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UXトレンドとイノベーションに焦点をあてた「UXDX Conference」参加レポート

こんにちは。
リクルートのプロダクトデザイン室でプロダクトマネージャーをしている、今村有彩と植田由佳子です。

私たちは旅行領域の『じゃらん』というプロダクトを担当しており、カスタマー(旅行検討者)の旅行体験をより良くするため、日々業務に取り組んでおります。

今回は、業務の一環で私たちが参加した海外のカンファレンスでの学びについて紹介させていただきます。


UXDXとは


今回私たちが参加したのは、アイルランドのダブリンで開催されたUXDX(User Experience and Developer Experience)Conferenceというカンファレンスです。

UXDXは、先進的なUXトレンドとイノベーションに焦点を当てた国際的なカンファレンスで、2017年以降、アイルランドをメインに毎年開催され、アメリカのニューヨークなどでも行われています。

プレゼンテーションやセッションに加えて、参加者同士のコミュニケーションの機会や、ダブリンの歴史的な建築物を巡る観光ツアーも組み込まれ、満足度の高いプログラムとなっていました。


ダブリンのカンファレンスセンターでのセッション中です。
各国のUXデザイナーが集まり、ほぼ満席で盛り上がりを見せていました!

なぜUXDXに参加しようと思ったのか

社内ではUXデザインの成功事例、失敗事例について情報共有されており日ごろから参考にしているものの、社外、特にUXデザインに優れている海外企業での事例やUXデザイナーの方々の考え方に触れる機会が多くないため、これをインプットの機会と捉え、普段の業務に活かしていきたいと思ったからです。

今回は社内のプロダクトデザイン室の「手挙げ研修制度」という制度を利用し、カンファレンスに参加しました。
この「手挙げ研修制度」とは、自ら参加したい研修を選び、立候補すると、その研修に参加できるチャンスを得ることができる制度です。

印象に残ったプログラム①

プロダクト・レッド・グロースに焦点を当てるタイミングおよび何故セールス・レッド・グロースの方が優れているのか

■テーマ:
When to Focus on Product Led Growth and Why Sales Led Growth Performs Better

■話者:
Emerson Taymor (グローバルセールス、マーケティング)@Infobeans
Beate Wilczek (副社長、エンジニアリング)@Yellowcard
Marine Palamutyan (UXリサーチマネージャー)@DocuSign

このプログラムでは、スタートアップや新しく設立された企業が0から1へ進む際のマーケティング戦略の観点で、Sales Led Growth(以下SLG)とProduct Led Growth (以下PLG)どちらがベストかについてのディベートを聞きました。観客は最終的にどちらの議論が優れているかを投票します。

ディベートの様子


まず、SLGとは、プロダクトを販売するのは営業の役割で、「営業がプロダクトの魅力や価値を伝える仕組み」です。
一方で、PLGとは、プロダクトそのものに営業やマーケティングの機能を付け、「プロダクトがプロダクトを売る事業モデル」を意味しています。

具体的な意見の抜粋

1. SLGの視点

  • 0から1へ進む際に安定性をもたらし、資金調達の難しい時期でも大きな収益を得やすい

  • 顧客開発においてセールスチームは非常に重要であり、日々の対話から得られる情報は製品のマーケティングや製品ロードマップの形成に役立つ

  • 企業においては、1年間で100万ドルの収益を上げることよりもプロダクトに興味を持ってくれる企業や人を見つけることが長期的な視点で重要である

2. PLGの視点

  • 素早い採用やユーザーフィードバックの取得に優れており、柔軟性がある

  • 顧客と早期に関わり、フィードバックを取り入れることで、より適切な製品を構築し、初期段階から市場適応を促進することができる

  • 営業活動にかかる費用を抑えることができ、顧客獲得までにかかる工数も削減することができる

 ディスカッションのまとめ

  • 0から1への拡大期においては、SLGが有利であり、PLGはマーケティングやセールスに多くの予算が必要となることがある

  • セールスとプロダクトの両方の視点を取り入れながら、バランスを保つことが成功の鍵である

投票結果はこちら・・・!

感想

私は営業職を経験後プロダクトマネージャーへキャリアチェンジしたこともあり、営業と顧客のつながりの重要性を強く感じていたので、初めは圧倒的にSLG派でした。しかし、議論を聞くにつれ、ビジネス戦略に合った異なる視点とアプローチが存在し、それぞれに優れた側面があることを学びました。
私は『じゃらんnet』のUX改善を担当しており、エンタープライズ×BtoCはPLGの導入に向いているため、積極的にユーザーの生の声を取り入れることができるようなプロダクトを作っていきたいと思いました。


印象に残ったプログラム②

ロードマップが明らかに: 成功と失敗から得た教訓、そしてステークホルダーの賛同の重要な役割

■テーマ:
Roadmaps Unveiled: Lessons from Successes, Failures, and the Crucial Role of Stakeholder Buy-in

■話者:
Teresa Cain(プロダクトマネジメント、UXデザインディレクター)@Trevipay

このプログラムでは、Trevipayというフィンテック企業のUXデザインディレクターが登壇し、ロードマップ、成功体験、失敗体験に焦点を当て、ステークホルダーのニーズのバランスを取る重要性について説明していました。

講演の様子

具体的な内容の抜粋

1. ロードマップについて

  • ロードマップは、戦略とビジョンをステークホルダーに伝えるもの

  • 財務への影響と戦略の適合をバランスさせるものであり、プロダクトマネージャーや組織にとって重要

2. 失敗してしまいがちなロードマップ

  • 長すぎたり、短すぎたり、詳細が不足していたりするもの

  • 企業のミッションや目標と一致していないもの

  • ステークホルダーの賛同が得られていないこと

3. ロードマップの運用について

  • フィードバックを取り入れ、競合のギャップを埋め、革新を維持することでロードマップを多様化させる

  • ロードマップは定期的に検証し、更新する必要がある

  • 四半期ごとにステークホルダーとのすり合わせを行う

  • Figmaなどのツールを活用し、2時間のデザインスプリントを行う

4. 結論

  • ロードマップは静的であってはならず、常に適応が必要

  • 変動する市場状況や顧客のニーズに基づいて、ロードマップを定期的にテストし調整することが成功の鍵

  • ビジョンを実行し、フィードバックを得て、定期的にステークホルダーに価値を伝えることが重要

感想

このプログラムではプロダクトビジョンに向けた中長期ロードマップの策定により、プロダクトビジョンを形骸化させず、よりチームメンバーに浸透させられるということを学びました。また、具体的な中長期ロードマップの設計プロセスの例もわかりやすく、実際の業務ですぐに取り入れられそうなものばかりでした。
一度策定したロードマップを無条件に信じないように注意し、市場のニーズ変化や事業戦略の変更を見逃さず、定期的に見直し、柔軟に再設計していきたいと思います。

終わりに

今回のカンファレンス参加により、UXの新しい視点や現在のサービスデザインのトレンドに触れることができました。また、自身が日々業務で考えていることと、海外のUXデザイナーが抱える課題との共通点も見つけ、業務への自信につながりました。

常に変化し改善されていくUXの知識は、カスタマーが使いやすいプロダクトを作る上で、日々キャッチアップする必要があります。今回のようなカンファレンス等の機会があれば積極的に挑戦して社外や海外のUXの動向に意識を向け、トレンドや思考をアップデートしていくことが重要だと改めて感じました。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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