脱なんとなく!改善を加速させるデータドリブンデザイン|デザナレvol.13イベントレポート
こんにちは。リクルートのプロダクトデザイン室(以下、プロデザ室と表記)SaaSデザインマネジメントグループでプロダクトマネージャーとデザインディレクターをしている上妻(こうづま)です。
今日は株式会社ビビビットさんが主催する 「教科書には載っていない、さまざまな企業の<デザインの実践知>をつなぐ場」デザナレ にて、 弊社プロデザ室から佐々木が登壇したためそのイベントレポート記事をお送りします。
今回のデザナレのイベントテーマは「脱なんとなく!改善を加速させるデータドリブンデザイン」となります(2022年5月18日にオンラインで開催されました)。
佐々木の紹介
プロダクトデザイン室 販促領域(マリッジ&ファミリー) プロダクトデザイン1G プロダクトマネージャー 佐々木 美香
はじめに
発表タイトルは THIS IS DATA DRIVEN DESIGN DOING!「大きく描いた理想の未来」を「絵に描いた餅」で終わらせないための心得 です。
ゼクシィのプロダクトマネージャーとして活躍している佐々木自身の「定量データと向き合いながらゼクシィアプリのデザインリニューアルをした経験」からのナレッジシェアです。
「場当たり的な改善の積み重ねばかりになっていて、未来の姿のイメージがついてない」「プロダクトの理想像を思い描くことはできるが、妄想で終わってしまう。実現のしかたがわからない。」と言った方に是非見ていただきたい内容となっています。
アプリのデザインリニューアルプロジェクトを推進した2つのSTEP
背景
これまでの積み重ねの改善ではなく、非連続・抜本的な成長を求め「ありたい未来」のアイディエーションを実施し、アプリのリニューアルを検討。
しかし、「どのアイディアも良さそうだけど...時間もコストも有限...そもそもアイディアそれぞれの筋が良いのかわからない...」といった状況に。
そんな状況を打破すべく、佐々木を中心に以下大きく2つのSTEPで、リニューアルプロジェクトを推進。
STEP1「ありたい未来」 を描いたうえで客観的な事実 (データ) を踏まえて「あるべき未来」 にする
「ありたい未来」を「あるべき未来」にするために3つの問いと、それに紐づくアクションを実施。1つずつ紹介していきます!
<1. そもそもゼクシィにいるのはどんなカスタマーなのか?>
マーケット定量調査やログ分析、カスタマー属性分布など網羅的な観点から、「ありたい未来」の解像度を高めた後に、カスタマーのセグメンテーションを設計。
<2. そのカスタマーにとって、どんなプロダクト課題があるのか?>
設計したカスタマーセグメントに対し、セグメント別行動ログ分析を行い、ボトルネックとなっているファネルを特定。
ボトルネックとなっている数値に対し、定性的な意味づけを行うことで課題を考察。
<3. どうすればその課題を解決できるか?>
1.2の問で見えてきたことを踏まえ、「ありたい未来」のアイディアを再精査。「カスタマー体験価値」を言語化し、実現すべき体験を表すコンセプトを定義。
今回のレポートを担当する上妻個人の印象として、リクルートのプロダクトデザイン組織は、データ抽出や分析に対して非常にアクティブな組織だなと感じています。 データに関するスペシャリストではない担当者でも、SQLを書いたりTableauの利用したり、さらにはそれを相互に教えあう文化が根強く、ツールの利活用を踏まえ、データを非常に身近なものとして捉えています。
仮説の体験の定義と、その体験を表す論理定義で、具体と抽象を行き来し、PDCAを回していくことは、アプリリニューアルに限らず用的なナレッジとして活用することが可能だと感じました。
STEP2「あるべき未来」 を要素分解して、ひとつひとつ検証していくことで「実現できる未来」 にする
STEP2でも、「あるべき未来」にするために3つの問いと、それに紐づくアクションを実施。1つずつ紹介していきます!
<1. 理想の未来とのGAPは何か?>
理想の未来にたどり着くためにより具体的な「明らかにすべき仮説」を抽出。
<2. どうやってそのGAPを埋めていくか?>
その後、抽出した仮説を「検証可能な単位」に分解し、改善施策のABテストを実施。
<3. もし、ABテストで負けてしまったら・・・?>
一部負けてしまった施策に関しても、まずは結果を素直に受け止めて、改めて「どのようなカスタマーに使われているか?」と深掘分析を実施。
分析によって判明した新しい知見をもとに、対象カスタマーを絞って二次改善した施策を、再度ABテストして...と数値分析・仮説アップデートしながらPDCAを回すことが重要です。
発表のまとめ
発表で取り上げられた2つのステップを再掲します。
発表後のQ&A
発表後にいただいたご質問と佐々木の回答をまとめました。
Q1
同様の課題感はあります。今回発表したリニューアルprjがその課題改善の例です。1つ1つの施策を最適化すると点の視点になってしまう。PdMチームメンバーで全員でプロダクトとしてどういう未来になりたいか構想し、情報共有や議論しながら未来から逆算して設計する。点ではなくて線になり、画面ではなくてプロダクトにとってのより良いものを考えることができます。
Q2
まずは前提として、定性と定量、どちらの分析や検討だけが大事というわけではなくて、それぞれを行き来することが重要だと思います。逆張りではないですけど、どちらかに偏りすぎていたら反対の方の情報収集を提案します。ボトムアップで「そのほうがいいよね!」という雰囲気になれる文化があります。
Q3
情緒価値やイメージ醸成を実現できた結果として、ユーザーの態度変容が起きうるものなのであれば、そのユーザーの態度変容を的確に捉えられる指標におとす、というのは方法の一つとしてあると思います。
(例:情緒価値の訴求強化の結果、より当該サービスを使い続けたい気持ちが醸成され、継続利用につながる→ 再訪率を指標化しモニタリングする、など)
とはいえ、すべてがデータ化できるわけではないですし、データ化できないものは意味がないというわけでもないと思っています。
例えばデザインコンセプトの企画やトンマナ検討などの場合は、ユーザーの一次情報とそこから導き出せる定性仮説を大事にして、意思決定しています。
Q4
必要サンプル数・期間はABテストの改善幅によっても変わるので、データチームと連携し、統計的な有意差が出たかどうかで判定を行いながら判断しています。立ち上げ直後等でユーザー数が少ないサービスの場合、有意差がなかなかつかないケースもあります。その場合はABテストにこだわりすぎることなく、定性的な考察メインで改善を進めることもあります。
Q5
はい、ご認識いただいている通り、デバイス(サイト・アプリ)問わず、基本的には同様のプロセスで実践しております。
定性的な仮説と、それに伴い仮説の裏付け解像度をあげる定量データの2つをつねに行き来しながら、高速PDCAをまわしています。
組織文化として、ABテストの結果として出てきたデータから、「これってつまり、どんなカスタマーにとって、どんな行動変容を促せていたのか/いなかったのか?」を常に考察し、それをふまえて、プロダクト価値を増幅させるために、次点何をすべきなのか?のネクストアクションを検討する、というのを大事にしています。
最後に
1.まずは、ご登壇お疲れ様でした!イベント登壇後の率直なご感想を伺っても良いでしょうか?
めちゃくちゃ緊張しましたが、とても楽しかったです!ご参加いただいた皆様、ありがとうございました!
2.リクルートのプロダクトデザイン室のプロダクトマネージャーとしてのやりがいは何ですか?
「プロダクトを通じて、価値を問い続けられる」ことですね。
絶対的な「正解」がないからこそ、ユーザーは何に困っているのか?どんな新たな体験価値を創造できるか?を問い続ける。
そしてその問いに対し、データ・デザイン・エンジニアリングそれぞれのプロと協業しながら、仮説検証を繰り返していく。
これらの営みを通じて、「プロダクトを進化させる(=いまここにない、新たな価値をつくる)」ことができると思っているので、それが一番のやりがいです!
3.これからのプロダクトマネージャーを目指す、またはスキルアップを目指す皆さんにメッセージはありますか?
プロダクトマネージャーになりたい!という想いを持っている方であれば、本を読んだり今回のようなイベントに参加したりと、きっと自分なりに主体的に情報収集・学習している方が多いのではないかと思います。
なので、そんな方むけにお伝えできることがあるとすれば、「どれだけプロダクトマネージャーとして一人前になったとしても、プロダクトマネージャーひとりではプロダクトはつくれない」ということでしょうか。
共にプロダクトをつくってくれる仲間(その道のプロたち:データ、リサーチ、デザイン、エンジニアリングetc...)との協業なくして、より良いプロダクトづくりはできません。
おそらくプロジェクトマネージャーにとって何より大事なのは、そんな協業仲間たちへの「敬意と感謝」なのではないかと思います。
素敵なプロダクトマネージャーになれるように、一緒に頑張りましょう!