新卒2年目のキャリアデザイン「リクルートには役割を限定しない環境がある」
人を動かすデザインの仕事をしたいと気づいた学生時代
――最初に、川上さんの学生時代について教えてください。どのようなことを学んでいたのでしょうか?
大学ではデザインを基礎から学び、3年生から大学院にかけてはサービスデザインとコミュニケーションデザイン専攻しました。研究室では産学協同のプロジェクトや海外のワークショップなど、授業やそれらの活動を通してユーザーの課題やインサイトを見つけてコンセプトを練り、アウトプットするまでの一連の流れを体験してきました。Webサービスやパッケージデザイン、フリーマーケットのデザインなど、アウトプットの内容は幅広かったですね。
個人での活動としては学科の仲間と大学祭で出店する屋台のロゴ、料理、店舗までデザインしたり、ロゴデザインのコンペに応募しまくったり、音楽事業の会社のインターンとしてアートワークのデザインを手がけたり。ロゴデザインやグラフィックデザインが好きで、積極的に手を動かしていました。
――デザインどっぷりの学生生活だったのですね。ということは、早い段階でデザイナーを志していたんですか?
そうですね。自分のアイデアをかたちにするような仕事をしたいなと思って、デザイン学科を選んだので。もともと美術が一番好きでしたし、小学生のときから文化祭でお店を作るみたいなことが楽しかったので、割と早い段階からデザイナーにはなりたいと思っていましたね。
ただ、何のデザイナーになるかはとても迷いました。最初は、学生時代から興味のあった商品や企業のブランディングに関わるような仕事がしたいと思っていたんです。でも、サービスデザインという分野に触れていく中で、「デザインをすること」よりも「デザインの力で人を動かすこと」がしたいのだと気がつきました。
リクルートに多様なデザイナーが在籍していることに驚き
――どのような観点で就職先を選びましたか?
UI/UXデザイナーに絞って仕事を探していました。というのも、大学院時代に中国の大学に留学したときに、キャッシュレス決済が社会の隅々まで浸透していたことを目の当たりにして影響を受けたんです。
例えば、コインランドリーも現金を使わずに、予約から決済まで遠隔操作で済ませられますし、友人と食事に行くときもチャットアプリで割り勘するのが当たり前でした。ただ、使い方が難しかったり、操作に不安を感じたことも多々あって。サービスがよくてもユーザーとのタッチポイントとなる体験が良くなければ、結局は敬遠してしまいます。この経験がきっかけでインターフェースのデザインや体験設計が「人を動かすデザイン」に大きく関わると感じ、就職先を考える軸となりました。
あとは、いろいろな課題に触れたいと思っていたので、担当できる案件数が多く、プロジェクトのサイクルが早い職場を重視しました。
――結果的にリクルートを選ばれました。
事業会社と制作会社とで悩んだのですが、制作会社はデザインの品質やスピードを高めることにフォーカスした仕事が中心になる予感がありました。自分の発想力を活かしたり視座を高められるような仕事をしたかったので、事業会社の方がやりたいことと近いと思ったんです。
最初は「リクルート=営業会社」のイメージが強かったので、こんなに多くのデザイナーが在籍しているとは知りませんでした。でも、調べていくうちに、プロダクト横断のデザイン組織が存在していることや、多様なバックグラウンドのデザイナーが活躍していることを知り、興味を持つようになりました。
また、日常生活で使うものや、人と何かの出会いの創出にも携わりたかったので、ライフイベントに寄り添うサービスを展開しているところも魅力的でしたね。 Ringという、リクルートグループ会社従業員を対象にした新規事業提案制度( https://ring.recruit.co.jp/ )もあるので、新しいサービスが生まれやすい社風にも惹かれました。
1年目でチームリーダーに抜擢。不安より「嬉しい」が勝った
――入社から現在までの仕事内容について教えてください。
3カ月の研修を経て、婚活向けマッチングサービス『ゼクシィ縁結び』のデザインチームに配属されました。まずは、自分の手を動かして案件を回すことからスタートして、実践を通してデジタルプロダクトのルールやセオリーを学んでいきました。
入社から約2年が経った今も『ゼクシィ縁結び』に携わっていますが、仕事の内容はかなり変わりました。具体的には、2022年10月からデザインチームのリーダーの役割を任されるようになったんです。
――入社から1年半でチームリーダーとは、すごいスピード感ですね。
リクルートには半期に1度、上長と一緒に自分のミッションを考える時間があって、その中でどんなことをやりたいか(Will)。自分がどんなことをできるか(Can)、仕事としてやるべきこと(Must)の擦り合わせを行います。入社当初は目の前のことをこなすだけで精いっぱいだったのですが、入社1年目の途中からチーム全体の動きや品質を向上させたいというWillができました。
「僕の意志(Will)とCan(強み)に期待をかけていただき、チームリーダーを任せてもらえることになりました 。「これをやって」とミッションを渡されるだけではなく、Willを汲んでキャリアや成長につながる新しい仕事を提案してもらえたので、「新卒1人のために、こんなにキャリアプランを考えてくれるんだ」という驚きもありました。
もちろん、不安もありました。新卒デザイナーなのに、こんな早くにリーダー業務をしていいのかと。でも、プレッシャーよりも期待に応えたい気持ちの方が大きかったですね。
――大変なことはありませんでしたか?
もちろんありました。チームリーダーになると案件全体のデザインのディレクションなど、仕事の幅が広がります。特に「どうしたら迷わずに、より良いプロダクトをつくれるのか」を考えることは難しかったです。
また、チームリーダーは、プランナーから渡された企画をデザインに落とし込むという、全体の方向性を決める立場です。これも苦労しましたが、チームがスムーズに動けるようにデザインシステムの補強やワークフローの整備、プランナーとデザイナーの間に入りそれぞれの意図を翻訳するコミュニケーションなど自分なりに工夫しました。
ディレクションをする中で意見が割れることもありましたし、その中で100点満点のディレクターになれたかというと、至らない部分も多々あったと思います。ただ、感情を抜きにして「何を実現させるためのデザインなのか」「何が一番ユーザーのためになるのか」という軸、言い換えればプロダクトにとっての正義はブラさずに対話を重ねることにこだわりました。
リクルートにはデザイナーの役割を拡張できる環境がある
――入社2年目にして、チームリーダーとして頭角をあらわしている川上さんですが、これまでの経験で最も成長につながったと感じるエピソードを伺えますか?
『ゼクシィ縁結び』デザインリニューアルの起案ですね。アクセシビリティの問題やデザイントレンドとの乖離が気になっていて、配属当初からデザインリニューアルを担当したいと思っていたんです。
当時は「こんな良いデザインにしたいです」と提案すれば、プロジェクトが進むものだと考えていました。ただ、デザイン案を練って上司に伝えてみるものの、話が進まず自分の気持ちが空回りした状態が続いてしまって。
でも、上司や先輩との会話を通して、「デザイナーは『どんなデザインにすればいいか』ということばかりを考えてしまう。でも、そもそもなぜリニューアルするのか、具体的にどう登っていくのかを提示しないとプロジェクトにならない」と気が付くことができました。
そこで、伝え方を変えて、前提問題と毀損リスクの少ない登り方を論理立てて説明。具体的には「一気にプロダクト全体を変えるのではなく、案件単位でA/Bテストを実施しながら徐々にリニューアルを進める」という提案をしました。それが認められて、リニューアルの話が進みました。
――デザインだけに縛られないデザイナー、まさに川上さんが求めていた視座を高めていきたいという話につながりそうなお話ですね。
そうですね。課題意識が先走ってしまい、ビジネス的な観点でその課題に今着手するべきなのか、という点を説明しきれていませんでした。
入社前、「リクルートのデザインディレクターは、プロジェクトの推進にあたり、論理的に伝える力が必要」というデザイン組織の部長が話していた記事を読んでいたのですが、頭でわかっているつもりでも実際に現場へ入ってみると、その観点が抜けていたと反省しました。
もちろんデザイナーとしての知識やスキルは重要ですが、役割を拡張して「考える・作る・進める」全ての過程を体験できるのはリクルートならではだと思います。入社するときに欲しかった「自分にない視点」をたくさん得られました。その意味でも、ファーストキャリアとしてリクルートを選んで、本当に良かったです。
――最後に、入社2年で大きな成長を手に入れた川上さんから若手デザイナーの皆さんにメッセージをお願いできますか?
リクルートでは、デザイナーとして手を動かすだけでは得られない視点を得ることができます。あっという間に2年が経っていましたし、成長の速度は予想以上に早く、いろいろ吸収できました。自分のWillに則ってプロジェクトを推進できるので、UI/UXといったデザインの表層部分から、上流のビジネス部分まで全体に関与できます。
デザイナーだからデザインだけするみたいな働き方でもないですし、何より意志を尊重してくれるので、いろいろなチャレンジができます。そうした環境に身を置くことで、自ずとデザイナーとしての市場価値が高くなるはず。当然のように若手が活躍しているので、刺激を受けながら早く成長したい方や、仕事の幅を広げたい方にはうってつけの環境だと思っています。