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SXSW Sydney 2023 イベント参加レポート

こんにちは!リクルートのSaaS領域で「Air ビジネスツールズ」プロダクトマネージャーを担当している井上 翔宇と申します。

今回は2023年10月に参加してきたSXSW 2023 Sydneyのレポートをまとめていきます。


SXSW(サウス・バイ・サウスウェスト)とは

毎年3月にアメリカ合衆国テキサス州オースティンで開催される、映画、音楽、インタラクティブメディアを融合させた世界最大級のイベントです。
元は音楽フェスティバルが起源でしたが、1987年の誕生から30年以上を経て、現在ではテクノロジーカンファレンスとしての側面が強くなっていったそうです。
今回のSXSW2023 SYDNEYは10月にオーストラリアのシドニーで行われ、アジア太平洋地域で初めての開催となりました。

SXSW 2023 Sydneyはシドニーの街全体で行われました。音楽ライブや映画は街中のホテルで開催されていることが多いのに対して、テクノロジー関連の展示会やカンファレンスは主に街の中心部にて開催され、中心の公園であるタンバロンパークには屋外の特設のイベントブースが設置されていました。

イベントブースの中央には屋外ホールが設置され、ライブやゲーム対戦などさまざまなイベントが行われていました。

音楽ライブの様子

今回、私たちは先端技術の動向把握を中心にSXSWに参加したため、その内容について記載します。

SXSW2023で全体的に感じたこと

セッションについて

キーノートなどの人気セッションには、メインホール会場に入りきらないほどの人が集まっていました。

SXSW自体はエンターテインメント的なテーマをメインとしたイベントなのですが、特性上テクノロジー文化とも融合しています。そのため、テクノロジーを扱う上での倫理や多様性観点での懸念など、「テクノロジーとどう共生していくか?」というテーマが多く扱われることが多かったです。
オーストラリアは移民が住民の多くを占める国であり、多くの人種が集まるからこそ「多様性を孕んだ上での共存」という考え方と親和性が高く、この地でSXSWというイベントを行うことには意義があるのだと感じました。

テクノロジーのテーマとしては、やはりご時世的に生成系AIに関するものは多めでした。他にも従来のAIに関する内容や、自動運転、メタバース、Webに関するテーマなど、先端技術を中心に幅広く扱われていました。

技術だけでなくエンタメを中心としたセッションも多く、「熱狂はどのように生まれるか?」など、人の心を動かすための考え方についての講義も非常に興味深かったです。また、多くのセッションはプレゼンテーション形式ではなく、対談形式で行われていました。

一部、セッションの内容を簡単に共有させていただきます。

1.AIによる人のクリエイティビティへの影響: David Droga(Accenture, Sunita Gloster(Gloster Advisory)

AIに置き換わる仕事、置き換えられない仕事、の議論はよくありますが、以前より言われていた「人間の創造性が活きるクリエイティブな仕事は残る」という考え方は生成系AIの出現後、否定されることが多くなったと感じます。
クリエイティブを生業としている人は、業務内容の抽象度が高いながらも実態は定型的な仕事に従事している割合も多く、結果としてそれらはAIが得意とする領域となってしまいました。
AIに置き換えられないためには、消費者の行動変化を捉えつつ顧客との関係性を維持し続け、プロダクトやサービスを生み出し改善していくことが重要であり、そのことが真の創造性につながると話をされていました。
既存の慣習や長年の経験則に基づく定石からではなく、今の顧客に焦点を当てることが重要であると感じました。

2.AIとセキュリティ:Andrew Pade(オーストラリア銀行) Bastien Treptel(ホワイトハッカー) 他

AIの発展によるセキュリティ面の懸念について、元ハッカーの方を交え対談形式で講演されていました。
内容は、AIをサーバセキュリティに活用する事例と、ハッカーがハッキングする際にAIを活用している事例についてです。
セキュリティ側では、問題が発生する前に、ユーザーの操作ログや外部からのハッキングの兆候をAIを活用して特定する事例を紹介していました。ハッカーの利用事例としては、マルウェアを中心に学習した生成AIを作っているものもあり、攻撃側も簡単にフィッシングなどの仕組みを構築することができるそうです。
また、ハッカー側はターゲットを、セキュリティにお金を掛けている大手企業より中小企業以下に設定する方が費用対効果が高いため、中小企業をターゲットにすることが多いということも語られていました。

3.生成AIを活用した小売業における顧客体験の革新

生成AIを導入した、オンラインにおける小売の新しいアプローチについても紹介されていました。
従来の体験では、検索エンジンのように顧客が欲しい商品をWebサイト上で探していましたが、対話型AIを活用することにより、実際の小売店で店員が商品案内を行うように顧客一人一人に合わせた購買体験を実現することが可能になったとのことです。
将来的には、Webサイト上で顧客が何を探しているか、その背景まで含めてAIが理解しながら、商品やスタイリングを提案できることを目指しているそうです。

4.生成AIを活用したオンライン購買体験の変化

Pumaでは、stylisticsというAIを活用したデジタルビジュアルマーチャンダイジングツールを利用し、コーディネートの提案をしています。
従来のオンラインの購買体験では、顧客が過去に閲覧した製品のバリエーションや、他の顧客が購入した製品を表示するなどの提案が一般的でした。
ただし、顧客の大半は個々の服装を探すというよりは、トータルのコーディネートを作りたいと考えています。実際の店舗では、店員がコーディネート提案を行なっていましたが、生成系AIの出現により、オンライン上でもコーディネートをAIが代行して考え、イメージも合わせて提案できるようになりました。
また、 stylisticsを利用することで人が試着を繰り返すだけでは考えきれないほどの商品のコーディネートパターンを作り出せるため、より適切な顧客に応じたコーデイネートの提案ができるようになったそうです。

また、AR・アバター技術の進歩により、現実とデジタルの融合がより進むため、これらの購買体験は更に進化するものだと予想されます。

展示会場(Expo)

Expoではロボットやセンシング技術、VRの体験コーナー、スタートアップ企業のブースなどが出展されていました。会場の大きさは普段開催されているオースティンのSXSWに比べるとコンパクトだそうです。

従来のSXSWにも出展されるようなロボットや空飛ぶレースカーなど、先端テクノロジーをハードウェアに適用した展示はこちらでも多く出展されていました。

また、スタートアップ企業のブースも多く存在しており、日本国内でもユーザーの多い画像生成AI、「Leonard.ai」も出展されていました。

このような美しい画像を簡単に作成することができます

「Air ビジネスツールズ」との関連性

私が携わるAirビジネスツールズは、主に店舗型のビジネスを行っているお客様にご利用いただいています。
我々のツールを使っていただくことにより、店舗運営にまつわる大量の業務を効率化し、お客様が理想とする店舗の実現を目標としています。
そのためには現実空間の店舗情報をもとに、デジタルの製品である「Air ビジネスツールズ」がどこまで情報を汲み取り、どこまで提案を行えるか、が鍵となってきます。
今回のSXSW Sydneyではデジタルとリアルの垣根が消えていく話や、生成系AIで業務を効率化する話、今までの技術では提案できなかった価値を新たに提案できるようになった話をセッションで聞くことができました。
これは「Air ビジネスツール」にも全て関わる話だと考えており、いかに店舗と融合したプロダクトになるか、それにより業務を効率化していけるか、新たな価値を作っていけるか、がポイントになると考えています。
ただし、あくまでAIはHow(方法)であるため、本質的に大切なのは顧客の価値の創出である点は忘れず、AIや最新技術に向き合いながらプロダクトの改良を続けていきたいと考えています。

プロダクトデザイン室では、一緒に働く仲間を募集しています。