
キーワード・学び
今回様々なセッションを聞いた中で、得られた学びを共有します。
業務効率化に伴う、チーム編成・ワークフローの考え方の変化
AIというと「大変な作業をAIにやってもらう」という、作業の指示出しのイメージを持つ方も多いと思います。
ですが、Adobeのパビリオンでは「要件定義書をAIにインプットすると、TODOタスク、担当者の割り当て、スケジューリングまでおこなうAI」を利用した Adobe Workfront というサービスのデモを見ました。
指示を受けて何かを制作するという仕事だけではなく、指示を出したり、組織マネジメントをしたりするという領域においても、AIが活躍し始めていると感じました。
これからのワークフローについて語るセッションの中でも「どこにAIを入れるか、ではなく、どこに人の介在価値を発揮させるか」という話がされていたのも印象的です。考え方が大きく変わる転換期にいるのだなと感じました。
Cookieレス時代の顧客体験管理
Cookieレスの時代において、どのように顧客に適切な情報を届けるか、というのはプロダクトを作る人間にとって、非常に重要な論点です。この中でより顧客情報、その管理の重要性が高まっています。
どのようなタッチポイント(オフライン/オンライン)で情報を取得し、顧客の損失がないように、どのように管理されるべきか、そして顧客の利益につながるためにどのように利用すべきか、というポイントでさまざまな事例が紹介されました。
この顧客情報に関する話は、後述する「パーソナライズ」や「信頼」という話とも繋がってくる重要なテーマです。
より個別最適化されたパーソナライズ
これからのAI時代において、顧客情報の取得、管理は非常に重要になってきます。オンライン・オフラインで得られる一つひとつのbit log(小さいログ情報)を組み合わせて、一つのサービスから何億パターンものアプローチを行うことができます。
そのアプローチへAIを使い、高速で一人ひとりにパーソナライズさせることができるということが語られていました。
これにより、これまで以上に解像度高く顧客を捉え、オンライン/オフライン問わずあらゆるチャネルでパーソナライズされた情報を提供する、という事例が様々な企業から話されていました。(オムニチャネル)
MLBなどは、球場の観戦体験向上のため、アプリ通知などデジタルのチャネルと、球場というオフラインのチャネルをうまく使った取り組みが紹介されました。
こういったオンライン/オフラインのチャネルを両者ともにうまく使いカスタマーのエンゲージメント向上を狙う、オムニチャンネル施策がより一般的になってきているのを感じます。
ブランドとしての品質担保と信頼の獲得
生成AIによってコンテンツを制作していく中で出てくる課題にも、答えや兆しが見つかりました。Adobe Summit 2024においては大きく二つの課題が扱われていました。
一つは「生成されたものがAIっぽいもの、世の中にありふれたものになってしまうのではないか?」と言う課題。
これについては、ブランドらしさを定義するルール(デザインやライティングに関するガイドライン)をあらかじめAIに学習させておくことで、ブランドらしさを損なわないコンテンツ生成できる仕組みがあることを学びました。(今後リリースされる Adobe GenStudio にその機能が組み込まれているそうです)
それによりグラフィックや、デザインだけでなく、キャッチコピーまで生成できるようになるということで、いよいよクリエイティブ制作全般をAIメインで行うことが実用化レベルまで達しているのを感じました。
二つ目が、「生成されたものが、著作権に違反したものを含んでしまうのではないか?」「自分たちがインプットしたデータが、他社に利用されてしまうのではないか」と言った不安感。
これについて、Adobeは明確に「AdobeのGenAIは、企業に信頼できるAIを提供することを念頭に置き、設計されたAIである」と言い切っています。つまり、AIのトレーニングは著作権侵害のないものを利用することで、企業の意図しない著作権違反を防ぐ。企業のトレーニングデータはきちんと守る(他社利用を防ぐ)。ということです。
昨今では、AIを使ったディープフェイクなど情報が悪用されることも増えており、「情報をどのような目的で、どのように活用するのか、それにより顧客にどのようなメリットが還元できるのか」といった説明責任を果たすことは、AI時代により一層求められることなのだと感じました。
リクルートもAI活用方針や、AIガバナンスの取り組みを掲げています。
AIを利活用する方法を考える私たち自身もこの方針をベースとしながら、プロダクトを通じたユーザーとのコミュニケーションを考え、信頼を獲得していく必要があると考えています。
終わりに
Adobe Summitは前日ツアーを入れて4日間。私たち自身海外へ行ったのが4年前(コロナ禍前)だったので、かなり久しぶりの海外でした。
ラスベガスという最新のエンターテイメントが集う都市と、カンファレンスでの最新のトレンドに関する学びに日々刺激を受け、あっという間に時間が過ぎてしまいました!
これからも新しい知識に貪欲に、そしてインプットしたものをアウトプットし実行する力を全力で発揮しながら良いプロダクトを世の中に送り出していきたい、と改めて身が引き締まりました。
今回の学びが、読んでくださっている皆様にとっても学びとなれば幸いです!ここまでお読みいただきありがとうございました!