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「デザイントップが語る、デザイナーが活躍する組織とホントのところ」プロデザ!byリクルート第9回

  

リクルートのプロダクト制作におけるナレッジをシェアするウェビナー「プロデザ!byリクルート」。第9回目となる今回のテーマは「デザイントップが語る、デザイナーが活躍する組織とホントのところ」。

「デザイン経営」という言葉が浸透しつつあるように、企業活動におけるデザインの価値は今、大きく見直されています。プロダクトの色や形を考えることだけでなく、会社経営やブランディング、さらには社内外の様々なコミュニケーションに至るまで、デザインが介在する領域は大きく広がり、デザイナーが活躍できるシーンも増えてきました。

では、デザイン部門のトップはこうした状況をどう捉え、いかにしてデザインの力を社内に浸透させていったのでしょうか? 今回のプロデザ!では、リクルートの磯貝直紀(プロダクトデザイン室)に加え、初の外部ゲストとしてマネーフォワード執行役員CDOの伊藤セルジオ大輔氏にも登壇いただき、デザイントップの立場から「デザイナーが活躍する組織」について語っていただきました。

※2023年3月28日に開催したオンラインイベント「プロデザ BY RECRUIT VOL.9 デザイントップが語る、デザイナーが活躍する組織とホントのところ」から内容の一部を抜粋・編集しています。

 

 


各カンパニーにデザイナーを置く、マネーフォワードのデザイン体制

 最初に登壇したのは、マネーフォワード執行役員CDOの伊藤セルジオ大輔氏。セルジオ氏からは、同社がデザインというものをどう捉え、それをいかに活用しているのか。また、デザインを広く、深く活用していく組織であるために注力しているDesign Ops(デザイン組織のデザイン)について、取り組みの一端が語られました。

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伊藤セルジオ大輔。株式会社マネーフォワード 執行役員CDO(Chief Design Officer)。デザイン事務所の代表を経て、2020年にマネーフォワードのCDOに就任。以来、経営にデザインを取り入れるデザイン経営 、デザイン組織の強化、プロダクトデザイン品質の向上、ブランディングなどに従事。

セルジオ氏:マネーフォワード執行役員CDOの伊藤セルジオ大輔と申します。

マネーフォワードは様々なデジタルプロダクトを展開しており、80名ほどのデザイナーが所属しています。事業展開や組織規模はリクルートさんと似通った部分もあると思いますので、このあとの磯貝さんの発表との共通点や違いなども意識しながら聴いていただけるといいかなと思います。

 

はじめに、:マネーフォワードの事業について簡単に紹介します。家計簿や資産管理の『マネーフォワード ME』や、クラウド会計や給与計算、勤怠管理といったBtoB向けのプロダクト『マネーフォワード クラウド』などを提供している会社です。

  

ご覧の通り、全体では50ほどのプロダクトがあります。大きく分けると、『マネーフォワード クラウド』を中心とした法人向けのプロダクト、そして、『マネーフォワード ME』を中心とした個人向けのプロダクトです。その他にも、外部の金融機関様と一緒にサービスを開発するチームがあり、こちらでも複数のプロダクトを提供しています。

  

会社のミッションは「お金を前へ。人生をもっと前へ。」誰もが向き合わなくてはいけない「お金」や「働く」というところに対して、さまざまな課題を解決しながら人生を前に進めていく。そんな思いが込められています。

  

また、バリューのなかで「User Focus」という言葉を掲げています。デザインの世界には「人間中心設計」という考え方がありますが、マネーフォワードではデザイナーだけでなくエンジニアやビジネスサイドのメンバーも、ユーザー中心にサービスをつくっていくことを大切にしています。

  

組織の体制ですが、大きく3つのカンパニーに分かれていて、それぞれにデザインチームが置かれています。

 領域やプロダクトごとにデザインチームを置くことで、それぞれのユーザーやビジネスに対して高い解像度を持ちながらデザインができるようになっています。

 また、各カンパニーを横断する組織として「デザイン戦略室」を設けています。こちらでは、会社全体のブランディングだったり、デザインチームの体制強化だったりを担う形ですね。このように、縦と横でつながったマトリックス型のデザイン組織となっています。

 

プロダクト、ブランド、コミュニケーション、あらゆる場面でデザインの力を活用

 マネーフォワードは、デザインというものを非常に広く捉えている会社です。

代表の辻庸介自身も、自らのnoteでこう綴っています。

「デザインとは“物事の本質を見極め、それを様々な手段を用いて、周りの人たちに正しく伝える、そして増幅していくこと”だと考えています。(中略)マネーフォワードグループのサービスに触れていただくすべての人に対して、心地よい体験を届けたい。(中略)そのためには経営レベルでデザインを組み込んでいくことが不可欠だと思っています」

辻が述べている通り、デザインとは色や形を考えることだけを指すのではなく、物事の本質を見極めること。会社としてデザインを広く活用していきたいと考えた時に、代表がこうした認識を持っているかどうかは大きなポイントの一つかなと思います。

 では、実際のところマネーフォワードのデザイナーはどんなことをやっているのか。具体的な事例を紹介します。 

例えば『BANK APP』というアプリの開発フローでは、デザイナーはプロダクト開発の企画段階から参加しています。プロダクトマネージャーと並走しながら、競合調査や未来像デザイン案の作成、要件定義、UX調査、デザインシステム、ワイヤー設計、ビジュアルデザインといった一連の流れに関わる。これが基本的なデザイナーのスタンスで、他のプロダクトでも基本的には同様のプロセスを踏んでいます。また、プロダクトそのものだけでなく、ブランドやコミュニケーションデザインにおいても、戦略策定や企画の段階からデザイナーが入ることを重視しています。

それ以外にも、さまざまな場面でデザインの力は活用されています。

たとえば、上の写真は経営合宿の時のものなのですが、「経営課題をどう解決していくのか」というお題に対して、デザインのアプローチを取り入れながらディスカッションを行いました。

 

デザイナーが活躍できる組織を目指すための「Design Ops」とは?

このように、デザインを広く、深く活用していく組織であること、また、デザイナーが活躍できる組織であることを目指しているのですが、そうあるために現在取り組んでいるのがDesign Ops(デザイン組織のデザイン)です。

Design Opsにおいて重要なのは、目指すべき「未来像」を明確にすることです。

そのために私たちが取り組んでいるポイントが、主に以下の3つです。 

1つ目は、デザイン組織としてのクレド(信条や行動指針)やカルチャーの設定です。マネーフォワードでは、デザイナークレドを「マネーフォワードのデザイナーは『User Focus』の体現者です」としています。また、デザイナーカルチャーについては、「Teamwork コミュニケーターとして組織をつなぎ共創を生み出す」「Respect お互いを高め合い、学び合う」といった、いくつかの言葉で定義しています。このように、デザイン組織として目指す行動指針などを定義していくということが大事ではないかと思います。

2つ目はロードマップの作成です。会社のなかでデザインの力をいかに最大化していけるか、そのデザイン戦略を3年計画でまとめています。経営やデザイン組織強化、プロダクトデザイン、ブランディングという軸を立て、3年後にどんな未来を描き、それに対してどうアクションしていくのか、中長期視点で取り組みを捉えるようにしています。なお、このロードマップは半年ごとにアップデートしています。

3つ目は、人材ポートフォリオの作成です。これらを実現していくためには、当然ながら会社のみんなの力が必要で、多くのメンバーの成長が欠かせません。そこで、これも中長期視点で組織や人材を捉え、メンバーがいかにグレードアップしていくのか、その成長を支えていくうえで、会社はどういった機会を提供しなければいけないのか。これを人材ポートフォリオという形でまとめています。
 

ほかにも、組織全体としてデザインの力を最大化していくために、様々な施策を実施しています。たとえば、「グレード要件のアップデート」。先ほどグレードアップという話がありましたが、じゃあグレード3から4にステップアップするためにはどんな機会が必要なのか、どういった難易度のプロジェクトを担うと、より上のグレードを目指すことができるのか。これを言語化しています。また、機会を通じた成長だけでなく、ベーシックなデザイン研修の底上げも行っています。

スライドの左下に「マネジメント人材育成」とありますが、デザインマネジメントというのは体系的に学べる機会がなかなかありません。そこで、社内でお互いに学び合ったり、相談し合ったりできるような場を設けています。

さらに、スライド右下にある「ナレッジ共有と親睦機会づくり」にも力を入れています。社内の80人のデザイナーのなかには、高い知見やスキルを持ったエキスパートもいます。そうしたハイレベルなデザイナーのナレッジを共有したり、コミュニケーションがとれるような横の連携をつくっていくことを意識していますね。 

というわけで、本日のテーマ「デザイナーが活躍する組織とホントのところ」の、“デザイナーが活躍する組織”についてご紹介してきました。最後に、“ホントのところ”という部分についても触れておきます(笑)。マネーフォワードのデザイン組織が抱かれがちなイメージについて、実際はどうなのかご説明したいと思います。

 

・整っていそう

デザイナーの人数も一定数いますし、Design Opsもありますので、マネーフォワードって色んな意味で「整っていそう」というイメージを持たれることが多いです。ただ、実際はとてもカオス。プロダクトの数も多いですし、組織もピラミッド型ではなく、複数のスモールチームが混ざり合うような複雑性があるため、どうしてもカオスになりがちなんですね。ただ、これをいかに整えていくかというのも、面白いテーマじゃないかと思っています。

・やれることが少なそう

一定の組織規模になると分業化が進んでいくため、あまり個人の活躍の場がないのではないかと思われがちです。ただ、全くそんなことはなく、逆にチャレンジしかありません。先ほど申し上げた通り、私たちはスモールチームでやっているため分業化もそこまで進んでいませんし、BtoBやBtoCのプロダクト、さらには金融機関様と一緒につくるクライアントワークのような仕事もあって、非常に機会が多様です。なおかつ、チーム同士の越境も推進していく文化があるため、様々なチャレンジが溢れている会社だと思います。

・お金の会社でしょ?

お金にまつわるプロダクトを扱っている会社なので、どうしても固く、保守的なイメージを持たれがちです。たまに「スーツ着てデザインしてるんですよね?」と言われることもあるのですが、そんなことはなく普通にカジュアルです。確かに、マネフォワードはお金の会社ではありますが、同時にForwardの会社でもある。「人生を前に。」進めるために、非常にポジティブでオープンなマインドを持っています。

・もうデザイナーいるでしょ?

これは、「まだまだ募集しております」とお答えしておきます。プロダクトデザイナー、サービスデザイナー、組織デザイナー、デザインマネージャー、全て募集しておりますので、もしご興味のある方がいらっしゃればお声掛けください。

リクルートにおけるデザインの役割とは?

続いて登壇したのは、リクルート プロダクトデザイン室の磯貝直紀。デザインマネジメント部の部長であり、社内でデザインをさらに活用していく推進役でもある磯貝からは、リクルートにおけるデザインの役割やデザイナーの働き方、デザイン組織としての展望が語られました。

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磯貝直紀。株式会社リクルート プロダクトデザイン室 デザインマネジメントユニット デザインマネジメント部部長 デザインディレクター。京都工芸繊維大学大学院を修了後、GKデザイングループにて通信キャリアのデザインマネジメントや自治体の公共デザインなど、領域を横断したデザイン業務に携わる。2015年にリクルートに入社し、HR、日常消費、学び領域のプロダクトデザイン業務に従事、現在は、事業横断のデザインマネジメント組織を立ち上げ、デザイン領域に特化したナレッジシェア、コミュニティ化推進をはじめ、組織長としてリクルート全体のデザイン価値向上に寄与する業務を行っている。

磯貝:リクルート プロダクトデザイン室の磯貝と申します。本日のテーマが「デザイナーが活躍する組織とホントのところ」ということで、私からはリクルートのデザイン組織について、以下の3つのことをお話ししたいと思います。

・企業内でのデザインの役割(組織/職種紹介)

・デザイナーの働き方(実際の業務例)

・組織の課題とこれから(展望と課題)

はじめに、リクルート内でのデザインの役割(組織・職種)について説明いたします。

リクルートでは現在、さまざまな領域で200を超えるプロダクトを運営しています。

  

このように、事業領域ごとにプロダクトが配置されているのですが、それぞれのなかにデザイン担当グループがあり、これらを横断的に機能軸でつないで評価しているのが、我々「デザインマネジメントユニット」です。

デザインを担当するメンバーは、現在70名ほど。職種名としては「デザインディレクター」で、デザインを活用し、プロダクトの価値を最大化していく役割を担っています。 

「デザインを活用し、プロダクトの価値を最大化」というと、やや抽象的に感じられるかもしれません。ただ、これは致し方ない部分もあります。

先ほどもお伝えした通り弊社には200もの多様なプロダクトがあり、それぞれの規模やフェーズはバラバラです。立ち上げたばかりのものもあれば、拡大フェーズのもの、すでに大きく成熟したプロダクトもある。さらには、ビジネスモデルも様々で、マッチングプラットフォームもあれば、SaaS領域やFinTechサービスもあります。

 当然、これだけ多様だと様々な状況に対応しなくてはなりません。同じデザインでも、プロダクトAとプロダクトBではやっていることが全く違うため、デザイン職能に求められる役割は多岐にわたるんです。そのため、デザインディレクターという職種の役割を破綻なく定義することが難しい部分があります。

この曖昧さを回避するために、工夫しているポイントが2つあります。

1つ目は「不確実性で役割や業務の難易度を定義する」ということ。

こちらの図のように、縦軸の「業務不確実性」と横軸の「デザイン不確実性」を掛け合わせて、役割の難易度を判定しています。なお、業務不確実性は、ビジネスや技術、プロダクト戦略などに起因する業務推進上の不確実性のこと。デザイン不確実性は、ユーザーや体験、デザイントレンドなどに起因する、デザインを進める上での不確実性を指しています。この2つを掛け合わせることで、どんな状況の、どんなデザインの役割も内包できるようになりました。 

2つ目のポイントは、組織フィロソフィーの設定です。リクルートのデザイン組織としてのスタンスを言語化しました。それが、「動かすデザイン」です。一人ひとりがデザインの力を使って物事を動かし、周囲にもそれを伝播していくということですね。

もともと、リクルートにはボトムアップや目的思考で価値を生み出すDNAがあり、「動かすデザイン」は、それを体現した組織フィロソフィーとなっています。もちろん、これまでにも根底にはこうした価値観が流れていましたが、改めて言語化したことで内省にもつながりましたね。


デザインディレクターの仕事は、事業のフェーズやビジネスモデルにより様々

 次に、デザインディレクターの実際の業務事例について共有します。先ほど申し上げた通り、様々な役割を担っているのですが、そのなかでもわかりやすいものとして、以下の3つをピックアップしました。
 

1つ目の「デザインドリブンで事業を変革」ですが、リクルートのプロダクトでは検討の初期段階からデザイナーが入り、その議論の内容を具現化することで、事業を前に進める役割を担います。そこで議論していることを単純に見やすい資料として可視化するだけではなく、議論をふまえたうえで「本当にあるべき未来像」みたいなものを形にするんです。
 

たとえば、事業側が思い描いていたものを超えるようなアウトプットを実際に作り、それをベースに事業を促進させていく。「未来の理想像を具現化する役割」と言い換えてもいいかもしれません。

2つ目の「ユーザーへの提供価値を最大化」ですが、言い換えると「ユーザーインサイトとプロダクトを結びつける」ということですね。特に、ユースケースが複雑なSaaSプロダクトなどの場合は、ユーザーがどういう状況で、どういうインサイトを欲しているかというのを、しっかりと認識することが重要です。そのため、時にはそのプロダクトが使われている現場にデザイナーが赴き、直接リサーチをするケースもあります。そのうえでユーザーインサイトを捉えた本質的な価値をプロダクトに組み込み、進化させていく。そうした、ユーザーインサイトとプロダクトを結びつける役割をデザイナーが担うケースも多いです。

そして、3つ目が「事業に合ったデザインコンサルティング」。たとえば、すでに成熟したプロダクトはその規模の大きさゆえ、デザインのリニューアル一つとってもすぐに動かせるわけではありません。その事業状況を見定めた上で、ちゃんとデザインとビジネスのバランスを取って物事を動かしていくことが重要です。そこでデザイナーに求められるのが、そのデザインの価値を翻訳して動かしていくこと。デザインを活用することでの価値、あるいは活用しないリスクをしっかりと翻訳して伝えた上で、デザインの活用範囲を拡大し、事業におけるデザインの介在価値を広げていく。リクルートのデザインディレクターはそんな役割も担っています。
 

ざっくり言うと、こうした役割が主ですが、もちろんここに大別されない様々な事例もあります。デザインディレクターの役割に決まったものはなく、どんな形でも価値を提供できると考えていますし、メンバーにもそう伝えています。

社内のデザイン成熟度を高め、デザイナーが介在できる領域を広げる

 

最後に、今後の展望や課題もお伝えできればと思います。

お伝えしている通り、もともとリクルートのデザインディレクターは明確に役割が決まっていたわけではありません。そこで、まずは様々な形でデザインによる価値貢献をすることで社内の信頼を獲得し、ポジションや役割を拡大していきました。

ですから、これからも基本的にはそのサイクルを回しつつ、デザイナーの役割や規模の拡大に合わせて最適な組織基盤を整えていく。そうやって、少しずつ社内のデザイン成熟度を上げていきたいと考えています。

社内のデザイン成熟度が上がっていけば、事業のなかでデザインが介化していける領域も増えていくはずです。

そのための課題としては、やはり経営層にデザインの重要性をより強く認識してもらう必要があると考えています。決裁・経営レイヤーに対し、デザインの正しい理解や期待感を醸成するための啓発活動などを行いながら、経営トピックとしてのデザインの認識を拡大していきたいですね。同時に、その期待に見合う組織基盤を構築するため、デザインOPSチームを拡大し、基盤を強固にしていきたいと思います。

 

Q&A

 最後は質疑応答。ウェビナーの視聴者から、セルジオ氏、磯貝へ様々な質問が寄せられました。そのなかから、いくつかの質問と回答をピックアップして紹介します。

Q:セルジオさんに質問です。各カンパニーにデザイナーがいるということですが、それぞれのクリエイティブにズレなどが生じることはないのでしょうか? もしズレを起こさないための取り組み(コミュニケーション施策)などがあれば教えていただきたいです。

セルジオ氏:実際のところ、ズレは発生してしまいますね。ただ、それをいかに最小限にしていくかが大事だと思いますので、情報共有の場を設けるなどしてお互いにやっていることが分からないといった事態を避けるように努めています。あとは、もちろんガイドラインをつくることも有効ですが、それよりもフィロソフィーレベルで繋がるというか、大事にしたい本質をメンバー全員が共有することのほうが重要なのではないかと思います。

Q:磯貝さんに質問です。弊社でも会社にデザイン意識を浸透させるため、社内のデザインチームが奮闘しているところです。磯貝さんが特に「経営トピックとしてデザインの認識を拡大させる」ために、経営層に行った具体的なアプローチの取り組みや、その際に難しかったポイントを教えてください。

磯貝:先ほど、事業レベルでデザインの価値をいかに翻訳するかが重要だと述べましたが、それを経営レイヤーにまで持っていくとなると、さらにハードルが上がると感じています。そこで必要になるのは、やはり社内外でのデザインの活用事例などをうまくまとめるなどして、意思決定者にうまく話を持っていくことじゃないかなと思いますが……、正直言うと私もまだ、そこが満足にできているわけではありません。そこは、セルジオさんにぜひお聞きしたいですね。先ほど、マネーフォワードさんではそもそも社長さんがデザインの重要性を認識していらっしゃったというお話しがありましたが、なぜトップ自らがそうしたお考えを持つに至ったのか、ぜひ教えていただきたいです。

セルジオ氏:代表の辻も、最初からそうした認識を持っていたわけではないようです。一つのきっかけになったのは、会社のミッション・ビジョン・バリュー・カルチャーを策定したこと。これを主導したのがデザイナーだったこともあり、経営にデザインがいかに役立つかを改めて実感したというエピソードがあります。そこから、デザインに対する認識が変わっていったのではないかと。

おそらく、多くの会社では経営メンバーがデザインというものにあまり触れていないことが多いのではないかと思います。ですから、小さなことでもいいので、何かしらデザインの力を実感できるような体験をトップと一緒に過ごすことが重要なのではないでしょうか。

僕自身が経営会議でファシリテーションしているのもまさにそれで「こうやってデザインのアプローチを使うと、議論がクリエイティブになるんだな」ということを、経営メンバーに実感してもらうためでもありますね。


デザインの価値を再定義し、デザイナーがより活躍できる環境づくりを

 デザインの役割が拡大するなかで、デザイナーという職種自体の可能性も大きく広がりつつあります。だからこそ、このタイミングで改めてデザインの価値を定義し直し、よりデザイナーが活躍できる環境を整えていく必要があるのではないでしょうか。

 社内のデザイン成熟度を醸成し、デザイナーの力が存分に発揮される組織づくりを目指すにあたり、今回のナレッジがお役に立てば幸いです。


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