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プロデザ!byリクルートvol12「粘り強い価値検証! 新規プロダクトのPMFまでの道のり大公開」


リクルートのプロダクト制作におけるナレッジをシェアするイベント「プロデザ!byリクルート」。第12回目となる今回のテーマは「粘り強い価値検証! 新規プロダクトのPMFまでの道のり大公開」。
プロダクトはリリースして終わりではなく、市場にフィットし顧客に受け入れられる状態になるまで価値検証を繰り返す必要があります。では、いわゆるProduct Market Fitのフェーズ(以下、PMF期)においては、どんな戦略を立て、どのような優先順位づけをしてロードマップを描けばいいのでしょうか? 今回は2018年に実装された『Airレジ オーダー』セルフオーダーのプロダクトマネージャー・川崎絢司が、PMFまでの道のりの一部を振り返ります。
 

※2023年7月4日に開催したオンラインイベント「新規プロダクトのPMFまでの道のり大公開!〜プロデザ!BYリクルートvol.12〜」から内容の一部を抜粋・編集しています。

 

#登壇者PROFILE

・川崎絢司

プロダクトデザイン室SaaS領域プロダクトデザインユニット『Airレジ オーダー』セルフオーダー プロダクトマネージャー。前職で価値検証や新規サービスの立ち上げに関わったのち、2015年にリクルートに中途入社。GPS/POIによるリアル店舗集客サービスの価値検証、来店スタンプアプリによるリポート販促支援・価値検証などの業務を経て、2018年に『Airレジ オーダー』セルフオーダーを立ち上げる。2020年、プロダクトマネージャーカンファレンス2020に登壇。

 

『Airレジ オーダー』セルフオーダーのPMF期で取り組んできたこと

 

川崎:プロダクトデザイン室SaaS領域プロダクトデザインユニットの川崎絢司と申します。今回は「粘り強い価値検証! 新規プロダクトのPMFまでの道のり大公開」ということで、私の担当プロダクトである『Airレジ オーダー』のセルフオーダーを題材にお話しできればと思います。

 まず、私が担当する『Airレジ オーダー』セルフオーダーは、飲食店を訪れたお客様のスマホから、いつでも注文ができるプロダクトです。コロナ禍以降、多くの飲食店に導入していただいており、ご利用になられた方もいらっしゃるのではないかと思います。

今回は2018年にこのプロダクトが実装されてから製品検証を行い、いわゆるProduct Market Fit(PMF)のフェーズで取り組んできたことについて発表いたします。

 

PMF最初の難関「優先順位づけ」

 

川崎:突然ですが、PMF期において最初に立ちはだかる課題はなんでしょうか?

それは「どのように優先順位を決めて意思決定するか?」。僕に限らず、多くのプロダクトマネージャーにとって大きなテーマかなと思います。

適切な優先順位付けや意思決定を行うためには、その正しさの前提となる定義が必要です。その定義の種類は大きく分けて2つあり、1つは戦略やロードマップといった「上流レベルの設計」。もう一つが「現場からのファクトベース」。よくDiscoveryなどと呼ばれるものですね。

 

本日は時間の都合上、上流レベルの設計にフォーカスしてお話しいたします。
以下はプロダクト戦略、ロードマップの作成までの大まかな流れです。

・Vision/Mission

・プロダクト戦略

・メトリクス

・プロダクト戦略ロードマップ

まずは、向かい続ける場所や道を大まかに示す「Vision/Mission」の策定。続いて、それをもうひとつ噛み砕いた「プロダクト戦略」と「メトリクス」を定義しました。最後に、プロダクト戦略で定義した“未来の状態”までいかに登っていくか、その登り方として「プロダクト戦略ロードマップ」を定めたという流れですね。

では、ここからは各要素について詳しく説明したいと思います。

 

 Vision/Missionの策定

川崎:はじめにVision/Missionの策定についてです。

 今回はVision/Missionを、最も抽象度が高いWhyとHowを含む概念として整理していました。

ちなみに、VisionとMissionの関係ですが、Visionは「Where we want to be(私たちがどういう世界へ辿り着きたいか)」。Missionは「How we get there(そこへどうやって辿り着くか)」と位置付けています。

 今回のセルフオーダーでは、当初のVisionとして「飲食体験を、もっとストレスフリーに、もっと楽しく」。Missionとして「消費者・提供者のしごとを再構築する。/人と機械が協力するからこそできる、新しい飲食体験を発明する」と定義していました。


プロダクト戦略の策定

川崎:VisionとMissionを定義できたら、次は「プロダクト戦略」です。こちらは、策定までのプロセスも含めて詳しくお伝えいたします。

プロダクト戦略の位置付けですが、VisionとMissionよりも抽象度の段階を一つ下げた「中長期の未来の、ある一時点の状態」としています。

また、プロダクト戦略の「WHY」と「HOW」を、それぞれ具体的な要素に分けました。それが以下になります。

 Whyの内容要素は「Who to serve/What problem to solve/Outcome(誰のどんな問題を解決して、どんな状態にするか)」。

Howの内容要素は「Value to deliver(提供価値=顧客価値)」「Value to Capture(捉えるべき価値=自分たちにとっての価値)」「How to Solve(解き方=ソリューション)」「How to win(勝ち方=差別化戦略)」という4つで構成されています。

そして、これらを「N=1」と「定量」の両方の粒度で定義していくというプロセスをとりました。

N=1定義のプロセス

川崎:「N=1定義」「定量定義」それぞれのやり方についても詳しくお話できればと思います。

 まず、N=1定義について。こちらはベースの考え方として「価値と対価の交換」を強く意識していました。

 上記の図のように「価値」は単体で定義するのではなく、こちらが求める「対価」と交換されることで初めて「価値があった」とみなす考え方ですね。なお、「対価」には金銭コストだけでなく、時間や手間(行動)や情報などのコストも含まれます。

こうした考え方を前提として、具体的には次のように価値定義をしていきました。

 まずは「リクルート」「来店客」「店舗(飲食店)」それぞれのステークホルダーが抱える「問題(グレー部分)」と、セルフオーダーが使われることでその問題が「どう解消されるか(オレンジ部分)」について整理しました。

例えば来店客であれば、「(注文の際にフロアスタッフが自席の近くまで来てくれるのを)待ちたくない!」という問題があります。それをストレスフリーな状態にするためにセルフオーダーが「いつでも注文できる」という価値を提供。その代わりに、お店側に対して「注文(利用)」という行動対価を支払ってもらう仕組みですね。

一方、店舗側はセルフオーダーを導入することで「お客様を待たせたくない!(注文を取りたい)」という問題が解消され、注文機会のロスも防ぐことができます。これに価値を感じていただき、対価としてプロダクトの利用料を私たちにお支払いいただく。そうやってセルフオーダーの売上が上がることで、リクルートからさらに投資を受けることができるというWinのループが生まれます。

上の図は、来店客とお店側の「問題・価値・対価」を、さらに細分化したものです。なお、お店側は「オーナーや店長」と「フロアスタッフ」に分けて定義しています。

こうした各ターゲット(来店客・オーナー/店長・フロアスタッフ)の問題・価値・対価をどうやって定義していったかですが、まず「問題」や「価値」を定義するにあたっては飲食店のオペレーションのプロセスを分解しました。すると、オペレーションのなかに「フロアスタッフが対応しないと進まない工程」があり、そこがボトルネックになっていることが分かったんです。例えば「お客様のご案内」や「メニュー説明」「注文」「配膳」「会計」などですね。このうち「ご案内」や「会計」といったホール業務が忙しくなると、(注文を検討している)お客様をお待たせしてしまうことになり、結果的に注文ロスにつながってしまう可能性があります。これを解消するには、フロアスタッフが対応しないと進まない工程を「人に依存しない構造」に変える必要がありました。

ちなみに、既存のソリューションとして「テーブルトップオーダー」というものもあります。居酒屋のテーブルにあるような注文用のタブレットですね。これも来店者が自分で注文できる仕組みとしては私たちのセルフオーダーと同じですが、「個人経営の店舗」なにとっては導入コストやランニングコストが高く、現実的ではありません。

こうした背景やターゲットが抱える問題をふまえ、「人に依存しない構造」であり、なおかつ個人経営の店舗でも「安価」に導入できるという点が、私たちのプロダクトの価値であるという結論に至りました。

次に、「対価」をどのように定義したか。

 対価を定義するにあたっては、上記のような図を用いました。私たちは「Value Loop」と呼んでいますが、来店客・フロアスタッフ・オーナー/店長という各プレイヤーが価値や対価を交換し合い、最終的にみんながWinになるという図です。

このValue Loop図を描くことで、プロダクトのUXにおいて重要なポイントを抽出することができます。それが赤い網掛けで囲まれた部分で、私たちは「価値の源泉」という言い方をしています。この源泉が途絶えてしまうとループが止まり、サービスが死んでしまうという、まさに根幹の部分ですね。

源泉を途絶えさせないためには何が必要か。これを考えることで、プロダクトとしてあるべきソリューションが見えてくるんです。

例えば、来店客にセルフオーダーで注文利用してもらうためにはQRコードを読み込んでもらう必要があります。ただ、そのためにアプリをダウンロードしたり、ログインをしてもらわなければいけないようなソリューションだとお客さん側の行動コストが高くなり、なかなか利用してもらえないでしょう。つまり、来店客から「注文利用」という行動対価を得るためには、なるべく行動コストを下げるようなソリューションが必要になるわけです。

 こうしたプロセスを経て定義した「問題・価値・対価」を整理したものが、上記の図となります。ここまでがN=1定義のやり方ですね。

 定量定義のプロセス

川崎:続いて「定量定義」についてお話します。

定量定義では、N=1で定義したものを数値化してボリュームを見ていきます。ここではTAM/SAM/SOMという有名なフレームワークを使用しました。

 では、何をTAM/SAM/SOMとするのか。

 まず、TAMは「問題が発生しうる対象全体」としています。今回のケースでいえば、お待たせすることでお客様のストレスや注文ロスにつながっている対象全体がこれにあたります。問題が発生していたとしても、その解決に対価を支払いたいとまでは思っていない飲食店も含むセグメントですね。

次に、SAMは「問題解決によって実際に価値交換しうる層」としています。つまり、有償支払をしてでも問題を解決したいと考えている飲食店がこれにあたります。なお、そのなかでもCPF層(セルフオーダーを受容するか否かに関係なく、問題に対する有償解決意思がある層)とPSF層(問題に対する有償解決意思があり、かつセルフオーダーを受容する層)という2つのセグメントがあると考えました。

最後にSOMですが、MVP時点での機能やサービス商品で展開して、Fit(=価値交換)しうるセグメントとしています。

 これらを前提に整理したものが、上のセグメンテーションの図です。縦軸がCPF層、つまり「問題が発生しているかどうか」の軸ですね。定量ラベルは「その問題が現れるかどうか」「問題が強くなるかどうか」という観点で設定しました。

 

横軸はPSF層。「セルフオーダーを受容するかどうか」という軸ですね。こちらの定量ラベルについては詳しく明かせないのですが、しっかりと傾向が出るように設定しました。

図の見方ですが、グレーで表示されている部分はテストマーケティングを行なったものの受注率が芳しくなく、獲得効率が悪いということでomit(当面は積極的に取りにいかない)した層になります。残った緑色で表示されている部分が、SOM=取りに行くセグメントというわけです。

ここまでが「定量定義」のプロセスですね。

ダブルメトリクスツリーで注力ポイントを明確化

川崎:プロダクト戦略の策定に続いて着手したのが「メトリクス」のフェーズです。

メトリクスはプロダクト戦略で定義した「中長期の未来の、ある一時点の状態」を定量的な指標で分解し、モ二タリング可能にする工程ですね。

メトリクスを行うにあたっては「価値と対価が見合った時に交換される」という考え方を前提としています。このなかで、「価値を提供する部分」はNSMとして、「対価を支払ってもらう部分(=売上)」はTopBizKPIとして整理していました。

 また、今回は上の図のような「ダブルメトリクスツリー」を採用しています。

「Revenue(売上)=TopBizKPI」と「価値提供=NSM」を分解していき、交点となる部分をOne Metrics That Matters(OMTM)、つまり注力指標として定義しました。

このダブルメトリクスツリーに、今回のセルフオーダーを当てはめたのが上の図です。かなり簡略化していますが、基本的にはこのようなものを使っていました。ここまで分解してツリー化することで、注力すべきポイントがはっきりと見えてきたんです。

もちろん、この指標はフェーズによって変化していきますが、一貫して注力していたのは「アクティブ店舗数」。また、それを分解した「アクティブ率」と、アクティブ率に影響を与える「セルフオーダー利用組率」です。これらのポイントに関してはフェーズをまたいで注力し、長期にわたってコストをかけていましたね。

プロセスをふまえ、プロダクト戦略ロードマップを策定

 川崎:ここまで「Vision/Mission」「プロダクト戦略」「メトリクス」の策定・定義のプロセスについてお話ししてきました。その結果、「中長期の未来の、ある一時点の状態」が具体的に定まったわけですが、それを実現するための“登り方”を決めるのが、最後の工程である「プロダクト戦略のロードマップ」です。

 こちらが当初に作成した簡易的な戦略ロードマップです。

 これまでのフェーズで定義してきた要素をもとに、プロダクトとして注力すべきことを段階的にまとめたものですね。

 ロードマップの横軸は「クライアントセグメント」。プロダクト戦略で定義したWhyの部分「Who to serve(誰のどんな問題を解決するか)」ですね。“誰の”の部分は定量定義で導き出した「SOM=取りに行くセグメント」で、難易度により「注文高負荷層(カジュアルダイニング中心)」と「回転高負荷層(カジュアルレストラン中心)」のフェーズに分けています。

縦軸はクライアントへの「提供価値」。こちらはN=1定義で導き出された価値定義を分解し、各セグメントに進出するために必要な提供価値を分類しています。

ロードマップの中身を具体的に見てみましょう。第一段階のセグメントは「注文高負荷層」。ここは注文負荷が高いカジュアルダイニングなどの業態を想定していて、プロダクトによってその問題さえ解決すれば、価値を感じて利用料を払ってくれるであろう層です。そのため、このセグメントに対しては「注文負荷を削減する価値」を提供し、客単価アップに貢献することに注力します。

第二段階のセグメントは「回転高負荷層」。カジュアルレストランのように、会計までの回転を速くする必要がある業態を想定しています。これを解消するには注文負荷の削減に加え、「決済の負荷」を削減する価値をプロダクトにアドオンする必要があるでしょう。これにより、客単価アップと人件費ダウンを両立させることができるようになれば、かなりターゲットを広げることができます。

そして、こちらが最終的な「プロダクト戦略ロードマップ」です。大きく分けて「戦略的意図」「Goals」「Product Initiative」「Big Ideas」のカテゴリーがあり、注力すべきことを時系列でまとめています。

一番上の「戦略的意図」は先ほどの簡易ロードマップでまとめた順番を、そのまま配置しています。赤い部分が第一段階(注文負荷の削減)で、黄色の部分が第二段階(注文負荷+決済の負荷の削減)ですね。

その下が「Goals」。具体的にどういう状態になれば次のフェーズに進めるのかを可視化するために、細かくゴールを設定しています。なお、こちらはTopBizKPIやNSMなどの注力指標を軸にゴールを定めました。

ただ、これだけだと何をすればいいか分からないので、その下にある「Product Initiative」で、さらに分解をしています。例えば、NSMの注文の量を上げるためには、まずアクティブな店舗を増やす必要があるため、この期間は「アクティブ率の改善」に注力しよう。アクティブ率がこれくらいの水準になったら、次は「エンゲージメントの改善」に切り替えよう、といった具合ですね。

そして、一番下が「Big Ideas」。「Product Initiative」で挙げたテーマを達成するために有効と考えられる開発アイデアをマッピングしたものですね。

最後に、このロードマップをどうやって日々のアイデアや課題の優先度付けに活用しているかお伝えしたいと思います。

 上のリストは「Idea Bank」といって、プロダクトの改善アイデアや中長期のアイデアを含めて、開発案件にまつわる全てのアイデアを集約したものです。

大まかに「①戦略上の位置づけ」と「②位置づけ内の優先度」で項目を分けています。①については「戦略的意図(どのフェーズの戦略的意図を目的とするのか)」「Product Initiatives(それに貢献するインジケーターは何か)」「案件impact指標(案件が直接動かす指標は何か)」といった項目から“何のためのアイデアなのか”を定義します。戦略上の位置づけができたら、②の項目にあるICスコアなどを用いて、その位置づけ内の優先度を決めていくという流れですね。

具体的な使い方としては、最初に「戦略的意図」でソートして、次に「Product Initiatives」でソート。そのうえで、最もインパクトの強い指標がどれかを見て、優先的に取り組むべきアイデアをピックアップしていきました。

 というわけで、今回のまとめです。まずは最も抽象度の高い「Vision/Mission」を策定し、向かう場所、向かい方を定めます。そこからプロダクト戦略と、その成功の状態を定量的にはかるメトリクスを定義していきました。プロダクト戦略は「N=1」と「定量」、両方の粒度で価値定義。こうしたプロセスを経て定まった「未来の、ある一時点」に登っていくために、誰のどんな問題を、どういう順番で解決するのかという「戦略的意図」を整理し、定量のゴールを設定しました。ここまでやって初めて、アイデアの優先度づけができるという流れですね。

もちろん、PMF期のなかでも様々な変化があり、それによって戦略の微調整が必要になることはあります。例えばディスカバリーが進んでいくなかでターゲットや提供すべき価値が微妙に変化することもあるでしょう。そうなると当然、関連するアウトプットに影響が出てきます。このことをふまえ、変化が起こった際には随時アップデートしていく形でPMF期を過ごしていました。

今回の発表は以上となります。ご清聴いただき、ありがとうございました。

 

視聴者からの質疑応答

Q.各プロセスにおいて、様々なフレームワークを活用されている印象を受けました。複数のフレームワークをうまく取り扱うために工夫している点などがあれば教えてください。また、試してみたけど実際はあまり使わなかったフレームワークなどはありましたか?

川崎:僕自身、基本的にフレームワークが好きで、日頃からさまざまな手法をインプットしています。ただ、重要なのはどのフレームワークを使うかではなく、そのやり方によって必要としている情報やデータが得られるかどうかです。

例えば、ユーザーリサーチひとつとってもさまざまな手法があり、僕も一時期、いろいろなやり方をインプットしていました。なかには、それができたらとても正確な情報を得られそうな手法もありましたが、PMF期にはそぐわないかなと思って見送ったものもあります。というのも、PMF期って「生の情報」が大量にバーっと入ってくるので、その一次情報をいかにしっかりと集めるかが大事だと思っていて。何かのフレームワークを使って一つひとつの情報を丁寧に精査するというより、とにかく数を集めて共通点を見出すということに注力していましたね。

Q.各アイデアのインパクトがどれくらいあるかは、どのような基準で考えましたか?

川崎:最後にご紹介したIdea Bankのインパクトは10点満点で評価していますが、0〜3、3〜6、6〜9、9〜10という形で評価レベルを4段階に分けています。評価の基準は「指標が効くのか効かないのか」「指標が効くとして、その動きは何%以下なのか」「そこに劇的な変化を与えるのか」「指標構造自体を変えてしまうインパクトなのか」といった具合に段階分けをしてインパクトの点数をつけていました。

あとは「それによって行動が変わるのか」「行動は変わらないけど、効率がよくなるのか」「行動も効率も変わらないけど、付加価値を提供できるのか」という行動変容に関する部分にも着目してアイデアのインパクトを評価していましたね。

Q.PMF期全体を通して、価値検証がうまくいかなかった時もありましたか? その時は、チームとしてどのように試行錯誤したのでしょうか?

川崎:全く想定と違ったということはなかったと思います。ただ、やっぱり難しかったことはあって、特に対象セグメントを整理して絞る工程では苦労しました。

というのも、こうした類のプロダクト自体、2018年当時の飲食店にとってはかなり新しいものだったため、そもそもの受容性が高いとはいえなかった。当然、「本当にお客さんが使ってくれるの?」という心配の声もあったのですが、それ以外にも「自分たちの根幹サービスである“接客”を自動化してしまう(=失ってしまう)ことへの不安」みたいなものが根強くあることが分かってきたんですよね。そうした接客へのスタンスってお店の業態や店長・オーナーの考え方によって分かれるのですが、そうした内面の部分は外部から観測できないため、セグメント化できないんです。

ですから、いろいろな仮説を立てて、軸を定めていきました。例えば、中国出身のオーナーであれば母国で普及しているWeChatに慣れているので、セルフオーダーも当たり前のものとして受け入れてくれるのでないかとか。逆に、高級レストランではやはり接客サービスが生命線なので、こうしたものには否定的なんじゃないかとか。さまざまな仮説を立て、検証のために20〜30のクライアントに聴き回っていた時期もあります。すると、内部でセグメンテーションができるくらいの傾向は出てきて、最終的にリストの優先度づけに活かすことができました。


「PMFまでの道のり」後編として新規プロダクトの市場と事業の価値観をFITさせるプロセス大公開~プロデザ!BYリクルートvol.16(https://recruit-event.connpass.com/event/298563/

)を2023/11/14(火)19:00 〜 20:00に開催します。

ご興味のある方はぜひご参加ください。



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