感性寄りのデザイナーがリクルートに入った理由と、Airレジでやっていること
こんにちは。
「Airレジ」プロモーションサイトでプロダクトデザインを行なっている山田です。
去年新卒でリクルートに入社し、今年4月から「Airレジ」UXデザインチームにジョインしました。
元々「ロジカルな考え方」とかけ離れていた私ですが、この記事では以下の2つをメインでお伝えしたいと思います。
「何故ファーストキャリアでロジック重視の環境を選んだのか」
「実際の業務での失敗や学び」
ファーストキャリアの選び方で迷っている方、リクルートやAirレジの業務に興味のある方など、少しでも参考になれば嬉しいです。
バックグラウンドについて
はじめに、私のバックグラウンドについてお話できればと思います。
大学では東京藝術大学のデザイン科で、プロダクトからグラフック、インスタレーションなどいろんな制作を行っていました。
アウトプットが第一という世界で、ひたすら手を動かして制作に明け暮れる日々でした。
課題は毎回「『座る』について考える」「『考える』ことを考える」のような抽象的なテーマを作品にするもので、社会に出た時の実践を学ぶというよりは、抽象的な考え方やものの観方を鍛える内容が主でした。
そんな環境で感性側のトレーニングをひたすら積んでいった私ですが、3年生の時に、デザインにもプロセスの意識と網羅的な視点が必要ということを知りました。
きっかけは多摩美に情報デザイン学科をつくった須永剛司先生の赴任です。
先生は、それまで私が持っていなかった「デザインは自分のなかから出てくる哲学だけではなく、外の世界との関わりをかたちづくっていくものである。」という考えを教えてくれました。
先生が進めていた佐賀大医学部付属病院の看護師さんたちとの対話プロジェクトや、コミュニティデザインを提唱しているLstudioの山崎さんの著書での海士町総合振興計画デザイン事例、issue+designの筧 裕介さんのプロジェクトなどを知ることで、私のデザイン観は大きく変わりました。
この時期から、「一人の感性でつくるもの」と思っていたデザインは、私にとって「いろんな人と一緒につくっていく」ものになった気がします。また、そんな「目に見えないものに価値を与えられる」デザイナーになりたいという思いも芽生え始めました。
須永研で過ごした四年生の時の卒業制作。福岡の上野焼きの窯元さんと協働し、四季の器で12ヶ月毎のお茶を味わうコンセプトと茶器を制作しました。興味を持っていただいた方はコンセプト動画をどうぞ。
リクルートを選んだ理由
いろんな人と一緒にデザインをつくっていく上で、自分の意見を筋道立てて説明できないと他の人に納得してもらうことはできません。
また、目に見えないものをつくる、社会に関わるプロジェクトを行うのであれば、プロジェクトや事業が成り立つための収支設計、デザインを使うユーザーの行動原理などなど、全く別領域の知識が必要ということも感じていました。
そしてそれらは、大学時代のわたしが見事にすっぽかしてきたものだという危機感もありました。
そこで最初の会社として、人を動かすことで利益を上昇させることを前提とした企画づくりを学べる事業会社を選びました。
同級生などが広告代理店やデザイン事務所で制作力を鍛えているなか、手を動かすことから少し距離を置くことへの不安はありました。
ただわたしは一度何かのモードになると切り替えられないタイプなので、最初に苦手なロジックと、今まで経験したことない部分をどうにかしようと腹をくくりました。
会社選びの際は、ビジネスとリサーチ、ロジカルな説明の力が付きそうなこと+考え方に共感できることを軸としました。その結果、いろんな職種の人達が協働していて、生活上の不を解決するというビジョンで全国規模のサービスを展開しているリクルートを選びました。
また、リクルートの中の人がそれぞれ面白そうな活動をしているのも魅力でした。
社内発のコクリ!プロジェクトやiction!などの活動を見て、個人のビジョンに会社がお金を出して大きな活動となっていてる事例も、興味を持ったきっかけです。
リクルートでの経験
入社後はUXデザイナーの部署に配属となり、アートディレクター職能を軸にしながらプロダクト・サイトのUX改善の修行をしてきました。
リクルートはデザインの存在感や組織規模が大きい組織ではなく、プロジェクトで関わる人もこれまでの生活でほぼ関わってこなかったような領域の方が多いです。
視点が全く違う人に囲まれ、当たり前と思っていたアウトプット命の考え方が通じず、最初は心細くなったり合っていないのではと思う日々でした。
ただ、自分と違うものの考え方に触れ、アウトプット偏重思考だった自分の視野が広がったことは強く実感しています。
現時点で入社してから1年8ヶ月程ですが、企画からデザインまでいろいろなプロジェクトに関わらせていただきました。
去年所属していた部署では、主に以下のことをやらせていただいていました。
・プロダクト改善ABテスト企画出し
・UI作成
・文言ガイドライン作成
・サイトトップのMV刷新
・クリエイティブのCS調査と振り返り
デザイン以外知識ゼロの状態でいろいろなことにチャレンジさせていただくなかで、沢山の失敗と学びがありました。というかほとんど失敗だらけなのですが、その分学びが大きく、気づきがたくさんありました。
中でも、プロダクト改善の施策を考えてABテストから振り返りを行う過程では、デザイナー業務だけでは学べない考え方を沢山学びました。
改善施策を行う時には、事業目標に対して効果が上がるのかと、ユーザーが行動してくれるのかの数字を両立させなければならないので、定性と定量の視点の行き来が求められます。
いろんなことを学びたいと息巻いてリクルートに来た私ですが、元々数学が大の苦手で、入社した頃は定量分析の結果を用いて理詰めで施策を組み立てていく進め方に慣れずにいました。
また、何となくユーザーのリアルな声から離れてしまう気がしていたために、PV数やCVRなどの数字ばかりを見るのには違和感がありました。
そんな時先輩から言われた、「数字はユーザーの行動の代弁だから、数字が改善するってことは困りごとを取り除いてあげられたってこと。」という言葉を今でも覚えています。
定量分析も、リアルな声に負けないユーザーを知る手段になるということに気付かされた一言でした。
そんな経験を経て、今の部署では「Airレジ」のプロモーションサイトの改善や新規プロダクト開発プロジェクトを担当しています。
・プロモーションサイトの改善ABテスト企画から実施のディレクションと振り返り
・チームの施策作成時の運用方法改善
・プロモーションサイトの全体再設計とガイドラインへ落とし込み、それを反映したUIガイドライン
・新規プロダクトのニーズ検証ヒアリングと要件定義からデザイン
Air ビジネスツールズをつくるプロダクトデザイングループでは、ユーザー行動に沿ったプロダクトやサイトをつくることにかなり重きを置いているように感じます。
プロモサイト改善を考える上でも、ユーザーが求めているタイミングで必要な情報を提示することを、導入検討のジャーニーマップを作成しながら徹底的に考え抜いています。
また、ユーザー行動を必死に考えるのは企画者だけでありません。
デザイナーも制作するUIとユーザー行動との繋がりをロジカルに説明する必要があり、チーム内でもディレクターとデザイナーが上流部分の議論を行います。デザイナーと企画者がユーザー行動について意見を交わし合うことの大切さを知りました。
最初は、考えることと制作することを分けて考えていました。しかし今は、企画段階から最終アウトプットまでユーザー行動を考えることは一貫して同じであると感じています。
「いろんな人と一緒につくっていく」デザインをするために、ロジカルであることは大切なのだと実感しています。
サマリ
・定量的な数字の裏にはユーザーの声が隠れていることを知った
・元々アート寄りのバックグラウンドだったけれど、真反対の環境でも制作の領域と地続きで考え方を広げていけることを学んだ
これから
専門性を縦に太く持ちながら横の他領域に越境していくT字型人間の例えが有名ですが、自分がどうなりたいか考える時はいつもこの例えを思い出します。
わたしの場合、縦軸の制作力をより深く太くすることに加え、横軸として分析力とビジネスへの知識、リサーチ能力をもっと広げていきたいと思っています。
幸いなことに、徹底してユーザー行動を考え抜く上司や定性・定量両方の分析がうまい先輩、一緒にUIを学ぶ部活を立ち上げた同期など、本当に周りの人に恵まれた環境にいると思っています。
この環境のなかで、迷惑をかけまくりながらも成長して、きれいなものだけでなく、目に見えないけれど「本当に必要とされる価値」をかたちづくっていけるデザイナーに近づいていきたいです。