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ITサービス 完全未経験の社会人10年目が中途採用でプロダクトマネージャーになった話

 この記事は リクルート  プロダクトデザイン室  アドベントカレンダー 2022 17日目です。
 
 こんにちは。自動車クライアントソリューショングループの松原です。
 本記事の公開日は年末年始が迫りつつある土日ということで、来年の目標を立てたりキャリアの振り返りをしようと思っている方も多いのではないでしょうか。そんなあなたに向けて、本日は未経験職種へのキャリアチェンジのお話をさせていただきます。

業界未経験でもIT企画職にチャレンジできます!

 ITサービス・プロダクトにおけるプロダクトマネージャー(PdM)などと呼ばれる企画職に興味はあるものの、何をやっているかいまいちイメージがわかない方は多くいらっしゃるのではないでしょうか。実際に私もタイトルの通り社会人10年目までITサービスには無縁で、「A/Bテスト」という分析手法を入社後初めて知ったときは心底感動したくらいですが、なんとかリクルートのPdMとして3年間生き延びています(笑)
 PdMのようなITサービス企画職の仕事を一言でいうと、「ユーザーにとって理想的な体験をイメージ&言語化すること」です。(もちろん経済性も重要です。※)
 なので前職の経験が何であっても、「人の話をよく聞く」「もっとみんながハッピーになれる仕組みを考える」ということができれば、必要なスキルはあとからついてくるのであまり問題ではないと思います。なのでもし興味があるのなら、「未経験だし・・・」「自信がない・・・」と諦めず、ぜひご自身のキャリアを前向きに振り返ってみると道が拓けるかもしれません。

(※ ビジネスとUXの両立についてはアドベントカレンダー2022 8日目もぜひ読んでみてください。)

新卒からずっとITサービスに関わったことがなかった

 大学時代は文系で、新卒で入社した小売業では売場や法人営業(テナントリーシング)を比較的長く経験しました。2社目は経営コンサルで業界・テーマ問わず幅広く担当したのですが、あいにくIT系プロジェクトとはほとんど縁がありませんでした。ただキャリアを重ねるうちにITサービスの知見が絶対必要になると考えて仕事探しをしたところ、運よくリクルートに転職することができました。なお入社時は事業開発担当だったので、いわゆるPdMの仕事をメインでするようになったのは入社1年後くらいからとなります。それまでITサービスを売ったことも作ったこともなく、エンジニア・プログラマー・データサイエンティストといった方々と会話したことはほぼありませんでした。

 余談ですが、リクルート入社後に面接官を担当した当時の上司に聞いたところ、意外にも新卒2年目の売場販売時代の経験が評価されたとのことでした。PdMというよりは事業開発視点での「目標達成に向けて泥臭い方法も含めあらゆる手を尽くした」という評価ではあるものの、ITスキル・知見を採用要件として必須にしていないことがよくわかると思います。

 PdMの仕事①:ユーザーを知り、ユーザーに憑依すること

 私が所属する自動車クライアントソリューショングループでは、『カーセンサーnet』のクライアントであるカーディーラーや中古車専業店が日常的に使うBtoBプロダクトを担当しています。一般的にtoBサービスはtoCサービスと違い、業界に特化した専門性の高いサービスであることが多いです。人事管理サービスとか、会計管理サービスとか、営業支援サービスなどはなんとなくイメージできるのではないでしょうか。この組織のなかで私が達成すべきミッションは、既にクライアントにお使いいただいているプロダクトをアップデートし続けることで、既存クライアントからの満足度を上げ、利用クライアントの増加に寄与することです。

 しかし既にご紹介のとおり、私にはIT知見も自動車知見もなかった(今も足りない…)ので、周りの人が何を言っているのか全く分からないことも少なくありませんでした。実際にクライアントの元に訪問して、「キミ、本当に全然知らないねえ!大丈夫?」と面と向かって言われてしまったこともあります・・・
 なのでとにかく、このプロダクトを使うのはどんな人なのか、どんな使い方をしているのかを理解するところから始まります。この理解のために、

  • クライアントに訪問して話をよく聞く

  • 社内の人に片っ端から聞きまくる

  •  本やネットで調べる

といった本当に誰にでもできることを通して、自動車業界やそこにいる人たちを具体的にイメージできるようになることが目標です。
 するとだんだんと、ユーザーであるクライアントがどんな行動をするか想像できるようになってくるんですね。
「クライアントはこの機能を●曜日●時頃、~~~といったことを考えながら使っているから、画面レイアウトをこう変えると使いやすくなるだろう」
「この操作のあとはいったんパソコンを離れて▲▲▲という行動を取るから、こういう機能を追加したら便利になるだろう」
「スマホとタブレットとパソコンだと使用シーンが全然違うから、逆に機能を絞り込んでシンプルにした方がよいかも」
といったことを想像できるようになれば、実は仕事の半分は終わったと言えると思います。
 ちなみに自動車領域の一部ではこれを「憑依する」と呼んだりもしています。わかりやすいですよね。

PdMの仕事②:ユーザーにとっての価値を言語化し、専門家を巻き込むこと(自分は専門家でなくてOK)

 さて、担当プロダクトにどんなアップデートをすべきか定めたら、あとはそれを具現化します。
 ところが私はウェブデザインもプログラミングもできませんし、全国のクライアント1社1社を営業して回ることも不可能です。なので、それらのスキルをもったメンバーの力を借りるしかありません。彼らの協力を得るために、アップデートする内容について、チームとして共通認識をもてるよう、

【Why】そもそもなぜするのか?現状のユーザー体験のどこに問題があり、どう変えるのが目的なのか?
【What】目的達成のために、何をするのか?それは他のやるべきことよりも優先すべきか?
【How】具体的にどんな方法で新たな体験を提供するのか?どうやってそのアップデートを伝えるか?

といった論点を言語化していきます。(ここではWordやExcelやPowerPointを使うことが多いです)
 協力してもらうメンバーと一緒に各論点を詳細化していくのですが、特にIT・自動車業界未経験の私は専門用語や業界慣習でわからないことが多いので、会話中に出てくる言葉を常に調べながら「これってこういうことですか?」と聞きまくりながら進めていきます。みなさん根気強く付き合ってくれるので本当に感謝しています。たまに「そっか、そこから説明しないといけないんだね(苦笑)」と言わせてしまうのは非常に心苦しいですが・・・。
 各論点の詳細が固まったら、あとはスキルを持ったメンバーがそれぞれ実行していきます。私は彼らが最大限のパフォーマンスを発揮できるよう、全体のディレクションを行います。
 つまり私が発揮すべき価値は、

  • ユーザーにとって本当に必要なサービスを考え、言語化すること

  • そのサービスを社内のメンバーの協力を仰ぎながらクライアントに提供していくこと

の2点に集約されます。なのでこれまでの社会人経験で培った「相手の話を聞き、理解し、提案する」という基本さえあれば、専門知識がなくても、業界未経験でも、誰でもチャレンジできる役割であると実感しています。
(逆に「経験が浅いので・・・」という言い訳ができない環境ともいえるので、プレッシャーも感じます。笑)

PdM経験後…口頭だけではなく、文章や図解によるコミュニケーションを活用

 PdMになって約3年経ちましたが、デザインが描けるようになったわけでも、プログラミングができるようになったわけでもなく、IT系の資格は1つもとっていません。でも「ユーザーにどんなサービスを提供すべきか?」を徹底的に考え言語化することで、様々な専門性を持った仲間と会話しながら、新しいサービスを作り、ユーザーに価値提供できていると思います。
 仕事の仕方で変わった点としては、コロナ禍ということもあり、これまで対面&口頭でなんとなく通じていたコミュニケーションをきちんと文章や図解で伝える必要に迫られていることでしょうか。文章化することで自分の考えの曖昧さに気付けますし、Why・What・Howのストーリーが一貫していないと仲間を動かすことができないことを日々痛感しています。私は経歴上、販売や営業などの対面コミュニケーションを行うことが多かったので、細かい部分までドキュメント化することがまだまだ苦手です。

(一方で、ウェットなコミュニケーションが有効になる場面もありますし、活用していきたいと思っています。オンラインでしかやりとりがなかったエンジニア達と飲み会を実施したら、そのあとのオンラインコミュニケーションがかなりスムーズになりました。笑)

いずれにしても、少なくともリクルートのPdMにおいては、スタート時点でのITスキルよりも新しいことを学び続ける姿勢や多くの人を巻き込んでいく推進力のほうが重要だと思います。

おまけ:リクルートに転職してよかったこと

 IT系の会社はリクルートでしか働いた経験がないので他社比較できませんが、個人的には下記のような点から、転職してよかったと思っています。

  • 常に本質&意思を問われ続ける社風なので、入社時に目先のスキルや資格の有無で評価されることはほぼありません
    (スピード感は求められるので、Eexcel、PowerPoint、SQLあたりは必要に迫られて覚えていくことにはなります)

  • 「誰が言ったか」よりも「何を言ったか」が重視されるため、ある意味新人だからと甘えてはいられませんが、異業種・異職種からの転職であっても、これまでの経験を基に価値発揮できるチャンスが常にあります

  • 同僚や上司と「将来どんなことしたい?」「いつ卒業(退職)するか考えたりしてる?」とキャリアについて自然と語り合い、高め合う環境です

  • もともと明確なキャリアプランを描くタイプではありませんでしたが、キャリアも含めて「自分や大事な人の幸せとは何か」を定期的に考えるようになったことで、以前よりも自分の人生を主体的に進められるようになったように思います

終わりに:「転職すること」と「仕事探し」を別に考えてみてはいかがでしょうか?

 私は2回転職していますが、どちらのタイミングも「現職はある程度充実していて今すぐ辞めたいわけではない」状態でした。おぼろげながら「将来こんなことがしたい」という理想に対して、現実の自分に足りていないピースを考えていたら、たまたま良い出会いがありました。
 実際に転職するかどうかは後から決めればよいので、とりあえず新しいピースを探して未経験でもいろいろな仕事と出会ってみることは、新たな人生を拓いてくれるかもしれません。
 年末年始、これまでのキャリアを振り返ってみてはいかがでしょうか。


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