子ども向け英語学習アプリのユーザーテストでの発見と改善『スタディサプリENGLISH for KIDS』
ユーザーテストで確認したいこと
『スタディサプリENGLISH for KIDS』の学習の流れは、以下の図のように大きく3つのステップがあります。
今回のユーザーテストでは、3歳から8歳の子どもたちに実際にサービスを試してもらいながら、上記の流れにおいて、アプリの操作、ヒントの理解、興味や学習効果などに関するフィードバックを収集しました。
プロジェクトマネージャー、開発チーム、コンテンツチームのメンバーと子どもの反応や行動を観察し、どの部分が問題を引き起こしているのかを特定。また、子どもたちとその保護者にインタビューを行い、子どもの視点での洞察を得ることにも力を入れました。
細かくユーザーテストをしてよかったこと
今回はリーディング、リスニング、スピーキング能力を鍛えるために、9つのトレーニングゲームを開発しました。ユーザーテストは1、2個のゲームを開発後にその都度実施、という流れで行いました。
早い段階で操作性やデザイン、学習効果に関するフィードバックを収集し改善することで次の開発に活かすというサイクルを構築できたと思います。
後半のゲーム開発時には、ユーザーテストで得た問題点を踏まえ、ノウハウを活用しながらより効果的なゲーム開発が行えました。
ユーザーテストをして改善したところ
もちろんデザインする際には、子どもが使いやすい設計を実現するためにさまざまな工夫を施しました。例えば、シンプルで直感的なナビゲーションやアイコンの使用、大きなタッチ領域の配置など、子どもの操作性や理解しやすさを考慮したデザインの採用などです。
しかし、実際に子どもに触ってもらうと、ユーザーが子どもであることならではの問題点も多く、色々な改善しました。
本日はその中からいくつかピックアップして紹介します。
① アテンションとヒント
3歳から8歳の子どもたちを主な対象にしているため、デバイスリテラシーを低めに想定していましたが、実際に3歳から5歳の幼児が操作に迷うケースがあることがわかりました。
例えば大人は直感で操作できるようなシンプルなボタンでも、子どもにとって理解しづらいケースでは、迷うことなくトレーニングまでたどり着けるように、メイン導線のボタンに全てアテンションを追加しました。
② ボタンを押せるタイミングの制御
ボタンの操作は、子どもの性格によって「とりあえずたくさんタップする子」と「迷うと手が止まる子」と大きく2種類に分かれます。
「手が止まる子」は、前述のように押すボタンを分かりやすくアテンションした結果、手を止めずに次に進むようになりました。
一方、「とりあえずタップする子」はボタンを見るとすぐにタップする傾向にあります。そこで、学習効果を最大限にするために、いくつかのボタンの押せるタイミングを制御することにしまし
た。
例えば、トレーニングゲームの初回にはチュートリアルが自動再生されます。「とりあえずタップする子」はチュートリアル途中で「始める」ボタンを押してしまいます。ゲームの遊び方や趣旨を理解しないまま始めてしまうと、満足度と学習効果が下がるため、チュートリアル完了後に「始める」ボタンが表示されるよう、仕様を変更しました。
答え合わせ画面では習った単語を聞いてからトレーニングゲームに遷移できますが、
こちらもチュートリアル同様、音声再生後にゲームスタートのボタンが表示されるように改善しました。
③ 反応設定と正解エリアの調整
ユーザーテストで得た一番大きな気づきは、子どもはタップする力が弱いことと、ドラッグとドロップの距離が短いことでした。
開発したゲームの中にはドラッグとドロップの操作が多く、正解は分かっていてもドラッグの途中で剥がれてしまったり、気持ちが先走って早めに手を離してしまう子も多かったのです。
改善点としては、タッチ感度の調整やUIデザイン上の移動距離の短縮、正解エリア範囲の拡大などを行いました。
1つ目のゲームのユーザーテスト実施前にこの問題が発覚したため、2つ目以降のゲームではゲーム体験が大幅に向上しました。
④ ナレーションの追加
本アプリはターゲットに合わせて子どもエリアの文字をすべてひらがなで統一しましたが、読めない子を想定して、ナレーションや掛け声の導入も採用しました。
ユーザーテストでの気づきは、文字を読むことが苦手な子も一定数いるため、子どもによって理解度が異なることです。そのため、ナレーションを追加し、掛け声のタイミングを見直すことで改善を行いました。
子どものユーザーテストをして気づいたこと
① フィードバックの受け止め方
ユーザーテストを行う際、緊張や集中からか無表情になる子どもが多くいました。もちろん楽しんで体験してくれた子もいましたが、慣れない環境で緊張する子も多数いるため、事後インタビューは子どもの状態も考慮して行いましょう。
テストの感想や次回以降の継続意向について子どもたちに簡単なインタビューをすると、「面白かった」「また遊びたい」と言ってくれる姿に本当に感動しました。
子どもはとても素直なので「フツウ〜」といった率直な感想が得られます。
ただし、うまく自分の気持ちを伝えられない場合もあるので、保護者とのラップアップが非常に重要です。
子どもを一番理解しているのは保護者なので、子どもたちへのインタビュー後に保護者の方にもインタビューを行い、ユーザーテスト中の子どもの様子やプロダクトへのフィードバックをヒアリングました。
② 子どもには15分がちょうどいい
基本的に1回のユーザーテストで1つのゲームに触ってもらっていましたが、子供の様子を見て2つ目のゲームをテストしてもらうケースもありました。
時間が長すぎると集中力が切れたり疲れたりして、テスト後のインタビューがうまくいかない場合もあるため、特に幼児の場合、ユーザーテストが15分だと集中力が続く15分程度のユーザーテストが適切な時間だと思います。
③ ゲームの難易度は高めの方が燃える
今回の開発にあたり、幼児には難しく心がくじけて離脱することのないよう、遊びやすさを大切にしていました。
しかし実際のユーザーテストでは、簡単に全部クリアできるよりも、逆に難易度が高めの方が子どもたちにとって面白かったようです。
子どもにとって「失敗したり挑戦する過程が楽しい」という気づきも得ることができました。
④ 子どもは2回目で大抵わかる
子どもはゲームへの適応力が高く、
基本的にすぐに意図を理解してくれて、操作にも大きな問題はありませんでした。最初は躓いても、大抵2回目の試みでは1人で操作できるようになっていました。
最初は手厚くフォローしようと思い、1人でアプリを操作できるように色々配慮した結果、逆に過保護になり過ぎて「説明が長い」「簡単すぎて面白くない」と思われることもあります。
子育てと同じように、ゲームでも時には「チャレンジさせてみる」ことが重要だと感じました。
まとめ
今回のユーザーテストはコロナ禍で行ったため、もちろんオンラインでの実施でした。ただでさえ行動が予測できない子どもたちを相手に心配もありましたが、無事にユーザーテストを終えることができました。
全体の感想を述べると、子どものユーザーテストは最高な癒しの時間になり、子ども向けプロダクト開発のノウハウを多く得られたことも大きな収穫でした。
5歳の息子もユーザーテストに参加させてもらったのですが、私が作ったゲームを楽しんで「また遊びたい」と言ってくれました。子どもに対して誇りに思える仕事ができたと感じています。
最後に、この記事をご覧頂いた皆さんもぜひアプリをダウンロードしてみてください!