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私たちが60年後もデザインを続けられるために ~DesignOps によせて~

こんにちは。プロダクトデザイン室で就職活動をサポートするサービスを担当している、デザインディレクターの竹内です。プロダクトデザイン室アドベントカレンダー16日目は、DesignOpsについて最近思っていることを少し書いてみたいと思います。ぜひご笑覧いただけますと嬉しいです。


この話のきっかけ、デザイナーの世界について

私は新卒からデザイナーとして社会人デビューをして今年で15年ぐらい、そのうちリクルートではおおよそ5年くらい働いてきました。あっという間に時間が過ぎて行きましたが、長くデザイナーとして働く中で大学の同窓生など、業界の最前線で大活躍するたくさんの仲間の姿も見てきましたし、その反対に、さまざまな理由でデザインから離れていく人たちも多く見てきました。

私たちが身を置くデザインという業界は、他の業界に比べると少し独特な世界だと思っています。職責や職務要件が曖昧で、幅広い役割を”デザイン”という言葉で一括りに表現されることもあります。多くの知見をキャッチアップし続けることを求められつつも、締め切りギリギリまで作業に没頭することもしばしば。私はデザイン以外の職業については全く知りませんが、それでも他の職業に比べてデザインという仕事はなかなかにタフな仕事なのではないでしょうか?
 
そして、私の同世代や先輩方の多くが、この特殊な世界の中で活躍をしている裏側で、健康や家族の都合などからこの世界に居続けることが難しく、デザインから離れざるを得なかった人たちが一定数います。世の中全体としては、少しずつデザイナーにとってやさしい世界へ変わりつつあると思いますが、毎年多くの新人デザイナーが社会に出てくる中で、この世界の人間としては、まだまだ超えねばならない課題がいくつも残っているようにも感じています。 

15年前の最終講評での一コマ

そんなことをぼんやりと考えていた時、私が大学3年生の頃に授業を担当されていた教授が、学年最後の講評で発した、こんな言葉をふと思い出すことがありました。
 
「この授業は小手先の技術を身につけるためのものではない。君たちが卒業してから60年デザインを続けられるために、この授業をしている」と。(多分こんなニュアンスのお話だったはず。。。)
 
突然なぜこんなことを言い出したのか?しかし当時、20そこらの未熟な人間だった私にとって、この話はとても新鮮に聞こえました。課題の内容は学生の視点から見ると意味不明で、指導もほぼ丸投げのような授業だと思っていた当時の私は、この教授からのメッセージに妙な納得感を受けたことを覚えています。そして、あの時はぼんやりとしか汲み取れていなかったこの言葉が、長くデザイナーを続けていくにつれて、最近徐々にリアリティを持って実感できるようになってきました。
 
今、デザイナーを一年、また一年と、純粋な気持ちで続けていくことが本当に難しいと感じます。それは、体力や環境的な話もそうですが、自分の才能やモチベーションとの向き合い方、興味や好奇心、デザイン以外に考えなければならない様々なこと。デザイナーとして社会に出たばかりの頃は、ただ好きなデザインについてだけを考えていればよかったのに、気がつけば煩わしいのに放っておけない多くのことに囲まれながらデザインに関わっていることに気づきます。 そして今になってようやく、15年前のあの日の言葉が自分にとって非常にリアルに感じられるようになってきたわけです。

多くの企業で導入されはじめたDesignOps

日々そのような難しさを感じている一方、最近ではDesignOpsという言葉が界隈を賑わしています。ちなみにDesignOpsとは、Design Operationsの略称で、組織におけるデザインを、これまで個々人に依存したものから、より組織を中心とした運用的(Operation)なものへ変える活動のことです。もともとDevOps(Development Operations)から派生した言葉ということもあり、プロセスや組織基盤の整備、ピープルマネジメントといった、組織における有効性や効率化を目的とした活動が多くあります。
 
そして、リクルートにおいても例に漏れず、昨今DesignOps専門の組織を組成し、基盤整備やインナーコミュニケーションなど、様々な活動に幅広く取り組んでいます。今年一年を振り返っても、ツール基盤の統一や、デザインナレッジのデータベース化など、デザイン業務の効率化に大きく貢献する活動がたくさんありました。そしてかく言う私も、採用広報などのいくつかのテーマにおいて、DesignOpsの取り組みを社内外で推進し、デザイナーやデザイン組織を支援する役割を持つ一人でもあります。

デザイナーが消耗されない世界を

しかし、推進すると自分で書いておきながら、実は自分がDesignOpsに取り組む理由を、これまで明確に言葉にすることができずにいました。自分を動かす根源の部分をずっと掴みきれずにいたというのが正直なところです。やはり、ものづくりが好きでデザインの世界へ入った人間には、プロセス作りや環境整備など、目の前のアウトプットに直接影響が少ない事へ、積極的に時間を割くというのがしっくりこない部分も多かったのだと思います。
 
そもそもDesignOpsとは、一般的には「デザインの価値と影響を大規模に拡大するために、人、プロセス、技術を組織化し、最適化すること」などと説明されます。しかしそんな中で、私自身は最適化や効率化を目指すという表現に微妙な収まりの悪さを感じていました。そして、先ほど師の言葉を思い出した時、その違和感の理由が少しはっきりしたような気がします。それは、私がDesignOpsに求めることは、デザイン業務の最適化や効率化などではなく、デザイナーを長く続ける困難に対し、自らの取り組みが何かしらの手助けになるのではと、どこか自分の中で感じていたからです。
 
もちろん、最適化や効率化がデザイナーの業務環境にとって重要なことだということはかわりません。しかしできることなら、私たちがこれから取り組むDesignOpsのたどり着く先が、事業や経営効率の追求にのみ閉じず、デザイナーそれぞれの未来へつながるものであることを期待したいと思います。そして、数十年後に振り返った時、当時の自分にまだデザインを続けていると胸を張れるように、DesignOpsを通してデザイナーが消耗されない世界を作って行きたいと、最近密かに思っています。



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