「リクルートが本気で考える、30歳から伸ばすデザイナーキャリア」株式会社ビビビット主催【真剣デザインチームしゃべり場】(前編)
2022年8月4日に開催されたオンラインカンファレンス「リクルートが本気で考える、30歳から伸ばすデザイナーキャリア【真剣デザインチームしゃべり場】(主催:株式会社ビビビット)」では、リクルートプロダクトデザイン室に所属する30代40代のデザイナー5名が登壇。デザイナーの「30歳からのキャリア形成」について、腹を割ったディスカッションが行われました。その内容の一部を抜粋・編集して、前編後編に分けて公開します。(後編はこちら)
30代デザイナーが「キャリア」についてディスカッション
株式会社ビビビットが主催するオンラインカンファレンス「真剣デザインチームしゃべり場」は、さまざまなデザインチームのミーティングを生配信する、いわば“デザインリアリティ番組”。今回のテーマは、「リクルートが本気で考える、30歳から伸ばすデザイナーキャリア」。スキルやキャリアの選択が複雑化するデザイナーという職種において、リクルートプロダクトデザイン室のデザイナーたちは、30歳というキャリアの壁をどのように捉えているのでしょうか。ミーティング形式の、ざっくばらんな雰囲気のなかでディスカッションが行われました。
<参加メンバー>
・磯貝直紀(株式会社リクルート デザインマネジメント部 部長/デザインディレクター
京都工芸繊維大学大学院を修了後、総合デザインファームにて通信キャリアのデザインマネジメントや自治体の公共デザインなど、領域を横断したデザイン業務に携わる。2015年にリクルートに入社し、HR、日常消費、学び領域のプロダクトデザイン業務に従事。現在は、事業横断のデザインマネジメント組織を立ち上げ、デザイン領域に特化したナレッジシェア、コミュニティ化推進をはじめ、組織長としてリクルート全体のデザイン価値向上に寄与する業務を行っている。
・小島清樹(株式会社リクルート 新領域デザインマネジメントG デザインディレクター)
担当サービス:『リクルートダイレクトスカウト』、『リクナビNEXT』 他
大学院修了後の2016年にリクルートホールディングスに新卒入社。『カーセンサーnet 』のアートディレクション、『 Airメイト』『 Airインボイス』の立ち上げ、英国子会社への赴任などの業務を経て、現在はHR領域横断のデザインディレクターを担当している。共著に『インクルーシブデザイン:社会の課題を解決する参加型デザイン』。
・本田美美(株式会社リクルート まなびEnglishデザインマネジメントG デザインディレクター)
担当サービス:スタディサプリEnglish
受託開発会社でUXデザイナーとして教育関係や家電メーカー等のデザイン業務に携わる。その後IT企業でインハウスデザイナーとして社内システム設計を経験。ちょっと英語を勉強したり旅行を楽しんだ後、2018年リクルート入社。『 Quipper 』 へ出向し『スタディサプリEnglish 』でプロダクトデザイナーとして、新規案件からプロダクト改善に携わる。好きな食べ物はお寿司、梅干し。
・金兵奈美(株式会社リクルート 飲食・ビューティー・旅行デザインマネジメントG デザインディレクター)
担当サービス:『ホットペッパーグルメ』
デジタル・エージェンシーにて大手企業のサイトリニューアルなど、幅広いデザイン業務に従事。IT企業のインハウスデザイナーとしてサービスデザインの経験も経た後、2021年にリクルートに入社。『ホットペッパーグルメ』のデザインディレクターとして、既存プロダクトのエンハンスや中長期を見越したデザイン方針の策定に携わっている。
・川端彬子(株式会社リクルート マリッジ&ファミリープロダクトデザイン1G プロダクトマネージャー)
担当サービス:ゼクシィ
2016年にリクルートホールディングスに新卒入社。『リクナビNEXT 』『ゼクシィ』のスマートフォンアプリのプロダクトマネージャーを担当。チームリーダーとしてUX戦略策定、プロダクト改善に携わる。並行して、プロダクトデザイン室の採用広報を担当し、イベント企画や、記事掲載の推進に携わる。大学時代からのあだ名は「こまどり」。
リクルートにおけるデザイン組織の役割とは
磯貝「リクルートではこれまで、ライフイベントやライフスタイルにまつわる多様なサービスを手掛けてきました。現在、ライフイベント系では“結婚する”“家を買う”“働く”など様々な人生の決断に関係するプロダクトを、ライフスタイル系では“飲食”や“美容”“旅行”といった日常的に利用するプロダクトを展開しています。また、昨今は業務経営支援という形で『Airビジネスツールズ』というSaaSプロダクトも提供していて、向き合うマーケット領域が非常に広いのがリクルートの事業の特徴ですね。
そうした多様なサービス、プロダクトの企画開発を担っているのが、プロダクトデザイン室。そのなかで、プロダクトのUI・UXを含めたデザインを作っているのが、私たちが所属しているデザインマネジメントユニットです。60名ほどのデザインディレクターがいて、プロダクトの領域ごとに10グループほどに分かれています」
デザインマネジメントユニットの組織体制には、3つの大きな特徴があるといいます。
・事業に当事者としてコミットしやすい組織体制
・デザイン職能として、あらゆるキャリアを許容する
・多様な領域、フェーズ、規模、ビジネスの経験が可能
磯貝「一つ目の『事業に当事者としてコミットしやすい組織体制』ですが、インハウスのデザイン組織というのはともすれば、社内の制作下請けのようになってしまいがちです。そこで、単に“デザインを作る人たち”ではなく、事業にもしっかりとコミットすることを大切にしています。全てのデザインディレクターはデザインマネジメントユニットに所属するとともに、“住まい”や“HR”などの各事業組織にも籍を置くことで、事業にコミットしやすく制作下請けにならない組織構造になっているんです」
磯貝「二つ目の『デザイン職能として、あらゆるキャリアを許容する』ですが、柔軟なキャリアパスを許容し、スペシャリスト型でもリーダー型でも活躍できる多様性のある環境を作ることを大切にしています。『プレーヤーとしてずっとその分野を突き詰めていきたい』というキャリアもアリですし、『もっとディレクション側で、チームでデザインをやっていきたい』というのもOK。あるいは、全く違う役割やポジションを目指してもいい。“業務の不確実性”と“デザインの不確実性”という2つの軸で判断できるものであれば、かなり多様な役割を許容する体制になっていて、誰でもある程度は自分に適したポジションやキャリアを見つけることができます」
磯貝「三つ目の特徴は『多様な領域、フェーズ、規模、ビジネスの経験が可能』であること。デザインマネジメントユニットは横断組織ですので、リクルートのさまざまなプロダクトに参画することができます。例えば、『ホットペッパービューティー』を2年担当した後に『SUUMO』へ異動するなど、2つのプロダクトに50%ずつコミットすることもできる。異動や担当領域の変更を柔軟に認めているため、デザイナーとしての経験値を広げていくことが可能です。また、横断組織ですので他の領域のナレッジを聞く機会は豊富にあり、異動をしなくてもさまざまな知見を得ることができるのも特徴ですね。
長くなりましたが、こうした私たちデザイン組織の特徴をふまえてディスカッションを聞いていただくと、より理解が深まると思います」
声を上げれば何でも挑戦できる
ディスカッションは、Miroのオンラインホワイトボードを使って実施。参加者が事前に書き込んだキャリアに関する悩みやエピソード、視聴者からの質問を拾いながら進められました
最初のトピックは「デザイナー業務とリクルートの仕組み」について。前述の通り、デザインマネジメントユニットの特徴は、リクルートの多様なプロダクトに横断的に関われること。この仕組みを、現場のデザインディレクターたちはどのように活用しているのでしょうか?
小島「デザイナーとして領域を横断できるだけでなく、職種をまたぐような働き方にも柔軟に対応してもらえます。私自身は以前、デザイナーをやりつつプランナーとしての経験も積みたいと思ったことがあって、デザイナー50%、プランナー50%の割合でプロジェクトにアサインしてもらいました。プランナーとして仕事をすることで新しい観点を獲得できるため、デザイナーをやる上でも視野を広げる大きな経験になりましたね」
金兵「仕組みもそうですが、そもそも『やりたいことをやらせてくれる』文化がリクルートには浸透しているように感じます。上司に何気なく『これ、やりたいんですよ』と話したら、いつの間にか案件になっていたみたいなことも多いですよね。上司のほうが「いいね! やろうよ」と乗ってくれて、『あの人に声をかけるといいよ』とキーパーソンに話をつないでくれたりする。そうやって周りを巻き込んで、どんどんやりたい案件を進められるところがあると思います」
本田「確かに、手を挙げたら全力で上司や周りの人が応援と協力をしてくれる。こちらが驚くくらい、クイックに動いてくれますよね。そのぶん、自分もクイックに動く必要がありますけど。だから、あまり多くの案件に手を挙げすぎると、パンクしてしまう。やりたいことをやれる反面、タスクが増えすぎて破綻しないよう整理したり、自分が今どれに注力すべきかといったところは考える必要があると思います」
川端「私も普通にタスクが爆発したことがあります。楽しいからどんどん動いてしまう、みたいな感じなんですよね。みんな背中を押してくれるし」
磯貝「マネジメント側からしても『それはやめて』みたいなのは、ほぼないから。だからこそ、そこは自分である程度コントロールしてほしいなとは思いますね」
後編では、ディスカッションがさらに白熱化。参加者がキャリアに関する悩みやエピソードについて話し合います。(後編はこちら)