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『Airワーク 採用管理』 超短期 大規模ブランドリニューアル デザイン推進のポイント

こんにちは。デザインマネジメントユニットの合田です。
『Airワーク 採用管理』のデザインディレクターをしています。
リクルートには2015年に中途入社し、学び領域→新規事業→婚活領域を経験した後
現在は人材領域のプロダクトをメインに担当しています。

今回は、2021年に実施した『Airワーク 採用管理』のブランド変更についてお話しします。
・複数の領域を跨いでいる
・ステークホルダーが多い
・短納期
といった特徴のある大規模ブランドリニューアルプロジェクトの中で、デザインディレクターとしてどう動いたかをまとめました。

『Airワーク 採用管理』って?

 『Airワーク 採用管理』は「0円で簡単に求人募集ができる採用管理サービス」です。
 人を採用したい企業の方向けサービスで、手軽に自社の採用ホームページを作成でき、求人票を作成してすぐに募集が開始できます。
応募者との連絡もサービス上で簡単に行うことができます。作成した求人票は『Airワーク 採用管理』上だけでなく、世界最大級の求人検索エンジン『Indeed』にも自動掲載されるため、多くの求職者に届けることができます。
 2018年8月にサービスを開始し、現在では飲食、小売、サービス、介護・福祉、建設、運輸・物流などの幅広い業種で導入が広がっています。


『Airワーク 採用管理』

プロジェクトの背景と目的

 『Airワーク 採用管理』は2022年6月1日にブランドリニューアルをするまで『ジョブオプLite』というサービス名でした。 リクルートの人材領域で、事業者向け採用管理サービスとして運用しており、ブランドもデザインのトーン&マナーやコミュニケーションの取り方も現在の『Airワーク 採用管理』とは異なっていました。

 『ジョブオプLite』のロゴから『Airワーク 採用管理』のロゴへ

 リクルートでは、特定の事業領域にフォーカスをしない、どの業界でも使えるホリゾンタルなSaaSプロダクトとして、事業者向けの業務・経営支援サービス『Airレジ』『Airペイ』をはじめとした「Air ビジネスツールズ」を以前から展開していました。人材領域の『ジョブオプLite』を改めてSaaSプロダクト「Air ビジネスツールズ」に位置付けることで、多くの領域に共通した課題を解決し、採用プロセスの効率化を叶えるサービスへ進化させることがブランドリニューアルの目的でした。

 結果、リクルートの人材領域とSaaS領域を跨ぐ分、ステークホルダーも多い大規模なプロジェクトとなりました。
さらにリブランディングの効果を最大限にするために、プロモーション開始時期を考慮した結果、リリース日が早々に2022年6月1日と決まったため、規模に対してかなりタイトなスケジュールとなりました。


ブランド変更に関わった2領域というタイトルで、リクルートの6領域の中からHRとSaaSが、機能組織として分類された6組織のうちデザインマネジメントユニットがピックアップされている図。

デザインスコープの整理

 プロジェクト開始時、最初にデザインディレクターとして行ったことは、2022年6月1日のリリース実現のために、デザイン観点で何をどこまで対応するかのスコープ整理と合意形成です。
 スケジュールと人的リソースが限られる中で、ユーザー観点とブランド整合性を大事にしつつ、対応する範囲の整理を行い、最速で人材領域とSaaS領域双方のステークホルダーから合意を得る必要がありました。 具体的には以下のステップで実施していきました。

・『ジョブオプLite』 プロダクト範囲の確認

 プロジェクト開始早々、関連サービスもある中で『ジョブオプLite』として今回リブランディングする範囲はどこまでかという議論が、各領域のユニット長やプロデューサーを交えて始まっていました。
 整理の結果、サービス紹介のLP・サービス登録動線・ログイン後のクライアント向け管理画面一式・ヘルプマニュアル の4要素をあわせて『ジョブオプLite』サービスと定義がなされ、それを軸に対応スコープを整理していきました。

・「Air ビジネスツールズ」ブランドガイドラインの確認と、リリース時点でのガイドライン準拠範囲の調整

 「Air ビジネスツールズ」では、複数のサービスで統一されたブランディングを行うためにブランドマネジメントチームが設置されており、厳密なブランドガイドラインとデザインガイドラインが設定、運用されています。
 それらのガイドラインの内容を確認し、『ジョブオプLite』を構成する4つの要素それぞれに対してブランド変更の際に対応すべき項目を整理し、まとめていきました。


ブランドカラー、アイコン、イラスト、写真、テキストルールなどのAir ビジネスツールズで使われているガイドラインのイメージ

・対応範囲の松竹梅案を策定、各案のざっくりWBSを引いた上で推し案を決める

 最も制約が少なくスケジュールを考えても対応に幅を持たせることができたサービス紹介LPに関しては、フル対応する松案、中庸案の竹案、最低限プラスアルファの範囲で対応する梅案と3つの案を策定。
 それぞれの案でざっくりWBSを引き、デザイナーと開発・企画のメンバーを含めた『ジョブオプLite』チーム内で事前にスケジュール感の齟齬がないか確認を行った上で、他3要素も同時に進める必要があるため実現性が最も高い梅案を推し案と決めました。
 サービス登録動線、ログイン後の管理画面の2つは竹案と梅案の2案を策定しましたが、開発と相談しテストスケジュールを考慮した結果、実現可能な方針は梅案となりました。
 ヘルプマニュアルはデザイン修正とコーディングまでデザインチームで対応する必要があり、導入システムとボリュームを考えると対応可能な範囲がはっきりしていたため、一つの案に最初から絞りました。

・全体会議の前に人材領域内で共有し、承認を得ておく

 人材領域とSaaS領域のメンバーが集まり議論・決裁する場へ持ち込む前に、議論の発散をなるべく防ぐため、人材領域の各ステークホルダーへこれまで整理した対応方針の原案を共有し、論点の抜け漏れ確認や指摘事項に対する微修正を行いました。
 具体的なステークホルダーは人材領域のマネージャー陣、部長、ユニット長です。2領域のこれらのステークホルダーが集まる場へ原案をぶっつけで持ち込むのではなく、可能な範囲で事前に合意をとり、認識合わせができる部分はしておくことを心がけていました。最終的に持ち込んだそれぞれの案で概ね合意を得ることができました。

ブランド変更デザイン修正案の作成

 デザインの対応スコープが決まったので、次はそれに対応した場合のデザイン制作に取り掛かりました。4要素毎に対応方針が異なっていたため、各要素のデザイン制作担当デザイナーを決め個別に対応していきました。
4要素毎に主要画面をピックアップし、デザイン制作を行う画面を決めてデザイン制作へと進めていきました。
当時『ジョブオプLite』のデザインチームは私を含め4人構成だったため、私もサービス紹介LPと、登録動線の調整部分を担当しました。
登録導線については、ブランド変更を行うことで、「Air ビジネスツールズ」の既存ユーザー、『ジョブオプLite』の既存ユーザー双方に混乱が起きないよう注記文言の内容や見せ方、配置場所、強度について細かい議論が交わされました。
 人材領域、SaaS領域各所の方々に協力いただきながら登録導線の調整を進めましたが、今回は詳細を割愛します。
 『Air ビジネスツールズ』では、ユーザーの目に触れるあらゆる接点でのコミュニケーションについて、ブランドマネジメントチームでレビューするAirブランドレビューという仕組みがあります。
ブランド変更のためのデザイン修正案が完成し、大枠の合意が取れた後はAirブランドレビューへ依頼を行い、デザインの最終調整に入っていきました。

ポイント

 領域を跨ぐような大規模ブランドリニューアルで、且つ短納期な案件をデザイン観点で推進する場合に大事だと感じたポイントは以下4点です。

  • 主体となって最速で対応範囲整理に動き、主導権を持つ

  • ざっくりでも現実に即したWBSを引くことで案に蓋然性を持たせ、決裁を行う方が判断しやすくする

  • 主要画面のみデザイン案を作ることで、ブランド変更後イメージの共通認識を醸成する

  • 最終決裁の場の前にステークホルダーや開発メンバーと可能な限り方針を共有し、合意を得ておく

おわりに

 人材領域の1プロダクトだった『ジョブオプLite』がホリゾンタルSaaSとして『Airワーク 採用管理』にブランド変更した際のデザインディレクターの動きについて紹介しました。
 リリース時点で目指す着地点を整理する上で、ユーザー/ブランド整合性観点でのあるべき姿と、スケジュールとリソースを鑑みた際の現実的な対応可能ラインのせめぎ合いをどう調整するかがポイントの案件だったと思います。
当時は、関係者間での認識齟齬を最小限に抑えスピード感を持って進めるにはどうすればいいかを常に考えながら試行錯誤していた記憶があります。
案件の大小に限らず、落とし所を整理し承認を得て推進しなければならない場面はよくあると思うので、この記事が少しでも参考になれば幸いです。

 『Airワーク 採用管理』はブランドリニューアル後も改修を重ねており、まだまだ変化の途上にあります。今後もチーム全員でデザイン、体験改善に尽力していきます。
最後まで読んでいただきありがとうございました。


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