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「Air ビジネスツールズ 10周年ブランドサイト」プロジェクト。 リリースまでの1年間のブランドマネージャーの頭の中

こんにちは。リクルートのプロダクトデザイン室で、「Air ビジネスツールズ」のブランドマネージャーをしている野村です。

今年2023年は、『Airレジ』が提供を開始してから10年目。この「10周年」を節目として、2023年5月15日に「Air ビジネスツールズ 10周年ブランドサイト」をリリースしました。今回は、このブランドサイトの構想を練り始めてからリリースまでの約1年の間、ブランドマネージャーとして、私が何を考え、どう実行し、どんな想いを込めたのかをご紹介します。 

事業のブランド担当者はもちろん、これからプロジェクトオーナーの役割を担う方に読んでもらえたら幸いです。

Air ビジネスツールズ 10周年ブランドサイト

Air ビジネスツールズとは?

Air ビジネスツールズ サービス説明

「お店に行ってお会計をする時、店員さんがiPadを操作していた。」
「お支払いをする時に、黒い小さなカードリーダーにクレジットカードを挿して決済した。」
「人気のお店に行ったら、入口でQRコードが印刷された紙を発券された。」
「オダギリジョーさんが謎の外国人に“じゃあいいですぅ〜!”と言われるTVCMを観たことがある。」

もし、みなさんがこんな体験をしたことがあるのなら、それは「Air ビジネスツールズ」のサービスかもしれません。

「Air ビジネスツールズ」とは、『Airレジ』『Airペイ』『Airシフト』をはじめとしたリクルートの業務・経営支援サービスの総称です。「商うを、自由に。」のブランドビジョンのもと、2013年の事業スタートから現在までに、予約・受付管理、会計、決済から人材採用、シフト管理、資金調達まで、17のサービスを提供しています(2023年5月時点)。どのサービスも、事業者さんにとって「やらなければいけないし大切だけれど、アナログで煩わしい…」という日々の業務の手間、時間、コストを軽減できるように設計、構築されています。

「Air ビジネスツールズ」の特長は?

プロダクトとしての大きな特長は二つあります。ひとつめは、AirIDひとつあればすべてのサービスにログインできること。ふたつめは、すべてのサービスのUIUXが統一されていること。

店舗や事業所の日々の業務は、互いに連携しあっています。会計と決済、予約と受付、注文と会計…のように。事業者のみなさんが、一連の業務をスムーズに行えるように、「Air ビジネスツールズ」は、複数のアプリやWebサービスをまるでひとつのサービスのように利用することができるのです。

私は、この「Air ビジネスツールズ」のブランドマネージャーとして、Airのブランドが事業者さんと接点を持つすべてのシーンでの「ブランド体験」のクオリティをマネジメント、バリューアップするための業務を担当しています。具体的には、「Air ビジネスツールズ」全体のブランド戦略立案、新サービスのブランドコミュニケーション戦略策定のサポート、ブランドの世界観を伝える動画、冊子、イベントなどの企画制作、制作物のブランドレビュー、ブランド要件の策定、マスプロモーションのレビュー、などです。

私は、なぜこのタイミングで、ブランドサイトを立ち上げようと考えたのでしょうか?

ブランドビジョン「商うを、自由に。」に込めた想い

ブランドサイト立ち上げの背景をお話する前に、Airのブランドステートメントについて、触れようと思います。
Airのブランドステートメントは、2021年にミッションの言葉を少し改訂しましたが、ビジョンもバリューも、策定した2015年以来変わっていません。

Airのブランドステートメント

ビジョンの言葉「商うを、自由に。」に込めた想いは、ブランドサイトでもメッセージしています。

ブランドサイトでも「商うを、自由に。」に込めた想いをメッセージしています

Airのブランドの主役は事業者さんです。私たちのサービスを使うことで、手間、時間、コストの負担が減ったなら、事業者さんには、ずっとやりたかったこと、思い描いていたことを実現して欲しい。私たちAirのサービスは、事業者さんのそばにいて、みなさんが思い描いていることの実現に向けて一緒に歩んでいく「パートナー」でありたい。

事業がスタートして10年経つと、外部環境も内部環境にも変化が生じます。変わっていくこと、変えていくことが出てくると同時に、「変えてはいけないこと」もある。Airのブランドにとっては、ビジョンに込められたこの想いこそが、変えてはいけないこと。

ブランドマネージャーとして事業に携わっている中で、ここ数年、社内での会話が「事業者さんの業務効率化がゴール」にシフトしているように感じられていました。確かに、サービス利用による業務効率化は必達目標です。しかし、最終的な目的、Airが目指す世界はその先の、事業者さんが「商うを、自由に。」の実現を感じられる世界。このことを、社内外に改めて発信しておく必要があるな、と2022年の初め頃に強く感じていました。

「ブランドサイトをつくることありき」ではなかった

10周年を翌年に控えた2022年5月。私は3つのことを考えていました。

  1. 「10周年」は一度きり。これをフックに事業に貢献できるブランディングをしたい。

  2. 複数サービス利用事業者も増えている。単体のサービスではなく「Air ビジネスツールズ」として世の中とコミュニケーションしてもいいタイミングになっている。

  3. 事業者さんの真の「インフラ」「パートナー」になるためには、「信頼」のブランドイメージをより強固にしたい。 

この3つを実現するためには、どんな施策が最も効果的だろうか?と考えていた時に、日常業務で連携していた、当時の社外広報のマネージャーと会話する機会がありました。

「…わかりやすく「Air ビジネスツールズ」全体の世界観やサービスの紹介などを(メディアに)まとめてみていただけるまとめサイトのようなものがあるといい。何度も繰り返し見ることができて、Airの理解を深めてもらえるようなもの。事業概要、事例、動画など、「Air ビジネスツールズ」に関する多様な情報がまとまっていたら、興味を持った記者は、いつでも情報を入手することができるし、まだ「Air ビジネスツールズ」を知らない記者に関心を持ってもらうこともできる。それに加えて、情報がまとまっていることで、社外広報の記者とコミュニケーションもスムーズになる。」

私が考えていたことと、社外広報の顕在ニーズが結びついた瞬間です。

「10周年をフックに、10年の歩み、サービス概要、社会課題解決に役立った事例などをまとめたブランドサイトをつくり、メディアを通じて「Air ビジネスツールズは信頼できそう」というイメージを、未利用の全国の事業者さんに届けることができるのでは?」

ここから、社外広報メンバーとブランドマネジメントグループのメンバーで、プロジェクトを始動させました。2022年6月のことです。

プロジェクト立ち上げ時に作っていた資料

どのようにプロジェクトを進めたか?

プロジェクトミーティングの初回。私は、自分の「頭の中」を参加メンバーに提示しました。Airの事業が始まった頃のこと、今、どんなことを考えているのか、未来はどうありたいのか。堅苦しい資料ではなく、自分の言葉で、感じたことを素直に。

長期に渡るプロジェクトでは、さまざまなことがあり、「何のために?」をつい忘れがちになります。その時に、必ず「立ち戻る場所」をピン留めしておくことが大切です。下記のスライドは、その後約1年続くプロジェクトの要所要所で、何度か参照したことを覚えています。

初回ミーティングでは自分の「頭の中」をメンバーに提示しました

プロジェクトメンバー全員が納得できるように

ものづくりで最も大切なことは、「誰に」「何を」「どのように」伝えて「どう感じて欲しいのか」をシャープに言語化することだと私は考えています。これはブランディングでも全く同じで、ここがブレると、成功しません。

プロジェクトの前半では、メンバー全員に簡単なワークをしてもらいました。特に、「できあがったものを見て、どう感じて欲しいのか?」をセリフで書いてもらったことは、重要なプロセスでした。初期のこのワークにより、みんなが同じ方向を向くことができたように感じます。

企画を通じて「誰に」「どう感じて欲しいのか」を考えるワークを実施しました

サイト制作プロセスで大切にしたこと

2022年10月に社内で企画開始の承認を得てから、社内外のメンバー10人以上が参加する、Webサイト構築のプロジェクトが始動しました。

 情報設計、デザインのプロセスで意識したことは、ふたつ。Air ブランドでは、「事業者のみなさんこそが主役」であるということ、そして、「現在」「過去」「未来」のすべてのフェーズを、「データ、実例、想い」をバランスよく使って伝えること、です。

この考え方は、ページ制作のプロセスで、制作を担当したパートナー会社さんにも、繰り返しお伝えしました。写真選定、デザインパターンの選択、言葉選び、すべてにおいてこの考え方のもと、一貫性をもって意思決定していたので、プロジェクトメンバーも納得して原案やアイデアを出してくれたように感じています。

また、「ブランドサイト」というと、自社や自事業のフィロソフィー(哲学)を長々と紹介するコンテンツを設けているサイトもありますが、私はこう考えました。

「受け手である事業者の方々にどう思ってもらえているか。私たちが感じて欲しいことを、事業者さんが同じように感じてくれていたら、ブランディングができているということ。事業者さんの声から、「商うを、自由に。」を感じてもらえたら、ブランドサイトとしての役割を果たしているはずだ。」

その考えのもと、すべてのコーナーに事業者のみなさんの声を豊富に掲載しました。リリースした後、親しくしている事業者さんからこんな言葉をいただきました。

「多くの店舗オーナーさんからの感謝の声が、ブランドサイトから伝わってきました。」

まさに、「こう感じてほしい」という私の意図通りに伝わっている、と感じられた瞬間でした。

リリースしてみて

リリース後の最大の気づきは、私の想像以上に従業員が喜んでくれたこと、です。「10年前を知っている人間は、私以外にごく少数のメンバー。みんなそこまで感慨はないかな。」と思っていたのです。しかし、サイトを見て、「自分の仕事がこんなに事業者さんに役立っていると感じられた」「日々の仕事が事業者さんの毎日につながっていると実感できた」など、ダイレクトメッセージもいただきました。

また、過去に制作した記事の許諾をいただくためにご連絡した事業者さんが、「もちろん使ってください。いつもお世話になっています!」と温かいメッセージをくれたことも強く印象に残っています。

Air ビジネスツールズの10年

さいごに

最初は、私ひとりの頭の中にあったアイデアを、少しずつ他のメンバーに共有することで、社内外にどんどん仲間が増えていく。制作するプロセスで、「事業者さんこそが主役」に改めて気づけ たし、仕上がったサイトに対する熱のこもった反応を目の当たりにし、考え抜かれた企画、想いを込めた文章、印象的な写真、高いデザイン品質は、必ず人の心を動かすことも実感しました。

「ブランドサイトありき」ではなかったものの、アウトプットの形として、「Webサイト」を選択しました。ただ、サイト立ち上げがゴールではなく、「Air ビジネスツールズ」の事業に貢献できるブランディングをしていくことこそが実現したいこと、です。

このブランドサイトをベース(基地)にして、新しいブランディング施策にチャレンジしていこうと決意を新たにしています。



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