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Intersection Conference 2024 参加レポート

こんにちは。
リクルートのプロダクトデザイン室でプロダクトマネージャーをしている、植田由佳子です。

私は旅行領域の『じゃらん』というプロダクトを担当しており、カスタマーの旅行体験をより良くするため、日々業務に取り組んでおります。

今回は、業務の一環で私が参加した海外のカンファレンスでの学びについて、紹介させていただきます。

Intersection Conferenceとは

「Intersection Conference」は、デザインと開発の最前線を探求する国際的なイベントで、2024年で第6回を迎えます。このカンファレンスはイタリアのトリノで開催され、バロック様式の建築物が連なった歴史を感じさせる街の中心部に会場が設けられていました。

カンファレンスには、プロダクトマネージャー、UXデザイナー、エンジニアなどが集まり、最新のUXに関するセッションや実践的なワークショップが行われました。

大手外資IT企業が集まる大きなコワーキングスペースでの開催

さらに、カジュアルなミートアップや興味に応じたブレイクアウトディスカッションなど、参加者同士がつながるためのネットワーキングの機会も用意されており、私も講演者に話しかけ、オフラインでしか聞けない他社の組織環境やキャリアに関する価値観を伺うことができ、非常に有意義な時間となりました。

今回のレポートでは、その中でも特に印象に残ったプログラムについて以下に紹介します。

印象に残ったプログラム①

● タイトル :User-Centric AI: Rethinking Product Development Approach for the Next-Gen experiences.「ユーザー中心のAI:次世代体験のための製品開発アプローチの再考」
● 話者:
○ Sören Weber (Senior Product Manager) @Trivago
○ Shivam Sunderam (Senior Product Designer) @Trivago

近年、AIを用いたプロダクト開発がトレンドとなっていますが、プロダクトの企画検討と開発に与える影響、そしてTrivagoのAI活用事例の二点について講演されました。

カスタマー課題の把握や案件の効果見立てを行う企画検討と開発に与える影響について、AIを用いたサービスは技術とマーケットニーズの観点から不確実な部分が多いとされます。

そのため、プロトタイプ調査やA/Bテストなどを行いながらカスタマー課題の解像度や打ち手の精度を高めるプロセスを踏むべきだと述べていました。

AIは技術の複雑性と、AIを用いたプロダクトの成功事例が少ないことから、他の技術よりも不確実性が高い要素を抱えています。同時に、マーケットのニーズにマッチしているかも見極める必要があります。

これらの不安要素を軽減するためには、プロトタイプやMVP(最小限の機能を持つ初期バージョンのプロダクト) を迅速に作成し、初期段階での市場テストを繰り返すことが不可欠です。これにより、技術的な側面とマーケットニーズを同時に検証し、より確かなビジネスモデルの構築を目指すことができると話していました。

その後、Trivagoが新たに開発した、宿泊施設選びの負担を軽減することを目的とするAI機能を搭載した二つのサービス事例が共有されました。

まず、AIによる宿のハイライト機能です。従来、Trivagoの宿詳細ページは情報量が多く、ユーザーは情報を読み解くのに時間を要するという課題がありました。そこで、AIが宿泊施設の重要なポイントを要約し、視覚的にわかりやすく提示することが打ち手となっています。

宿詳細ページは文字量が多く、ぱっと見で情報が入ってこない
AIでホテル情報のサマリを掲載

質疑応答パートでは、AIがまとめた文章の正確性に関して宿泊施設からのクレームが来たことはないか尋ねると、「クレームは来ていない」とのことでした。情報の正確性を担保するために、出力された情報をスプレッドシートで目視確認し、誤った情報や不適切な表現を取り除くようにGoogleと協力してモデルを構築していると説明されました。

また、情報源の注釈を加える工夫もされており、「This content is summarized with AI.」(内容はAIによって生成されています)という文言を入れることで、ユーザーに対して透明性を持たせています。

次に、AIによる宿のセマンティック検索機能について説明がありました。セマンティック検索とは、ユーザーが入力した文章やキーワードに対してAIが意図を汲み取り、的確な提案ができる検索のことです。

最近のトレンドとして、検索クエリの複雑化やAIの進化により、キーワード検索からセマンティック検索への移行が見られ、ユーザーの意図をより正確に理解することが可能になっています。この機能はオートコンプリート機能も搭載しており、現在は限られたキーワードリストに基づいていますが、これを拡充する計画もあるとのことでした。

また、ユーザーが新しい検索ボックスをどのように活用できるかを教育するために、オンボーディングのヒントを提供することも重要だと強調されていました。

ユーザーの意図を捉えたAIサーチ。下にどのような文章を検索窓に入れるのが良いか、サンプルも併せて表示
オンボーディングによってカスタマーの検索行動を促進

これらの新機能も、初期段階からプロトタイプなどを使ってユーザーにヒアリングを行い、検証を繰り返しながら作成されたとのことでした。

AIを使った新機能は技術が先走り、使い方がわかりにくいこともあるため、技術的な進化だけでなく、ユーザーが新しい機能をどのように活用すれば良いのかを導くような体験設計とデザインを考えることが大切である、と講演の中で繰り返し話されていました。

感想

私も日々新しい機能の開発を検討しリリースする中で、サービスのことを熟知しているが故に、初めて機能を触ったユーザーがストレスなく使えるか、フラットに見られなくなることがあります。改めて徹底的にユーザーの声にこだわり、その声を早く深く獲得し、プロダクトに取り込むことが必要であると感じました。

直近の取り組みはA/Bテストでの検証が主になっていましたが、初期段階からプロトタイプを使ったヒアリングを繰り返すことで、深い洞察を得る手法を改めて取り入れたいと思いました。

コーヒーブレイクでの会話

プログラムの合間のコーヒーブレイクで、上記のプログラムのスピーカーだったTrivagoのプロダクトマネージャーとプロダクトデザイナーと会話をすることができました。

私はUXリサーチの頻度や手法について新しい示唆を得たいと思っていたため、Trivagoではどのようにリサーチしているかを質問してみました。

Trivagoでは専属のUXリサーチャーの組織があり、毎週カスタマー調査を行っているとのことです。時にはプロダクトデザイナーやプロダクトマネージャーが参加し、検討中の案件のプロトタイプに対する感想を聞いたりするようです。外部のリサーチ会社に委託するのではなく、プロダクトの戦略や戦術を理解しているUXリサーチャーが調査を行うことで、迅速かつより質の高い仮説検証を行えるため、この方法をとっているとのことでした。

また、リリースする機能にアンケート機能をつけたり、goodボタン/badボタンを設けたりすることで、機能のフィードバックをユーザーからライトに回収することもあるようです。Trivagoでは、インタビュー中のカスタマーの声が必ずしも正しいとは限らないものの、カスタマーの意見を常に受け止めることが重要だと考えているとのことでした。

私自身もプロダクトマネージャーとして、定性調査や定量調査を通じて課題を特定し、打ち手を考えて案件をリリースしています。しかし、実際にプロダクトを作成すると、私たちが想定していなかった点でユーザーが使いにくさを感じていることもあります。「ユーザーならこう使うだろう」「ユーザーはこう思っているはずだ」といった誤った認識が生じることもあり、サービスを提供する側とユーザーの間には経験や知識の差があることを実感しています。

印象に残ったプログラム②

● タイトル:Conducting Competitive Research and Analysis on Digital Services/Products.「デジタルサービス/プロダクトに関する競合調査と分析の実施」
● 話者:
○ Jaime Levy (UX/Design Strategist, Author of "UX Strategy")

"UX Strategy: Product Strategy Techniques for Devising Innovative Digital Solutions"という本の著者のワークショップでは、新しいプロダクトを検討する際に、競合が何を提供し、成功または失敗したのかを学ぶための競合調査をすることが重要であると述べていました。

今回は、彼女のフレームワークをもとに、四人一組のグループワークで、AIを使用した言語学習アプリを一つ取り上げ、競合調査に取り組みました。

このワークショップでユニークだと思ったのは、競合調査を行う際に、プロダクトの画面や動線、機能だけでなく、業績や創業年度、資金調達ラウンドなども記載し、競合のビジネスを掘り下げていく点です。

競合プロダクトが数多くあるなかで、自身のプロダクトを選んでもらうための差別化ポイントを見つけるには、プロダクトの見た目だけでなくビジネス観点も見極める必要がある、と述べていました。

実際に使用したバリュープロポジションシート
バリュープロポジションシートをもとにプレゼン中

感想

ワークショップは短い時間の中での分析であり、英語で会話しながらまとめていくため、通常業務での競合調査よりも大変でした。ただ、普段取り組んでいることを海外のプロダクトマネージャーやプロダクトデザイナーたちも実践していることが分かり、自信にもつながりました。

また、競合優位となるサービスを作るために、ビジネス観点にもより着目することが大切だと改めて感じました。

最後に

今回はAIを用いたプロダクト開発に関する講演も多く、未知の部分が多いAIに関する様々な事例や開発プロセスを聞くことができ、今後のプロダクト検討の手がかりとなりました。

また、カスタマーとの接点を多く持ち、UXリサーチを適切に行うことで、私たち開発者の仮説や思い込みではなく、実際に使われるプロダクトを作っていきたいと改めて思う機会となりました。


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