『カーセンサー』だけじゃない!_事業クローズアップnote [自動車領域]後編
はじめに
リクルートの自動車事業といえば何が思い浮かぶだろうか?中古車情報などを提供している『カーセンサー』に加え、実は現在、自動車販売店の業務支援サービスを開発するなど、さまざまなプロダクトを手がけている。
既に利用されているプロダクトの磨き込みや新規プロダクトのローンチにあたって、重要な役割を担うのがプロダクトマネージャー(PdM)とデザインディレクターだ。前者はプロダクト戦略やロードマップを描き、後者はデザインの観点からユーザー体験価値とビジネス価値を高める役を果たしている。
今回は、その役割を果たしている二人にインタビュー。新プロダクト(=業務支援SaaS。本記事内では『CSクラウド』と表記します)の企画・開発を通して感じた、自動車事業でのプロダクトづくりの醍醐味に迫る。
プロフィール
①2人がリクルートを選んだ理由
◆リクルートで叶えたいことがあった。転職前に抱いていたそれぞれの思い
――まず、リクルートで働くことを選んだ理由について教えてください。
小磯:僕はキャリアを通して大切にしているテーマがありまして、それは「デザイン」の地位を引き上げる事なんです。そして、それを実現するにはリクルートが最適だと思ったからですね。
というのも、デザイナーとして働くようになってから、多くの企業や組織の中でデザインの価値や重要性はまだまだ低く見積もられてしまっているなと感じていました。例えばデザイナーには裁量があまり無く社内でも下請け的な位置づけになってしまうことが少なくない状況で、モヤモヤした気持ちを抱えていました。
一方で、デザインを経営にうまく取り入れたり、デザイナーが事業・プロダクト検討の上流から価値を発揮することで高い成果を上げ競合優位性を築いたりする企業も少しずつ増えてきていると感じます。
リクルートでもそのような変化を起こすことができれば、他社を含め社会に与える影響も大きいのではないかと。加えて、リクルートはボトムアップ文化を大事にしているため、自分の意思を起点に変化を起こすためのチャレンジがしやすい環境があると考えて転職を決めました。
桶川:僕がリクルートに転職したのは、自分の手で豊かな社会づくりしている実感を得たかったからです。事業会社として自前のプロダクトをいくつも持っており、いずれもライフイベントやライフスタイルに寄り添う目的で作られたものばかりです。人々の社会行動に紐づいていて、かつトップシェアを誇るプロダクトを多数有していることに、社会をよりよく変えられるポテンシャルを感じました。
またリクルートの新規事業提案制度 「Ring」にも興味を持ちました。「Ring」とは、役職・年齢・職種などに関係なく「世の中の不*」を解決できるアイデアであれば、事業化のチャンスをもらえるという制度です。自分次第でチャンスを掴み取れる場がある社風自体が、僕にとって非常に魅力的でした。
*「不」=不満や不安などのことを指します
②プロダクトづくりにおける役割と自動車事業でやる面白さ
◆自動車事業の面白さは「明確な解なき問いへの挑戦」にある
――それでは次に、自動車事業に従事することになった経緯について教えてください。
小磯:リクルートに転職後、最初に担当したのはHR事業です。『リクナビ』『リクナビNEXT』『リクルートエージェント』『タウンワーク』など多岐にわたるサービスを展開するHR事業はリクルートでも歴史が古く、仕組みがしっかりと構築されていました。そのHR事業で2年ほど経験を積んだのち、上長に「もう少し自由度の高い事業にチャレンジしてみたい」と話したところ、自動車事業にポジションがあり異動することになりました。
桶川:僕の場合は自動車事業で働きたいと思い、現在の部署(自動車事業のプロダクトマネジメントグループ)に配属となりました。その発端は、先述した「Ring」です。モビリティの検索・予約・決済までをワンストップで実現できるMaaSプロダクトを起案し、自動車事業のトップ層の人たちと新規事業の可能性を探るチャンスを得ました。結果的に事業化には至らなかったのですが、「将来的に自動車事業で実現できる可能性はある」と言っていただけたんです。
少し話が逸れますが、当時、人間の社会行動の根本と関連する「移動」への関心が高まっていました。ちょうど「モビリティ革命」が叫ばれていた頃でもあり、こうした背景から自動車事業に腰を据えたいと思うようになったと記憶しています。
――では、お二人の職種それぞれで自動車事業のプロダクトをつくる魅力はどんなところにあるでしょうか?
小磯:プロダクトマネージャーがプロダクトのビジネス戦略を描き、デザインディレクターはそれらに基づいて、UX設計やUIデザインの具現化などを担っています。
冒頭部分と重複しますが、自動車事業はリクルートの他の事業と比較すると中規模なので、「若手の人や比較的経験が少ない人でも重要なプロジェクトを担当する打席数が多いこと」はこの組織でキャリアを積む魅力のひとつです。果敢にチャレンジする人が集まっていると思いますし、新しいことにトライするときには一緒に考えてくれる人がいるので心強いですね。
桶川:たしかに。自動車事業はプロダクトの数自体がそこまで多くないので、トップダウンとボトムアップのバランスがちょうど良く、よりチャレンジしやすい環境かもしれないですね。
小磯:加えて、自動車事業は営業やマーケティングなどプロダクトデザイン以外の組織との距離感が近いので、多職種連携の経験を得やすいです。ただ単にプロダクトのUI/UXを磨き込むだけではなく、色々な組織と連携を図ることで「デザイナーと協業するとこんなこともできるんだ」と気づいてもらうきっかけになります。結果、デザインの重要性が組織で認められることにつながるため、こういった機会は大切だと考えています。これもまた自動車事業の魅力の1つですね。
桶川:改めて僕が感じている魅力は2つ。1つは小磯さん同様、打席数の多さです。リクルートって未経験のミッションを与えられることも少なくないのですが、自動車事業は特に思い切った仕事の振り方をしてくる上長が多い気がしますね(笑)。僕の場合、クルマのサブスクリプションサービスを立ち上げるタイミングで意思決定の責任者としてサービスとシステム開発の企画・設計やパートナーアライアンス、営業を始めとする他組織との連携を担うミッションを与えられました。当時は企画やシステム開発の経験が一切なかったので結構びっくりしましたが、良い経験をさせてもらったと思っています。
2つめは、やっぱり自動車業界自体の面白さです。現在、自動運転やサブスクへの注目が高まっており、従来の自動車の在り方が大きく変わろうとしています。間違いなく転換期ではあるものの、現時点においては自動運転やサブスクが定着しているわけではありません。どういう条件を満たせば大きな変革が起きるのかも定かではなく、今後の事業戦略や事業展開について不確定要素が多いんです。だからこそ、自動車業界の動向を観察してリクルートとしての在り方を探る嗅覚が必要になってきます。失敗もあるはずですが、大当たりするプロダクトを手がけられるチャンスでもある。これってすごくロマンがあると思いませんか?プロダクトを世に出してからも業界の変化をつかんで検証していく。むしろ変化をつくっていく。ある意味で社会的な実証実験をしているようなものなので、チャレンジの場としてもすごく面白いと思っています。
③業務支援SaaS、リリース
◆アナログからデジタルへ。経済的リターンまで見据えたプロダクトを開発
――自動車販売店の業務を支援するツール『CSクラウド*』をリリースされる予定だと伺っています。これは、どのようなプロダクトなのでしょうか?
*リリース前に取材を行っています
*同名サービスのコンセプト決定から開発・販売戦略に至るまで新たに設計しリニューアルリリースしました
桶川:端的に言うと、アナログな業務をデジタルに置き換えられるツールです。例えば、自動車販売店で来店者にアンケートを取りたい際、紙への回答記入をしてもらった後にシステムに手入力し直すのが一般的です。他にも、見積書や注文書の紙に印鑑をもらったり、納車手続きに必要な書類も別途10枚程度にのぼったり、それらを郵送したりと、とにかく手間がかかります。
こうした「不(不満や不安など)」に対する打ち手が『CSクラウド』です。『CSクラウド』を利用すると、電子アンケートが実施可能になり、収集した回答をデータベース化するだけでなく各種書類へ情報連携させることが可能です。また注文書の電子契約締結もできたりします。さらに納車の手続きをスムーズにするなど、販売店の方の業務負荷をトータルで削減できます。定量的な効果のイメージとしては、納車手続きの書類作成に30分かけていたところが3分程度で済むようになります。
ところで『CSクラウド』の真の狙いは、購入予定者との商談時間の確保や商談の質の向上です。書類作成にかける時間を短縮して、成約台数の増加や顧客満足度の向上につながることに時間を振り向けてもらいたい。業務効率化の先にある経済的なリターンもセットで価値提供したいと考えています。
――『CSクラウド』の案件を通して得た知見や、キャリアにプラスになったこと、作り手として面白かったことは何でしょうか?
桶川:自動車販売店の「業務の当たり前やユーザーの購入体験を変える」というテーマに対して、具体的なプロダクトを手がけることで挑戦できたことですね。これは前編のnoteにもあるようにリクルートの自動車事業が脈々とトライして達成してきたことでもありますし、加えて「豊かな社会にしたい」という僕のテーマにも紐づくので、経験できて良かったと思っています。作り手の自分としては良いプロダクトに仕上がってきた実感がありますが、今後も改善を加えながらリリースを迎えて社会を変える一助を担えたらと考えています。
小磯:僕も転職時に大切だと考えていたテーマに取り組めて良かったです。今回はプロダクトをゼロイチで立ち上げるところから、プロダクトマネージャーとタッグを組み、フラットに議論してプロダクトを作り込んでいく、というプロセスを採用しました。プロダクトづくりの初期段階からデザイナーが介在することで、クオリティを担保しながらも推進スピードをかなり向上できている実感があります。
自動車事業の中でこのような取り組みを増やし、デザイナーおよびデザインの介在価値を広げていきたいと思っています。
また、『CSクラウド』は自動車販売店の業務をワンストップでDX化するプロダクトですが、これを実現するにあたって僕が一番重要だと思っていたのは「実際に使う人たち」をちゃんと理解すること。例えば販売店から契約に関する重要なメールを送ったのに購入者側が気づいていなくて、原因を探ると迷惑メールとして認識されていた場合、双方にとって困る事態になりかねません。細かい「不(不満や不安など)」まで解像度を上げることが、プロダクトを使ってもらうのに重要なポイントだと考えていました。
そこで販売店まで足を運び話を伺ったり業務観察させてもらったりしたのですが、その上で「こういう設計にしよう」と決めるプロセスを踏めたことはすごく勉強になりました。面白かったですね。
④最後に、こんな仲間を募集中!
――自動車事業をとりまく変化や、むしろ変化を仕掛ける面白さをとてもよく理解できました。最後に、どんな人に仲間になってほしいと考えますか?
桶川:プロダクトマネージャーに関しては、答えがないことに取り組むことにワクワクする人が向いていると思います。これまでお伝えしてきたように、自動車事業は変革期にあり、「これから未来はこうなるだろうから、今これをすべきだ」と思考して、自分で正解を見つけにいくことが求められています。自分で仮説を考えて、誰も解いたことがない問いに挑戦したい人にはうってつけの環境だと思います。
またいろいろな専門性を持っている人とコラボレーションしていかないと社会は変えられないので、多様な価値観やバックグラウンドを持つ人とプロジェクトを進めていく必要があると思っています。ですから、様々な知見を取り入れて、戦略を立てることを面白がれる人と一緒に働きたいですね。
小磯:自動車事業に関わらずかもしれませんが、デザインディレクターは「目的思考」で考え、コミュニケーションできる人がすごくマッチすると思います。
自分も含めてデザイナーは、デザインする事自体を目的化してしまう=いわゆる「手段の目的化」に陥りがちなところがあるなと感じることがあります。この状態に陥ってしまうと、事業・プロダクトの戦略を考えるビジネス系の職種やあるいはエンジニアなど、様々なプロフェッショナルと協業する際に目線が合わず議論がまとまらない事態になってしまいます。なので、目的を忘れず、手段に囚われず、柔軟にアイデアを考えて提案できるスキルを持っている人が仲間に加わってくれるといいですね。
あとは、デザイナーの中にも色々なタイプの人がいると思うのですが、例えば、ビジュアルやイラストを駆使して独自な世界観をつくれる人、テクノロジーやエンジニアリングに強い人など、どこか尖った部分や強みを持っている人が仲間になってもらえたらすごく嬉しいですね。多様な個性を持った人と一緒に仕事ができる環境は、自分もすごく刺激をもらえますし、チームとしても強くなると思っています。