ゲーム畑から転身。デザインで暮らしの不便を解決したい
ゲーム制作で培ったスキルを「暮らしのアップデート」に活かす
――最初に、渡邊さんの学生時代からリクルートに転職するまでの話を聞かせてください。
大学では、ビジュアルデザインを学んでいました。怪獣の「モスラ」が好きだったので、蛾をモチーフにした水彩系のイラストを描いて、それをコラージュする作品を制作していましたね。
卒業後に何をしたいかよく分からないままデザインの仕事を探し、映画や占いなどのサイトを手がけていたベンチャーに就職。入社当時はガラケー向けの恋愛シミュレーションゲームのデザインを担当して、それから占い、ヨガ、女性の健康系サイトなど、いろいろなサイト制作を経験しました。
デザインだけではなく、コンテンツに対して自分のアイデアを反映できる環境だったので、とてもやりがいがありました。ただ、もっとデザインの幅を広げたいと考えて、ソーシャルゲーム業界大手の企業に転職しました。そこでは7年間働きました。
――ずっとゲーム畑だったんですね。転職を意識したきっかけはあったのでしょうか?
きっかけは、自分自身が―結婚や引越し、家の購入などのライフイベントを一気に経験したことです。「みんな、こんなにしんどいタスクをどうやってこなしているんだろう?」と思うくらい大変で(笑)。「もっと便利にならないのかな?」と、課題意識を持つようになりました。それで、もっと生活に紐づいたサービスのデザインをしてみたいなと。デザイナーとしての自分の経験を、暮らしの不便の解決に生かせるのではないかと思い、転職を検討するようになりました。
――最終的に、リクルートを選んだ理由は?
もちろん、ライフイベント関連のサービスを手がける企業であることが決め手にはなったのですが、何より面接が楽しかったんですよね。『ゼクシィ』『スタディサプリ』など複数のサービスのデザイナー、エンジニア、プロダクトマネージャー6人くらいが面接官で、みなさん、いい意味で雰囲気が緩かったんですよね。「ゲーム畑で育った人間ですが、大丈夫ですか?」って聞いたら、「結局やることは一緒だから」みたいな(笑)。フィーリングやノリが合う気がして、自然と「ここで働きたいな」という気持ちになりました。
高校生の進路選びに携われることがやりがい
――リクルートに入社して、今年で4年目(2022年9月時点)とのこと。普段は、どのような仕事をされているのでしょうか?
今は『スタディサプリfor SCHOOL』のアプリデザインを担当しています。高校生と大学・専門学校をマッチングするアプリで、必要な機能を洗い出して、営業や企画のメンバーと相談しながらデザインに落とし込んでいく仕事です。具体的な役割としては、ユーザーインタビューで高校生に話を聞いたり、営業とブレストしたり、エンジニアと機能を揉んだり、いろいろな角度からアプリを磨くことですね。
――仕事のどんなところが面白いですか?
やはり高校生の進路という、人生の大きな節目に関われるところです。進路を選ぶのって本当に大変じゃないですか。『スタディサプリfor SCHOOL』は、忙しい高校生の負担を減らし、自分にとって少しでも良い選択をしてもらうためのツールなので、責任も大きいですがやりがいは感じますね。
――具体的に、どのような機能のデザインを担当されているのでしょうか?
たとえば、「適性診断」の機能では、紙で診断を作っていたときの要件をまとめるところから、デザインに落とし込むまで、色々な工程の調整を担当しました。100問以上あるのですが、もともと紙で行っていた診断をデジタルのデザインに移行する作業がとても大変でしたね。毎日ずっと紙のデータと向き合って、どうしたら高校生に取り組んでもらいやすくなるかを考えながらデザインを作り上げていきました。
ローンチしてみると、高校生から「結構当たります」という声が多く寄せられて、頑張りが報われた気持ちになりましたね。リクルートに入社するときは「暮らしの不便」を解消したいと思っていましたが、「学び」の領域でやりたかったことを昇華できていると思います。
――転職時に思い描いていたことを実現できているわけですね。
そうですね。『スタディサプリ』は、生徒の性格や適性、学びなどへの興味関心をもとに進路を探せる教材や情報メディアの提供をすることで、偏差値によらない本質的な進路選択をサポートしているんです。その価値観にすごく共感していますし、『スタディサプリ』で心から納得できる進路選択をしてもらえたらいいなと思って、日々仕事に取り組んでいます。
スキルの高いメンバーと、チームで働ける喜び
――ちなみに、チームの雰囲気はいかがでしょうか?
すごく良いと思います。デザイナーだけでなく、エンジニアのメンバーも和気あいあいとしていて、プライベートでも仲良しです。今はリモートワークなので直接会う機会が減ってしまいましたが、オンラインでよく雑談しています。最近は、ホラー映画やラーメンの話で盛り上がることが多いですね(笑)。みなさん、気難しい感じがまるでなく、人懐っこくてコミュニケーション能力が高い人ばかりです。
――皆さん、仲良しなんですね。渡邊さんがチームワークで大事にしていることは何でしょうか?
変な言い方かもしれませんが、人の意見に引っ張られ過ぎないようにしています。これは、前職からのモットーですね。デザイナーって、いろいろな人の意見に耳を傾けなくてはいけない反面、全部聞こうとすると振り回されてアイデアがつぶれてしまうんです。もちろん良いものは受け入れながらも、取捨選択する意識を常に持つようにしています。
――デザインの軸が揺るがないようにするためにも、割り切ることが大切だと。
そうですね。大なり小なり何か新しいものをつくるとなれば、各自こだわりが生まれます。でも、プロダクトデザイン室の開発メンバーは、「ユーザーに喜ばれるものをつくる」という同じ方向を見て仕事をしているので、多少の意見の違いはあっても、やりづらいと感じることはありません。それに、協働しているパートナーの方も含めスキルがめちゃくちゃ高い人たちばかりなので、仕事はすごくやりやすいです。
――具体的に、どのようなスキルを持った人がいますか?
たとえば、デザインだとFigmaにものすごく精通していて、先生か!って思うくらい詳しい人とか、すごくかっこいい画面をつくってきてくれる人とか。同僚はプロフェッショナル揃いですね。
――渡邊さんは、ご自身の強みをどう分析されていますか?
私は、どちらかというと要件を定義したり、案件をスムーズに回したりする仕事が得意です。これを自分の強みにしようと思ったのは、前職での経験が大きいですね。DeNAにはコンシューマーゲーム出身の、絵がすごく上手な人が多かったんです。これは叶わないなと思い、それなら自分はこの人たちがうまく立ち回れるように、情報設計やスケジュール調整、プロデューサーやプランナーとの交渉といった役回りで貢献できるようになろうと。そんな思いでやってきたので、どんなプロジェクトでも全体の進行がうまく調整できたときには、充実感を覚えますね。
――とても重要な役目ですよね。ちなみに、渡邊さんは学生の頃はクリエイターとして一人で作品と向き合い、社会人になってからはゲームクリエイターとしてデザインの仕事をしてきた。どちらかといえば、一人で黙々と作業をすることが多かったと思いますが、今はチームで仕事をすることにやりがいを感じているわけですか?
そうですね。一人で作業するのも好きなのですが、気が付いたらこうなっていたというか(笑)。チームでプロジェクトを動かす楽しさは、クリエイターとして展示会の準備をする時の感覚に近いかもしれません。会場や予定を決めて、お金を集めて、予算を立てて、スケジュールを作って納品するという、一連の流れを整えるのが好きだったので。
――カオスな状況を整理する過程に楽しさを感じると。
そうかもしれないですね。
――では、最後にプロダクトデザイン室での仕事に興味を持っている方に向けてメッセージをお願いします。
リクルートには「あなたは何がやりたい?」と問われる文化があります。その一方、ビジネス的な観点で、会社としてやらないといけないこともあります。個人の意思と、組織の一員として達成すべきミッション、その両面で折り合いをつけられる人であれば活躍しやすい場所ではないでしょうか。また、チームでものづくりをしたい人にとっても、すごくいい環境です。コミュニケーションをとりやすいメンバーが多く、楽しく働けると思いますよ。