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仁和寺に行って、お寺は最先端の実験が生まれる場だと知った話

この記事はリクルート プロダクトデザイン室 アドベントカレンダー 2023の 5日目です。

こんにちは、リクルートの反中(たんなか)です。普段はプロダクトデザイン室の組織活性やナレッジ流通の仕組みづくりなどをやっています。
 
リクルートのプロダクトデザイン室では今年から「UXインテリジェンス協会(以下、UXIA)」という団体に加入し、何人かのメンバーがUXIAの分科会活動に参加しています。私もそのメンバーの一員です。
 
先日、UXIA主催で実施された「仁和寺ワークショップ」というものに参加してきたのですが、非常に刺激的で驚きと学びに満ちた経験だったので、ここでお伝えできればと思います。


世界遺産 真言宗御室派総本山 仁和寺

「御室桜」ごしに眺める五重塔。今度は桜の季節に訪れたい

仁和寺は世界遺産にも指定されている、888年創建の歴史あるお寺。境内の「御室桜」は有名で、桜の時期は特に多くの人が訪れるそうです。
 
高校のときに習った『徒然草』の中にも「仁和寺にある法師」って出てきますよね。(気になって読み返してみたら、ものがわかっていない人の例えのような話で、あまり立派な法師じゃありませんでした笑)
 
ただ、徒然草はともかく、世界遺産だし、もちろん名前は聞いたこともあるけれど、意外と行ったことはない。「仁和寺といえば?」と聞かれても意外とイメージが湧かない。僕の中ではそんな立ち位置の存在でした。

お寺でワークショップって…どういうこと?


ワークショップを実施してくださったのは、慶応SDMの特任助教であり、フリーランスのデザインリサーチャーでもある山崎真湖人さん。
 
2日間にわたるワークショップ全体のテーマは
仁和寺の保有する様々なリソースを活⽤してどんな価値ある新しい体験を⽣み出せるだろうか?
というものでした。

ワークショップにも熟練されている山崎さん。最初から最後まで進行が素晴らしかったです

ワークショップの流れは以下のような形です。

Day1
0)仁和寺フィールドワーク(約2時間)
1)フィールドワークで見たもの、感じたことを共有(「リソース」という観点で捉え直す)
2)「仁和寺のイメージって?」を考える

Day2
3)新しい体験のコンセプトを考える
4)コンセプトを詳細化・具体化する(プロトタイプ)
5)共有(お寺の方への提案)とディスカッション

ワークショップも「仁和」の心得で

「ミンナのニンナ」ができるまで


僕らのグループでは、2日間かけて、最終的に「ミンナのニンナ」というコンセプトでの体験づくりを提案しました。
 
仁和寺に訪問する人ひとりひとりが、初めての訪問から「私の仁和寺」(=MYニンナ)という唯一無二の体験をすることで、仁和寺に愛着を持ち、何度も通うようになる。その集合が「みんなの仁和寺」、つまり「ミンナのニンナ」になる、というようなコンセプトです。
 
詳細は…ここでは語りきれませんが、仁和寺で実際に拝観事業に携わる僧侶の方には、「これはぜひやってみたい」というありがたいお言葉をいただきました。

これが「ミンナのニンナ」だ!

仁和寺に初めて来たような素人たちがたった2日間で考えたものなので、それ自体がどれだけお寺の方にとって意味のある提案になったかは正直わかりませんが、少なくともワークショップを経験した僕らにとっては、非常に学びが深いものでした。
 
ここではその学びを次の2つに分けてお伝えしようと思います。

  • ワークショップで得た学び

  • 仁和寺の人と話す中で得た学び


ひとつめの学び:いいアウトプットが出るワークショップ設計のポイント


今回のワークショップ、個人的には非常にいい議論ができて、少なくとも自分たちとしては「やりきった」といえるアウトプットを出すことができたと感じています。

なぜそれができたかと考えると、おそらく
参加者の前提知識を揃える
②プロセスに敢えて制約を設ける
③思考をジャンプさせる仕掛けを作る
というワークショップ設計にあったのではないかと考えています。具体的に言うとこんな感じです。

①参加者の前提知識を揃える

最初に全員で仁和寺をフィールドワークして、同じものを見る経験をすることで、議論するための土台を作ることができた。ワークの中でも、「あ、これはあそこで見た◯◯の話だよね」とか「それならあっちの△△も近いね」のように、同じ記憶と知識を共有することで、どんどん話が盛り上がってつながっていく、という経験を多くしました。フィールドワークでなくとも、共通の前提知識を得られる場を最初に作る、というのはとても大事だと感じました。
 
そして、フィールドワークを通じて仁和寺の様々な場所・景色・資産を知る中で、元々「あまりイメージがない」存在だった仁和寺に、どんどん愛着も湧いてきます。

「北庭」と呼ばれる池泉式の雅なお庭。いつまででも眺めていられる

②プロセスに敢えて制約を設ける

フィールドワークから帰ってきて、「さぁ新しいUXを考えるぞ!」と意気込んでいたら、最初のワークは「見てきた仁和寺のリソースを書き出そう」という地味なもの。そこからリソースを分類してみたり、似ているものに見立ててみたり、山崎さんの指示に従ってワークを進めていく流れで、最初のうちはどこにたどり着くんだろう?という不安もありました。
ただ、プロセスが決まっていると、普段使わない脳みそを使って考えることが強制される、という効果があります。だからこそ、普段では考えつかないアイデアが生まれるということですね。

脳みそを絞って、ひたすらに付箋を貼り続ける。この積み重ねがあるからこそアイデアが飛躍する

③思考をジャンプさせる仕掛けを作る

今回「おもしろい」と思ったのは、リソースをまとめた後に「全然違うジャンルで、これに似ているものって何がある?」という事例を考えていくステップです。例えば、仁王門から続く参道を滑走路に見立てる、といったように、「見立て」で思考をジャンプさせる仕掛けです。(実際、言われてみると滑走路のように広くて真っ直ぐな参道なんです。)

滑走路(参道)の先に、ライトアップされた中門。ここから夜間飛行に飛び立ちたい

これらの工夫によって、ワークショップが終わったときには、絶対自分ひとりではたどり着けなかった場所に立つことができている。大げさな言い方かもしれませんが、ワークショップという経験によって、新しい世界を見ることができる、そんな力を感じました。
 
今回身をもって学んだこれらのポイントは、ワークショップに限らず、議論の場をデザインするときに非常に役立つノウハウだと思います。


ふたつめの学び:お寺は最先端の実験場だ


実はこちらが今回、一番お話したいことでした(笑)。

今回仁和寺でワークショップに協力いただいた僧侶の方と、2日間通じて色々お話する機会があったのですが、それがとにかく驚きの連続でした。
 
主にお話をお伺いできたのが、金崎さんという課長さん(お寺にも「課長」という役職があるというのもカルチャーショックでした)とそのチームメンバーの智大さんという方。いずれも現役バリバリの僧侶です。 そんな金崎さんのチーム、聞けば聞くほど、いつもどんどん新しいことにチャレンジされていて、とにかく事例がバンバン出てきます。

例えば、

  • 「1泊100万円で閉門後の仁和寺を貸切で満喫できる」というコンセプトで「1泊100万円の宿坊」というプロジェクトを立ち上げ

  • お寺の持つ資産をきちんとデータとして残すため、あらゆる建物と仏像の3Dデータを大学と連携して作成。そのデータを活用し、コロナ禍ではVR拝観の企画展を実施

  • 境内の活用されていなかった蔵を改装して、人気カフェとコラボして五色のクリームソーダの店を出店(こちらは、慶応SDMの大浦教授のアイデアで実現したとか!)

  • 霧を発生させる装置を購入し、「雲海に浮かぶお堂」を見学できる企画を実施

などなど。(どの話も、検索すると色々情報が出てきます)

これが、お釈迦様の教え・心を表す“五色”をイメージしたクリームソーダ。
フィールドワークの途中だったので泣く泣く諦めました、ぜひ飲みたかったけど。

しかもどの企画も、外部の会社任せにしたりせず、僧侶の方々がみずから頭も手も足も動かすハンズオンで取り組まれています。(手だけじゃないので、いわば「ヘッドオン&ハンズオン&フィートオン」ですね。)
 
自分たちで手を動かすから、最初は素人であっても、企画をやりきった頃には誰よりも圧倒的に詳しくなっています。例えば金崎さんは3Dモデリングの手法について、プロ顔負けの知識をお持ちだったりする。
また、自分たちで試行錯誤しているから、とにかく学びの量が半端ないし、それがチームとしての蓄積になり、次の新しいチャレンジの成功率を上げている。
 

世の中には、こうした企画を最初から最後まで支援、あるいは代行してくれる会社もたくさんあります。プロに任せたほうがうまくいく、という誘惑もあります。でも、外部に完全に任せてしまうと、結局自分たちにはノウハウがたまらず、成功しても失敗しても、後に何も残らない、みたいなことになってしまう。
我と我が身を振り返って、「ここまでハンズオンでできているか? 人に丸投げして『やった気』になっていないか?」という痛烈な問いをぶつけられた気持ちでした。


僕はなんとなく、お寺というと「伝統文化を今に残す場所」として捉えてしまっていました。でも、仁和寺が創建されてから1000年以上、平安時代から武士の世になり、近世・近代になり、さらに現代にいたるまで、世の中が大きく変わる中で続いてきたのは、伝統を守るだけでなく、時代の変化に合わせていつも新しいチャレンジが生まれ、仁和寺自体が変化してきたからなのでは?ということに、今回お話を聞いて思い至りました。
 
そして僧侶の皆さんも、伝統的な儀式や文化を守るだけでなく、変化を最先端で牽引していく存在でもある、そんな感想を抱きました。
 
お寺はむしろ、新しいものが生まれる場で、僧侶はそれをリードするチェンジリーダーなのかもしれない。このワークショップ以降、そういう目で世の中を見ていると、意外と仁和寺以外にも様々なお寺が新しい取り組みをしているニュースが目に飛び込むようになってきたり。


むすびに


こうして、なにかの経験をきっかけにして自分の知らない世界が広がるのってとてもおもしろいですよね。
今回のワークショップの機会をいただいたUXインテリジェンス協会と仁和寺の方々に(あ、あとUXインテリジェンス協会に参画する機会をくれた会社にも)、感謝の気持ちを伝えてこの文章を締めたいと思います。




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