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「RESEARCH CAMP in ONGA 地域の遊休不動産を活かす」 参加レポート

自己紹介


こんにちは! デザインディレクターの段床(だんどこ)です。
普段は「住まい領域」にて『SUUMO』のUIデザインを担当しています。

 2024年7月に「RESEARCH CAMP in ONGA 地域の遊休不動産を活かす」に参加してきました。リクルートでは「手上げ研修」という仕組みがあり、自分が行きたい研修やイベントをピックアップし、上司の承認を得ると参加できる仕組みがあります!今回は自分のリフレクションも含め、note記事にさせていただきました!

参加した背景

RESEARCH CAMPとは 一般社団法人リサーチアソシエーションが主催している、「いつもの日常から離れ、新たなフィールドにてリサーチを実践する」というイベントです。

個人としても、年に一度はなにがしかのフィールドワークに参加しているのですが、今回はこちらに参加させていただくことにしました。

私自身、フィールドワークについてのキャリアがあるわけでもなく、知識が豊富なわけではありません。「学ぶ」というよりもいろいろな所に行ってみて、参加された皆さんや、フィールドワーク対象の土地の方々と楽しくお話しさせていただいている感覚です。(実際に参加するとリピーターの方も多く、前回の参加者が有志でスタッフ参加されていたりと、より楽しいコミュニティであることがわかりました!)

日程


今回は「遠賀町」という福岡の町を舞台に、1泊2日でフィールドワークする、という内容でした。恥ずかしながら今まで福岡は訪れたことがなく、これはちょうど良い機会、と思い参加させていただきました。

今回のおおまかな日程はこちらです。

6/17 事前講義 (オンライン)
7/12 リサーチカンファレンス ポップアップイベント(福岡) 
7/13 フィールドワーク (遠賀町)
7/14 フィールドワークまとめ〜発表(遠賀町)

さて、今回のフィールドワークのテーマは「地域の遊休不動産を活かす」ということです。

いつもの日常から離れ、新たなフィールドにてリサーチを実践するRESEARCH CAMP。今回は福岡・遠賀町をフィールドに、「地域の遊休不動産の活用」をテーマに開催します。

遠賀町は福岡市へも北九州市へもアクセスが良いベッドタウンとして発達しており、住むには困らないが特には何もない、どこにでもよくある町の一つです。しかし町の東端には一級河川「遠賀川」が流れており、里地里山の風景を程よく残しつつ、商業地や都市圏とも程近い。そんな遠賀町らしい「魅力の種」を掘り起こし、新たな町の拠点づくりのヒントを探ります。

今回のパートナーは、遠賀町のたいやきが食べられるカフェ「あまねや」のご夫婦。お二人はたいやきを通して町へ自然と溶け込み、町の公民館的な場所となることを目指し、日頃からゆるやかな町の変化を企んでいるそうです。そんな彼らは最近、遠賀町で長年使われてない合宿所を発見し、新たな町の拠点として活用できないか検討を始めています。今回のリサーチキャンプでは、遠賀町でのフィールドワークを通して、町の遊休不動産である合宿所の活用方法を「あまねや」や遠賀町の方々とともに考えます。提案内容によっては、リサーチキャンプ後も継続してプロジェクト化して進めることも出来るかもしれません。

まずはオンラインでの事前講義にて「あまねや」のお二人からお話を伺った後、福岡・遠賀町にて1泊2日のフィールドワークを行います。講師は「はじめてのUXリサーチ」著者の松薗、「デザインリサーチの教科書」「デザインリサーチの演習」著者の木浦が務めます。はじめてリサーチに取り組む方も、いつもの仕事とは少し違ったテーマでリサーチをやってみたい方も、ぜひ一緒に楽しみましょう。
(共催・あまねや)

RESEARCH CAMP in ONGA

カフェを営みながら、町の公民館を目指すという志を掲げていらっしゃるという「あまねや」さん。イベント中の拠点として、ワークスペースや懇親会など、大変お世話になりました。もちろんたいやきもおいしいです!イベント中もいろいろなご馳走をいただき、本当にありがとうございました。お店を自分たちで運営されるのはもちろん、改装も手がけ、町へのイベント発信もされている、お二人ともとてもクリエイティブな方でした。

さて、ここでいう合宿所というのは「レガッタ」の合宿所です。あの複数名で船を漕ぐレガッタです。遠賀は遠賀川という大きな河川の恩恵を受けている町です。流域が長く、レガッタで必要な直線距離を保有する大きな川であり、昔はたくさんの方が利用していたようですが、コロナ禍を経て合宿所の利用人数が減り、今では合宿所はほとんど動いていないようです。

遠賀町 今回のテーマとなる合宿所

今回もう一つのテーマに「オートエスノグラフィーを試してみる」というものがありました。

オートエスノグラフィーとは「調査者が自分自身を研究対象とし、自分の主観的な経験を表現しながら、自己再帰的に考察する」

藤田結子・北村文 編,2013,『現代エスノグラフィー』新曜社

「見つけたものを書き留めて、持ち帰る」という参与観察の手法のひとつで、他者を観察するものから、より個人の主観を通して、自分にどのような変化があったかを捉える...、つまり、「感じた体験を日記のようにまとめて、さらに、そこから『何があったか、自分に何が起こったのか?』を振り返る、ということなのかな、というくらいにしか捉えられていなかったと思います。

講師の松園さんもまだ明確な定義がない状態であること、実験的に今回やってみようということを補足いただきました。

実施したこと

そもそも福岡自体が初めてだったので、かなり浮かれながら行きました。
遠方ということもあり、前日から福岡に行ったのですが、ちょうど博多祇園山笠時期でした。動いている山笠鉾には出会えなかったのですが、商店街で鉾を見ることができました。

(出発の前の週には perplexityやNotionなどで、遠賀町の様子をデスクトップリサーチ済み。川が思っていたより大きく、水が豊かでお米やシソの栽培が行われている反面、水害の悩みもあることがわかりました)

その日は福岡に宿泊し、翌朝から遠賀へ。
初めての町は新鮮で、自転車が少ない、道が広いといった印象を受けました。地域の山笠なども見かけることができました。

遠賀に向かう電車で、どんどん都会から田園風景に変わっていったのを覚えています。
ホームに着いた頃にはいつの間にか寝ていて、緑に変わった風景に包まれており、ホームに立った時には静かそうな町だなというのが第一印象でした。

駅正面の「あまねや」に訪れ、今回の参加者の皆さんと顔合わせ。少し早い到着に緊張しながらも、空いたスペースで歓談させてもらうことに。スクラムマスターや建築家など普段の業務ではなかなか関わることのできない皆さんとお話しする機会をいただけました。

参加動機も人によって様々でしたが、根底には文化人類学(エスノグラフィー)への学びの期待が表れていると思いました。参加されている方々も昨年度から参加されている方や、今年度からスタッフとして運営側で参加されている方など学びへの温度感の高い人ばかりでした。

今回の拠点 あまねやでのオープニングの様子

1日目<フィールドワーク>

1日目はフィールドワークです。
現地の方々にご協力いただき、遠賀町を車で巡ります。

今までのフィールドワークでは自分の足で探索する場所も探していたのですが、天候が悪かったこと、時間がないこともあり車を出していただきました。車でのフィールドワークは初めてでしたが、車内で町の様子を伺いながら、現地の方々の解説を実際に聴かせていただける(本当に感謝です)、町の様子や景色を眺めていくことができるのはいいなと思いました。

正直事前のデスクトップリサーチでも訪れたいところがはっきり決まっていなかったため、現地の方々が教えてくれた場所を頼りにコースを組んでいきました。そういう意味では、ある意味自分もこの町の訪問者の一人として”オート”なエスノグラフィーが体験できていたのかもしれません。
もちろん要所要所で車を止めていただき実際に散策を行うなどしました。

町を巡るにつれてとても水に縁(ゆかり)のある町なのだと感じてきました。水運で発展してきたり、河川工事を行っていたり、一方で水害に苦しめられていたり。公園や施設を作るために川を埋め立て、市役所では洲であった場所に盛り土をしてできた土地のため地表が下がることがあり、階段を付け足していく必要があること。
地元の祭りでは榊を遠賀川で清めてから祀るなど…。

実質フィールドワークができた時間としては4時間もなかったと思いますが、地元のお祭りが行われている様子や、「現地の方が紹介してくれる場所=自分たちの町の特徴をどのように捉えているか」が見えてくるのが面白かったです。

遠賀町 フィールドワーク 公園・役所・町内のお祭り

拠点に帰ってくる頃には靴の中まで水浸しでした。生憎、この日は視界が白くなるくらいの大雨で、傘を借りたり、神社に避難させていただいたり...。(そのアクシデントのおかげでいろいろな方とコミニュケーションする機会があったのも事実です)

びしょびしょになりながら拠点に帰ってきた我々は、濡れた靴や、雨ですっかり滲んだメモ帳を整えながら、フィールドノーツを思い思いに記載。
私はといえば、絵日記風に取った写真とその場で思ったことをつらつらと、なるべく思ったまま、その場の温度感が出るように、修正しないように心がけました。

実際にその場で書いていた 私のフィールドノーツ

この後、各自のフィールドワークを共有するタイミングもありました。見出しを感情的な煽り表現にしてディテールを足す新聞記事のようなものや、行間に自分の感情を挟みつつ体験記のようにするもの。他にも即興リリックにしてしまうものなどフォーマットからすでに様々で、思い思いの形からフィールドノーツをプロットしていました。

グループだけでなく、みなさんそれぞれの表現方法を参考にできるのも大変良い機会でした。

一旦フィールドノーツを書き切り、夜に行われたのは交流も兼ねたバーベキュー。生憎の悪天候でしたが、色々なご馳走が振る舞われ最高でした!この時間で1日目の収穫をお互いに共有したり、感じたことや感想をお話しする有意義な時間となりました。現地のクリエイターの方も集まり、良い時間を過ごすことができました。

2日目 <分析〜アイディエーション・プレゼンテーション>


付箋でのグループワーク

2日目は初日のフィールドノーツをもとに、いくつか段階を踏みながら、テーマである「遊休不動産の使い方」についてチームでディスカッションしていきました。

それぞれフィールドノーツから情報整理のため付箋へアウトプット。今回のワークショップでは提案までの流れについてもアシストしていただきながら進めることができました。

  • 内外の視点から、強み/弱みの吐き出し

  • 扱わないもの/目指さないものを決める(注力すべき方向性を定める、など)

  • 我々はどうすれば、「制約」であることに考慮しつつ、「顧客」に対して 「望ましい状況」にできるだろうか?

といったフレームワークでまとめを進めていきます。そのおかげでどこに注力してディスカッションするかは悩まなかったのですが、やはり肝心のアイデア出しには皆で頭をひねることになりました。

グループでのディスカッションの様子

私の中で一番面白いなと思ったのは、アイディエーションのタイミングでメンバーをローテーションしていったことです。1人が班に残り、ローテーションしてきたメンバーにコンセプトを説明した上でアイディエーションしてもらう。私は、別の班でアイディエーションすることも、残ってコンセプトを説明することも体験しました。自分の班以外のコンセプトを聞き、自分たちとは別の視点に興味を示しながらアイデアを出すのも面白かったです。また、他の班の方からいろいろなアイデアを得られることも、自分の意中にないアイデアだったので刺激的でした。

我々のチームが検討したのは「遠賀の人はしっかり自分たちの町のことが好き」なのに「それを共有する場所がない」という課題を解決するアイデア。町行く人に話を聞くと「遠賀が好き」ではあってもそれをあまり口にせず、共有する機会も少ない。そのようなインサイトから、縁やこの町そのものを大切に思いながら「この町が好き」ということを再発見できるきっかけをつくりたい、という提案をさせていただきました。プレゼン後、講評でも、いろいろなフィードバックをいただきました。

遊休不動産を活用することの理由や、このアイデアに対して、誰が何をするべきなのか、など見落としている部分が多々あったなと思いました。
他の班の提案も聞きながら、そういう視点もあるのかと勉強させていただいたり、自分がアイディエーションした班の結果を見守ったり、最後まで楽しく参加することができました。

二日間を通して

改めて振り返って、「オートエスノグラフィー」である「自分たちそれぞれの視点」をより深ぼることができればよかったなと感じました。改めて今回のフィールドワークでは、自分が再来訪者として「もう一度この町を訪れるだろうか?」「この町の何に惹かれたのか?魅力とは?」といった問いにもう少し真摯に向き合ってみてもよかった、と今になって思います。

業務において、扱っているプロダクトが、自分もカスタマーの一人であることはよくあります。私も実際にデザインをしていく上で近視眼的になりがちな瞬間がよくあるのですが、改めて自分のデザインが実際にフィールドに置かれた時にどのように機能するのか、またN=1として、自分がそのサービスをどう思うだろうか、とフラットに考えることの大切さを感じました。

グループや他の班の方など交流しながらフィールドワークすることにより、N=1の主観からはじまった見方を、共感や多様な視点への広がりを持たせることができる、というのも改めて良い気づきでした。

1日のフィールドワークだけは町の良さや特徴全てを掴むことは叶いませんが、出会った人たちの「町が好き」という想いは確かに伝わってきました。その土地に根差した感覚なのか、何がそうさせているのかなど掘り下げられる点もあったと思います。

イベント参加後もフィールドワークを更新する中で、初めての土地で色々な物を見ることができた点に心の動きがあったのを感じます。そこをさらに言語化して価値に変えていくことが大切であり、ユニークネスにつながる部分なのかもしれないと思いました。

あっという間の二日間でしたが、いろいろな方たちとの出会いのおかげで、フィールドワークも、福岡も、遠賀の町も初めてのことばかりで刺激的な時間でした!また次のフィールドワークにもどこかで参加できたらと思います!

【おまけ】リサーチカンファレンスポップアップイベント(福岡)

フィールドワーク前夜に福岡市内で開催された同主催の別イベントにも参加しました。運営の方はもちろん次の日のフィールドワークに参加される方も何名か参加されており、簡単な自己紹介などもできました。

リサーチャーがいない組織がどのようにリサーチを行なっているか、またどのようにそれらをプロダクトに反映しているかというテーマでのライトニングトークがメインです。それぞれ個性ある会社が登壇され、”リサーチ”の捉え方の幅の広さや、カスタマーやクライアントの理解への取り組みかたの多様さがわかる素敵なイベントでした。

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