「UX Research Inquiry」に参加して思ったこと
こんにちは!リクルートライフスタイルのUXリサーチャーの片山です。
先日、UXリサーチャーが集うイベントに行ってきましたので、感想を書きます。
あわせてリクルートライフスタイルでUXリサーチャーとして働く僕の役割や求められていることについてもご紹介します。
イベントの概要と参加企業
イベントタイトル:
UX Research Inquiry
〜UXリサーチャーは何のジョブのために雇用される?〜
イベント概要:
UXリサーチについて、UXリサーチの第一線で活躍されている方をお招きし、事例紹介やパネルディスカッションを通してUXリサーチの意義や可能性を考察する場
https://mercari.connpass.com/event/155438/
参加企業:
メルペイ、U-NEXT、freee、リクルートライフスタイル
僕自身も、他社のUXリサーチャーがどのような仕事してるのか?会社の中での立ち位置は?などが気になっておりました。
現役バリバリのUXリサーチャーの皆様、UXリサーチのことはよく知らないけど興味はあるという皆様、他所の会社のUXリサーチャーのあり方に興味がある皆様、などの方々に、少しでも喜んで頂ける内容となれば幸いです。
さて、開場
主催メルペイのオフィス@六本木ヒルズ でイベントは行われました。
ドアを開けた瞬間に、ステキな空間が広がります。
ステキな屋台と、いっぱいに盛られたカラフルなフィンガーフードが目に飛び込みます。
リクルートライフスタイル社員もイベントに備えてお腹を満たします。無心で食べます。
当事者意識の高さが伺えますね。
ソフトドリンクも無料自動販売機で飲み放題。大きな冷蔵庫にびっしり詰まったアルコールも飲み放題です。
発表前の時間でも、メルペイの優れたUX設計を感じました。
続いて、各社の発表
発表内容は各社で多種多様でしたが、下記の観点は共通して語られていました。
・UXリサーチャーないしはチームとしての存在意義・目的
・社内での立ち位置
・目的を達成するための「課題」と「課題解決のために取り組んでいること」
まずは、各社の発表スライドを貼りますので、ご覧ください。
「UXリサーチャー/チーム」 の存在意義・目的
この観点では、各社の発表で共通項が多く見られました。
問いを立てる:
・「本質的な問いを立てる」メルペイ
・「Who? User?」U-NEXT
洞察・タネを得る:
・「鋭い洞察を得る」メルペイ
・「マジ価値のタネを発見する」freee
・「discover the insight.Deeply!」U-NEXT
・「お店の人も気付いていない課題を見つける」リクルートライフスタイル
事業に寄与する:
・「事業の意思決定にコミットする」メルペイ
・「Objectiveを立案可能にする」freee
・「お店の人も気付いていない課題を解決する」リクルートライフスタイル
①問いを立て
②リサーチを行い 洞察/タネ/insight を得て、解くべき課題を特定する
③その洞察・タネ、または特定した課題の解決策で、事業に寄与する
各社でいくらか差分はあるものの、これがUXリサーチの本質なのだろうと解釈しました。
いかにして洞察・タネを得るかという点には、各社に工夫が見られました。
手前味噌ですが、リクルートライフスタイルの取り組みのひとつの業務体験(実際にユーザーのお店で働きながらプロダクトを検証する)や、freeeのユーザー企業への留学は、興味深い取り組みでした。
「現場に入り込む」「当事者性を獲得する」という話では、本イベントに参加はされていませんが、元メルペイの方がカフェを経営し現場に立っている、ということを耳にしました。カフェ運営業務の潜在課題をごそっと明らかにして、その解決策が現場に気持ちよくフィットするサービスを作ってくるのでは、と期待してしまいますね。
「UXリサーチャー/チーム」の立ち位置
こちらは事業ドメインやフェーズにより、各社で違いが見られて興味深かったです。
U-NEXTはジャスパーさん(登壇者)がジョインし、まさにこれからUXリサーチャーを組織にインストールしていくところ、というタイミングでした。
UXリサーチの存在意義・必要性を幅広いステークホルダーに説きながら、実際にリサーチを実行できる環境をつくることにとにかく注力している。とのことでした。
UXリサーチャーは専任であるべきか?兼任であるべきか?の観点も語られましたし、参加者からの質問も多かったです。
メルペイではUXリサーチャーは完全に専任となっておりました。
専任である意義は、中立でいられること。
PMはビジネス指標を追い、UXリサーチャーはお客様の体験に振り切ることに徹する。そのうえで最後に両者で落とし所を見つける。というケースが多いようです。
また後述する、Weekly UXRなどの取り組みは専任リサーチャーを置けるからこそできる取組と感じました。
freeeも専業でした。
当事者にならずに当事性を持つことが重要。
事業ドメインの性質的に、ユーザーとの距離が遠いことが課題とのことでした。他社の給与計算業務などはセンシティブですので、サクッとデプスインタビューというのも難しそうですよね。
それを打開するためにUXリサーチャーを専属で置いたり、ユーザー企業への留学の機会を設けているとのことでした。
(尚、リサーチャーとデザイナーは切り分けてはいないとのことでした。両方のスキルがあることが望ましい、と)
リクルートライフスタイルのUXリサーチャーは兼任です。デザイナーの職務要件を言語化した際に、今居る人たちのことを見渡し、「調査・仮説検証が主な人」/「プロダクトデザインが主な人」/「クリエイティブが主な人」のそれぞれに合わせた職能を便宜的に名乗った。そのときにUXリサーチャーという人格が誕生した。という経緯のようです。
あくまで「主な」ですので、各々がプロジェクトの状況に合わせて、リサーチ業務以外に染み出して働くことが多いです。
「UXリサーチの普及と教育」に課題あり
各社ともUXリサーチを「文化」・「スキル」両方の観点で、会社内で広めていく必要があり、そのために工夫を凝らしていました。ほんの一部ですが、ご紹介します。
Weekly UXR (メルペイ)
「お客さまをお呼びして毎週社内で実施。PMやデザイナーはリアルタイム中継で参加し、結果を踏まえて即デザインを改修したり、翌日には簡易レポートをまとめて意思決定に活かしたりしている。チームの社内認知拡大の営業ツールのような役割も兼ねる。」(発表資料より引用)
すごいスピード感ですよね!実益のあるリサーチに営業ツール的な役割を載せているのもすごいなと思いました。
リサーチkit(ツール)の提供とサロンの開催 (freee)
ハードスキルの敷居を下げてあげることと、気軽に相談できる場(人と人をつなぐ場)をつくってあげることで、手厚くUXリサーチの普及とサポートを行っているように感じました。
リサーチkitの詳細は語られておりませんでしたが、非常に気になりますね!
以上がイベントの感想となります。各社、 立ち位置や役割に違いはありますが、UXリサーチャーを社内におくことを積極的に進めていました。今後もこの流れが進んでいき、職種としてのニーズも高まっていきそうですね。
リクルートライフスタイルでのUXリサーチャーとしての働き方 (あくまで私の場合)
最後に、私がリクルートライフスタイルでどんな仕事をしているか。どんなスキルや役割が会社から求められているか。というあたりを簡単にお伝えします。
ちなみに私、リクルートライフスタイルに入社する前にはUXリサーチ・コンサルで働いていました。その点も踏まえて、事業会社でのUXリサーチャー像の一例を簡単に紹介できればと思います。
リクルートライフスタイルでUXリサーチャーとして働いていくなかで、専業のUXリサーチ・コンサルと事業会社のインハウスUXリサーチャーでは、求められる振る舞いやアウトプットが違うと肌で感じています。
専業のUXリサーチ・コンサルで働いていたとき
クライアントが抱えた課題を解決するための、リサーチ設計と実施、アウトプット提供が目的となり、機能的な振る舞いになります。
自分の経験からですが、クライアントの立場からすると私は良い意味で部外者です。内部的な事情(目先の売上げ目標や実現可能性、人間関係、など)を気にすることなく、中立的なリサーチが行えることが一番のメリットだと思っています。
また、様々な事業ドメインで仕事ができるのも前者の醍醐味だと思います。
実際に私も、通信会社や家電メーカー、自動車メーカー、飲料メーカーなど、様々な事業ドメインのクライアントとお仕事をする機会をいただきました。
リクルートライフスタイルでUXリサーチャーの役割を担っている今
案件の課題を解決するために適切なリサーチをするというのはもちろんですが、想いや気力も強く問われると感じることが多いです。
私の場合ですと、最近は新規サービス開発案件を担当していたとうこともありますが、
・「解決すべきお題が与えられて、それをリサーチしてくれ(課題が明確)」というケースが少ない。課題自体をUXリサーチャーが探しにいく
・目的がリサーチではなく「世の中に価値を提供し、それの対価を得られる状態まで案件を進めること(わかりやすいのがプロダクトを起案して作って売る)」であるケースが多い
と感じています。
例えば、サービスの開発をする場合には、UXリサーチャー的な人格でアサインされ、解くべき課題そのものが明確ではない状態から、新サービスのタネ探し〜サービスのマネタイズまでを、一貫して担当することが多いです。
サービスを開発するためには、決裁者ないしは案件オーナーに対して
①解くべきユーザー課題の存在
②解決策の提案
③解決策にユーザーが価値を感じること
④それがマネタイズできること、ROIが合うこと
⑤そのサービス開発と運用を実行できること
と一貫したストーリーを提供して、決済者にGOと言わせる必要が生じます。
これをやりきるには、
・解くべき課題を発見しサービスに仕立てるスキル:UXリサーチャー(+デザイナー)
・それが売れることを証明するスキル:ビジネス
・開発/運用/サポートをマネジメントするスキル:マネジメント
がハードスキルとして求められます。
そして「想いや、やり抜くぞという気力」というしっとりとした部分(ソフトスキル)強くもとめられます。
そして、この「想いや、やり抜くぞという気力」の根源が何かというと、自分がUXリサーチャー人格として見つけ出した「解くべき課題や、イケてる解決策」であると感じています。
(大変ですが、裁量権大きいし自由度も高いので、すごい楽しく働いております!)
今後、世の中的にUXリサーチャーってどんな感じの働き方になるか?(妄想込み)
今後は(今もですが)、リクルートライフスタイルに限らず世の中の流れとして、不確実性の高い状況でのマネタイズが求められ続けると思います。
その状況では解くべき課題は顕在化していないはず(顕在化していたら既に他の会社がサービス出してるはず)。
潜在的な課題を顕在化させ、価値ある解決策を提供し、売れることを示し、実行する。これをこなす必要が出てきそう、と感じます。
そして、この作業の初期段階にアサインされるべきなのがUXリサーチャーなのではと思っています。
リサーチで見つけ出した「課題ないしは解決策」と「想い・やり抜くぞという気力」を抱きながら、リサーチャー→PM→プロデューサー(場合によっては、また→リサーチャー→ループ・・・)と役割をこなしていくのではないだろうかと思います。
まとめ
なので、UXリサーチャーは今後、ますます重要になっていくと思います!
(本ブログでは新規事業でのUXリサーチャー像によっていますが、リクルートライフスタイルでは「0→1」、「1→100」の各フェーズでUXリサーチャーが活躍しています)
追伸
リクルートライフスタイルでもUXリサーチャーを絶賛募集中です。
興味を持たれた方がいらっしゃいましたら、お気軽にご連絡くださいー!