新卒入社のスタートアップが傾いた!途方に暮れた私のPdM道~リクルート新規事業開発室のリアル~
この記事は、リクルート プロダクトデザイン室 アドベントカレンダー 2022 25日目です。
こんにちは、リクルートの新規事業開発室でPdM(プロダクトマネージャー)を担当している、齊藤平太郎です。
2020年卒(学部新卒)で、とあるスタートアップに入社したのですが、入社半年後の10月に事業縮小が決まってしまい実質的な転職を余儀なくされました。
途方にくれていたものの、なんとかリクルートの新規事業開発室に入社し、今はPdMをしています。ざっくり言うと、事業戦略・プロダクト戦略に基づきサービスの改善を検討し、様々な規模の案件を起案し、ビジネス検討、要件定義から開発ディレクションまで広く携わるポジションです。
この記事では、事業開発に奮闘してきた私のリアルな軌跡をお届けできればなと思っています。先にいっておくとちょっと超大作ですのでお気をつけて。
特にスタートアップやベンチャー企業に入ったものの、担当する案件が変わらなかったり、足元のタスクに忙殺され成長実感やキャリアイメージが持てず、物足りなさや閉塞感を感じている方にぜひ読んでほしいなと思っています。
新規事業開発室PdMのリアルな軌跡
入社後2ヶ月、スタートアップとのGAP
2020年12月25日(金)19:00。
Zoom画面にやや寄り気味に映し出されたのは、真っ赤なセーターにばっさりショートの、声は少しだけガラガラな女性。
「クリスマスの夜にこんな面談なんてまいっちゃうよね〜気分だけでもwww」と笑いながら服装に言及する彼女が、入社してから今に至るまで私にPdMのイロハを叩き込んでくれている、当時マネージャーの小田真理子(現プロダクト統括本部 プロダクトデザイン室 事業開発領域プロダクトデザイン部部長)である。
キャリアの登り方、事業の戦略、プロダクトの中長期ロードマップ、入社したら任せたいことについて早口でみっちり30分。
アトラクト面談というよりは、彼女がプロダクトオーナー(以下、PO)としてやりたいことや熱量をそのままぶつけられている感覚だった。
プロダクト開発についてここまでの熱量を持っている人がいるのか、と衝撃を受けたことを覚えている。
土日を挟みじっくり考え、28日(月)にオファーを受諾した。
2021年2月に正式入社し、『保険チャンネル』というサービスに参画。そこからの2ヶ月は案件ディレクターとしての基礎づくりと事業理解のためのインプット期間だった。
主に取り組んだことは以下の4つで、サービスの課題調査、競合の調査、業務フロー作成、案件の要件定義の作成である。
前職とのギャップが一番大きかったのは、「準備」にかける時間の長さだ。
今では数時間でだいたいの設計やタスクを整理できるようになり、その有用性を身を持って感じているが、当時の私は無駄だとすら思っていた。多くの時間をかけて何度もフィードバックを受けていたというのに。
今では笑い話として、小田にいじられている。
ほかのPdM未経験者はというと、「準備」の中でも特に、全体の設計とスケジュールを引くという課題にぶつかっている印象だ。
ちょっと自分でコードを書いたり、新規アポの電話をかけたり、広告の出稿比率をほぼリアルタイムで調整できた前職とは違い、関係者が多く、特に法務やセキュリティの観点の確認でリードタイムが必要な案件では準備が重要になってくる。
また、PdMの仕事の基本ともいえる、ユーザ課題を調査し・仮説立て・仕立てることも自社サービスと競合サービスを比較体験し実施した。
この体験自体は、前職でも実施していたのであまり苦労はしなかったが、ここでも情報の整理と優先度を決めるまでの検討の深さには違いがあった。
前職の私は、「やれることがあるならさっさとやればいいじゃん」「たくさんあるなら全部やればいいじゃん」と思っていたが、今は「本当にこれをやる意味があるのか」「限られたリソースの中でどこからどのように進めていくのが最適か」を徹底的に考える癖がついた。
リクルートでは開発工数が数百万規模の事業投資でも、半期ごとにかなり精緻な投資計画と中長期の計画を引き、決裁者に財務コミットをする。
当然、事業責任者のコミットはメンバーの案件一つ一つの成果によるため、限られたリソースをこの案件に投資するのが最適なのか、を判断する必要がある。
よく「筋がシャープでない」というフィードバックを受けることがあるが、深く考え(情報を集め、課題を特定し、打ち手を作るetc.)、シンプルにする(情報を整理し、論点を明確にするetc.)ことが、組織全体で判断を早くし、最速で事業やプロダクトの検証を回していくためには必要なのである。
とにかくスピード重視だった前職とは対照的に、案件全体の進め方も案件検討の仕方についても、深い検討とシンプルなアウトプットが求められる組織文化なのだなと感じた。
1年目、タスク量の質転化と評価
2021年4月からは複数案件の推進と2つの部署の責任者となった。
事業戦略上重要な施策のリーダーにいきなり立たせてもらったのと、複数の案件を同時に推進していた。
当時の『保険チャンネル』はいわゆる新規事業らしく、やりたい案件に対してメンバーが少なくて、難易度問わずにありとあらゆる案件が、1000本ノックのように飛んできた。
大小、難易度問わずさまざまな案件に対応することで、基礎体力が身についたと思う。
コールセンター対応業務では、突発的に緊急度が高い依頼が入っても、タスクの分類と対応優先度の調整能力が培われたし、コンテンツメディアの責任者業務は内部外部のステークホルダーとの協業案件だったので、推進設計・計画の精度やコミュニケーションのスキルが磨かれた。
私自身、チームを組んで人にタスクを依頼し推進することがあまり得意ではない性格で、当時も与えられた役割の0から100までを自分で取り組もうとしていた。
自分の工数が膨らむことへの意識が全くなく、むしろ自分の能力不足や至らなさが原因なので自分がもっと頑張らねば、というように自分を追い込んでいた。
明らかに処理しきれないタスクを背負い、プロジェクトの遅延を招いたことは1回や2回ではなかった。それがさらに自分を追い込んでしまい、業務量も膨らんでいた。
一般的には「テーマを細分化し、一つできるようになったら次の難易度が上がる」を繰り返しながらミッションの抽象度がだんだん高くなっていくものだと思うのだが、当時の私は大量の案件を任せてもらい、基本的に自由度高く裁量をもたせてもらった。
それが良かった。しんどかったけど、今振り返ると良かった。
しんどすぎて、小田さんの机に絹豆腐(豆腐メンタル)をこっそりおいたこともある。
2021年の振り返りが文章で残っていたので改めて読み返してみた。以下、一部抜粋。
結構しんどそうだけど、新規事業のエネルギーを感じ楽しく働けていそうだな、というのが伝わってくると思う。
厳しいフィードバックを受け、「もっとできるはず」「まだまだもっと成長しなければ」といった自分の期待値に対する未達に落ち込んでいた。
前職でも特に目に見える成果が求められ、焦燥感や義務感によるプレッシャーを感じることが多く、無意識のうちに追い込まれていたのだと思う。
ただ、リクルートでは厳しいフィードバックと評価はそれぞれ独立していると感じるし、それが自分にとって良かったなと感じる。
半年に一度自分の取り組みを振り返る場があるのだが、意外に褒められたりする。初めての振り返りで小田から「めっちゃ良かったよ」と手放しで褒められた時は、何か裏があるのかと疑ったほどである。
自分が今できること、できないことの目線を上長としっかり合わせ、できないことをネガティブに捉えるのではなく、できるようするための行動をひとつひとつ積み上げていけば良いのだと前向きになれたことが、2年目での成長実感につながっているのだと思う。
2年目、成長実感とプロダクトオーナーへの道
2022年4月からは、最初に配属された『保険チャンネル』ではディレクターの中でリーダーを任せてもらい、加えて『Tempodas』という店舗用物件と出店テナントのマッチングサービスにプロダクトデザイン室の最初のメンバーとして参画した。
『保険チャンネル』では2021年から実質的にリーダーの役割を一部任せてもらっていたのでそこまで驚きはなかったが(とはいえスピード感は早い)、さすがにこのタイミングでの兼務追加はしびれた。
よく『保険チャンネル』の事業責任者が、「やれるやつじゃなく、やりたいやつに機会が与えられる」と言っていて、その通りだなと思った。
1年目は自分がプロジェクトリーダーとして案件の推進に責任を持っていたのに対して、2年目はどちらの事業でも事業KPIに責任を持ち、プロダクトデザインのリーダーのとして複数のメンバーを見つつ、担当するプロジェクト全ての推進を担っている。
期初は新規に参画した『Tempodas』という事業にプロダクトデザインとしてどのように価値を発揮していくかを定義することに最も注力した。
7月と9月のタイミングで、それぞれプロダクトデザインのメンバーが参画するため、そこに合わせて案件を創出することがまず第一。
『Tempodas』というサービスのユーザ体験上の課題を洗い出し、優先度をつけ、なにから着手するかを早期に合意し、メンバーをアサインし着々と案件を実行している。
現在(2022年12月)は、プロダクトの中長期戦略を立てるにあたって、あるべきユーザ体験の定義(OKR(目標と成果指標(Objectives and Key Results))の策定、ペルソナ・ユーザシナリオの定義)および調査・分析(市場調査、ユーザ・クライアントの実態の定量定性調査)を推進している。
事業戦略やマーケティング戦略にも染み出しながら、プロダクトのあり方を検討している。
一方、『保険チャンネル』では、一部の案件の検討を持ちつつもリーディング業務がメインになった。半期ごとの方針・計画のリバイズと、メンバーの案件推進レビューをメインで行っている。
私自身、知識や経験が十分豊富なわけではないので、レビューというよりかは各案件のリーダーと併走し、案件のQCD(Quality(品質)、Cost(コスト)、Delivery(納期))を担保した推進をしているイメージに近い。
プロダクト価値を最速で最大にするために、どのようにレビューをするのが最も理解されやすいのか、どのような併走の仕方が一番働きやすいのか、プロダクトの計画観点でいつまでにどうなっていて欲しいのか、などを鑑みながら日々試行錯誤をしている。
1年目と比較して今の方が責任も大きいし業務量も多いが、めちゃくちゃ仕事が楽しい。
入社当初、リーダーやマネージャーがめちゃくちゃ働いていて、なんとなく上司が自分より
働いていると気まずいかもとか、役職がつくと大変なのかなとか思っていた。
実際は別にそんな風潮はまったくなかったし、もちろん大変な側面もあるのだろうが、本質的には、ただ同じように仕事が楽しいのだろうなと思う。
自分のキャリアと足元でやっていることが少しずつクリアになってきているし、業務の中での日々の気づきや、Webサイトや書籍からの学びを得られること、それを仕事に活かせることがたまらなくおもしろい。
自分の期待値に対して足りていないことを、あたかも自分に価値がないかのように捉えてしまい、精神的にも業務負荷的にも自分を追い込み苦しんだこともあったが、今は健全な自己愛を持って自律できており、真にコトに向かえている感覚を持てている。
なぜPdMでリクルート?
最後に、途方にくれた私がなぜリクルートでPdMになる道を選んだのか、それがよかったかについて書きたいと思う。
幼少期の話にさかのぼるのだが、途上国で暮らしていた時に感じていた違和感が原体験となり、社会構造の不を是正したいという想いを強く持っている。新卒で入社したスタートアップは、アジア・日本の静脈産業の構造負をテーマとしており、国際社会の構造課題に切り込んでいる点に引かれ、願ってもない環境だと興奮したことを覚えている。
しかし入社後半年(インターン含めると1年半強)で事業縮小となった。
どれだけ良いビジョンを掲げていても、それを成し遂げる力がなければ意味がないと思ったし、なにより自分にその力がなかったことが悔しかった。
なので転職活動では、国際性や社会課題性といったテーマの優先度を下げ、いかに自分が強い事業家になれるのか、に強くフォーカスした。
事業家のど真ん中を学びたい、修行したいと思っていたので、事業企画かPdMの二軸で転職活動をした。最終的に目的をビジネス成果(財務指標)におくのか、顧客に届けた価値とおくのかの違いなのではと整理し、PdMでキャリアを仕切り直したいと考えた。
PdM職=リクルートのイメージがあまりなかったので、転職の際は中規模以上のベンチャー企業の中から探していたのだが、たまたま相談に乗ってくれた大学の友人をきっかけにリクルートがPdM職に力を入れていることを知りって入社をした運びである。
私がリクルートの新規事業開発室にジョインして特に良かったなと感じている点は3つある。
1つ目に、チャレンジできる機会が多いことだ。
リクルートの他の領域についても言えることかもしれないが、特に新規事業開発室は、リクルート全社でみれば検証フェーズにあたり、また事業数が多いため重要な機会を得やすい(責任・裁量が大きい)構造にあるのではないかと感じる。自分が責任を背負って矢面に立てる機会が多いのではないかと思う。
2つ目に、学びの機会がとても多いことだ。
私は現在、保険と不動産の2つの事業を兼務している。あまり事業同士の関連がなく、事業状況も組織状況も異なるのだが、そういった事業を同時に経験できることがありがたい。
兼務が珍しいわけではなく、同じグループメンバーの半数程度は兼務をつけている印象である。
加えて各事業の論点やナレッジが積極的に展開されているので、自分の経験以上に多くを学べるのがとても良い。
スタートアップの背水の陣感もすごく好きだが、今は修行期間として多くを見て多くを学びたい自分に合っていたなと感じる。
最後に、忙しいはずの上司が若手の成長にどこまでもコミットしてくれることだ。
私が特によく関わるのは、直属の部長兼GMの小田、『保険チャンネル』事業責任者(GM)の水田、『Tempodas』事業責任者(GM)の田中の3名なのだが、忙しい中どこにそんな時間があるのかと思うほど時間をとってフィードバックをもらえる。
常にストレッチした目標があり、アウトプットするたびに高い視座からコメントがもらえるし、そこに必死に食らいつけば、何時間でも付き合ってもらえる。
今の新規事業開発室は、20代のメンバーが多く、即戦力というより、元気と素直とガッツで食らいつく、エネルギッシュな組織だと感じていて、負けないようにと日々刺激を受けている。
ここまで読んでいただきましてありがとうございました。
新卒入社したスタートアップが傾き、転職をすることになった時は本当にどうしようかと思っていましたが、なんとか今の部署に入れていただき、厳しくも楽しく毎日働けています。
中期的なキャリアを見据え、ストレッチな目標に対し日々インプット・アウトプットを繰り返し、成長の実感を得られている今の環境の魅力が少しでも伝われば嬉しいです!