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顧客インサイトを徹底的につかんだプロダクト開発・拡販の流れ 〜『HOT PEPPER Beauty』での『スタイリスト指定クーポン』の開発〜

こんにちは!
美容領域で『SALON BOARD』のプロダクトマネージャーをしている平野です。クライアントソリューションという組織で、全国のサロン様(以下顧客)に向き合いながら日々プロダクト企画・開発を行っています。

突然ですが、みなさんは機能追加をする際、どこまで顧客調査をしていますか?
顧客データを見て検討するのはもちろんですが、それだけでは顧客インサイトの真因はつかめません。

リクルートではアンケート調査やヒアリングで一次情報を徹底的に集め、顧客のインサイトを捉えてプロダクト開発をする文化があります。
本記事では、どのように一次情報を集め、その顧客インサイトを機能開発・クライアントサクセスに反映させているか、『スタイリスト指定クーポン』の事例をもとにご紹介します。
私たちプロダクトマネージャーの取り組みを知っていただくきっかけになれば幸いです!

『SALON BOARD』 とは

『SALON BOARD』公式サイト

美容サロン経営をサポートするクラウド型の業務支援ツールで、『HOT PEPPER Beauty』掲載サロンに無料で提供しています。2012年6月のサービス開始から10年目を迎えた現在、ヘアサロン・エステサロン・ネイルサロンなど約10万店舗で利用されています。

『HOT PEPPER Beauty』と完全に連動しており、予約管理や顧客管理・会計レジなど、美容サロンのバックオフィス業務を効率化。また、『SALON BOARD』に蓄積されたデータを簡単に集計・分析することで、集客の課題を簡単に特定でき、『HOT PEPPER Beauty』のページやクーポンに分析結果を反映することで、集客施策までを一気通貫でサポートしています。

『スタイリスト指定クーポン』 とは

2021年7月、『HOT PEPPER Beauty』および『SALON BOARD』を利用している美容室向けにリリースした、クーポンを使った予約時に対象のスタイリストを指定できる機能です。リリース初期から数多くの顧客に活用され、若手スタイリストの指名予約率などの顧客課題を解決できており、美容業界からも大きなインパクトある機能として好評をいただいています。

顧客インサイトを徹底的につかんだプロダクト開発・拡販の流れ


本機能はごくシンプルな機能に見えますが、顧客がなぜ必要としているのか、実は現場実際にプロダクトをリアルタイムで使っている方(サロンなど店舗の現場に立っている方)にヒアリングしないと見えない背景が隠されていました。
以降は、それらの顧客インサイトをどうやって把握し開発・拡販に繋げていったのか、4つのポイントに沿って説明します。

  1. 前提として、顧客の声を開発担当が直接聞ける環境をつくること

  2. ユーザー(ペルソナ)ごとに、ごく単純な機能要望に見えるものの背景にある切実な悩みを徹底的に引き出すこと

  3. 要望のままに作るのではなく、悩みが解決できる機能とは何かを考えた機能設計をすること

  4. 顧客の"あるある"な悩み・その解決法を端的に訴求し、クライアントサクセスすること

前提として、顧客の声を開発担当が直接聞ける環境をつくること


精度の高いプロダクト改善につなげるため、営業やサポートデスクだけではなく、企画・開発担当も顧客接点を持ち、現場を理解できている必要があると私は考えています。
美容領域では普段顧客に接する営業担当だけでなく、企画・開発担当も顧客理解を深められるよう、以下のユニークな仕組みを設けています。

【モニター会員制】
『SALON BOARD』利用者向けに予めモニター会員を募っておき、顧客に対して企画・開発担当が直接リサーチを行える仕組みです。既存機能の改善や新機能の要望など、顧客に話を聞きたいと思ったら、いつでもすぐにアンケートやヒアリングができます。

【業務体験】
顧客の業務を1日体験・密着できる「業務体験」も定期的に実施しています。自分たちのプロダクトが現場でどう使われているか、他にどのようなツールを使っているのかなど、サロンのオープンからクローズまで1日の流れを通して、業務全体の理解を深めることができます。

幅広いクライアントからスピーディにリサーチできる”モニター会員制”と、じっくり入り込める”業務体験”を使い分けながら顧客理解を深め、日々のプロダクト改善に活かしています。

ユーザー(ペルソナ)ごとに、ごく単純な機能要望に見えるものの背景にある切実な悩みを徹底的に引き出すこと


『スタイリスト指定クーポン』は顧客から寄せられる要望数で常に上位で、構想自体は既にあったものです。プロジェクトが動き出すまでの私は、「データで顧客ニーズがあることは見えているし、機能提供できれば顧客満足に繋がるだろう」と表面的に捉えていましたが、顧客ヒアリングを通して、データだけでは見えなかった現場課題があることを知ります。

業界特性として、美容室の多くはサロンではなくスタイリストにお客様がつく慣習があり、また一口にスタイリストといっても、実務経験の年数や技術レベルでランクが多岐に渡り、個々で課題・ニーズが大きく異なります。

例えば、スタイリストデビューして間もない若手は、まず自身の指名客獲得、また更なる技術向上のため数多く経験を積んでいきたい課題があります。一方で経験豊富なトップスタイリストは、ほぼ指名客で予約が埋まっているなかで急遽空いた時間帯を確実に埋めていきたい、また自身の技術に合わせたメニュー・クーポンの価格設定をすることで顧客単価をあげていきたい、というニーズがあります。

そのなかで本機能は特に若手スタイリストからのニーズが多かったの要望が高かったのですが、その真因として若手ほど集客面指名客の獲得や、 “自身の強みや特長をどうやって伸ばし、お客様に理解してもらうか ブランディングに悩み、早期退職してしまう業界課題が隠されていました。
若手の育成担当をされているオーナーさんの話によると、『スタイリスト指定クーポン』は個々の技術や今後どうありたいのか、育成計画を見据えて戦略的なクーポン設計ができるため、若手のモチベーションUPとなり、それがひいては経営課題の改善にもつながる、ということでした。

このように、スタイリストそれぞれの個性を引き出し、成長を支援する使われ方をしているという事実は、実際に現場ヒアリングをしないと見えなかったことでした。改めて、一次情報を集めてペルソナ・ユースケースを解像度高く捉える大切さを再実感しました。

要望のままに作るのではなく、悩みが解決できる機能とは何かを考え抜いた設計をすること


若手からのニーズが特に多いことは理解しつつも、若手スタイリストの集客だけを目的とせず、トップスタイリストなど他のスタッフ向けにも、サロン全体でクーポンを効果的に活用いただけることを意識して仕様を検討しました。

例えば、前述のとおりトップスタイリストは「ほぼ指名客で予約が埋まっているなかで急遽空いた時間帯を確実に埋めていきたい」ニーズがあるので、予約可能な日時を指定できる『日時限定クーポン』と組み合わせて条件設定できるようにしました。

また、来店履歴があるお客さまにメールを送れる『メッセージ配信』機能でもクーポンを連動できるようにしています。ただサイトにクーポンを掲載するだけではなく、スタイリスト個々のユースケースに合わせてお客様にクーポンを直接送付できるので、より柔軟な集客を行えます。
例)
・若手スタイリスト:指名客定着に向けたアフターフォロー
・トップスタイリスト:予約枠が空いたときの連絡

顧客の"あるある"な悩み・その解決法を端的に訴求し、クライアントサクセスすること


リリース後、企画者はプロダクトマネージャーとして機能をより顧客に活用してもらえるよう、テックタッチを駆使してクライアントサクセス(クライアントが自身で機能を使えるようになり、活用いただいている状態)まで実施します。
ただ単に機能を紹介するのではなく、ヒアリングで得た顧客の"あるある”な悩みを前面に出し、具体的な利用場面、活用方法を想起していただきやすいメッセージングを意識しています。また、機能を活用しているサロン様への取材を行い、よりリアリティのある活用事例を追加したパンフレットやメールコンテンツを制作したうえで、まだ機能を活用されていない顧客に配布しました。

おわりに


今回は美容領域の 『スタイリスト指定クーポン』 を例に、私たちが日々どのように現場の一次情報を集め、どうやって顧客インサイトを機能開発やクライアントサクセスに反映させているかをご紹介させていただきました。

私自身、顧客ヒアリングが大好きです。毎回、現場の切実な悩みを聞いていると私たちがやるべき課題解決は山積みだなと痛感します。これからもデータや数字だけで判断するのではなく、サロンオーナーやスタイリスト一人ひとりに寄り添いながら『SALON BOARD』を役に立つプロダクトに発展させていきたいと思っています。

最後までお読みいただきありがとうございました!

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