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#mtpcon London 2023 イベントレポート

こんにちは、プロダクトデザイン室でプロダクトマネージャー(以下、PdM)として『ゼクシィ縁結び』を担当している小林です。
今回は、昨年10月末にロンドンで行われた、#mtpcon London 2023 のイベントをレポートしようと思います!当日の雰囲気や、生成AIをはじめとしたトレンドの最前線をお伝えしていきます。


■カンファレンス概要

プロダクトマネジメントに焦点を当て、ロンドンのバービカンで開催された#mtpcon London 2023。世界の中でも主にヨーロッパのPdMが中心となって集まり、プロダクトづくりを実行していくにあたっての思考、プロダクト改善に対する成功 / 失敗への対処、キャリアパス、AI等々、幅広いトピックスについて各プロダクトを牽引するスピーカーからの共有が主体となっていたカンファレンスでした。
PdMという役職に絞ったカンファレンスは珍しく、参加者は新しい視点とアイディアを得るとともに、PdMとしてのあるべき姿について、存分に学べる場の仕立てとなっていました。

会場の様子


■Keynote Speakerのメッセージとインパクト

本レポートでは、素晴らしいプレゼンテーションの中でも、講演でのポイントが特に明瞭であった2名をピックアップし、共有します。

Nilan Peiris, Chief Product Officer at Wise

Nilan Peirisは、海外送金と多通貨口座(マルチカレンシー口座)のサービスを主として提供している Wise社にて CPOを務めている方です。
今回が2回目の登壇であったため、前回登壇(おおよそ10年前の超スタートアップ時期!)から今回までのプロダクトの進化概略を共有した後、その進化の要因を説明した素晴らしい講演でした。

Nilan Peirisは、プロダクトが10年存続し大きくスケールするためには、該当プロダクトが競合プロダクトよりも”10倍”優れている必要があり、顧客が可能だと知らなかった体験を創造し続ける必要があったと振り返っていました。具体的な事例としては、従来の送金には3〜5日かかるのに対して、Wiseは当時から即時送金を目指し、 何年にもわたる努力と銀行の「決済口座」の確保を経て、現在では送金の60%が即時送金となるまでに至っているなど、従来のサービスとは大きな違いを感じました。

特にフォーカスしていたポイントは、PdMが付加価値を生み出し、成長を促進できるような環境を作ること。リサーチの仕組みの導入、改善のスピード向上等々に対する投資を厭わず、”10倍”に見合った体験を実現できているかシビアに評価し、凄まじいスピードで改善につなげているスタンスにしびれました。

価値を追い求めつつも、顧客が気にしているのは具体的な機能よりも変化のスピード感であること、そのために何ができるかをCPOからPdM全体に強くメッセージしている組織だからこその強さを感じました。

Marc Abraham, Product Director at Backbase

Marc Abrahamは、8年にわたり複数のデジタルプロダクトをPdMとして渡り歩いている、プロダクトづくりに長けた人物です。
自身がプロダクトづくりのプロでありつつ、優れたプロダクトづくりができる際の思考プロセス、そしてプロが躍動できる組織づくりに重きをおいたプレゼンテーションが印象的でした。

終始強くメッセージングされていたのは、「効果的に失敗する体験を創出できる組織こそ強い」ということ。当初から「Why」を明確にした仮説を設計できていれば、失敗が起きた際に「学び」につながり、「学び」を最大化していくことが大きな成果や価値に直結し、無駄になることは決してないという論理です。

失敗する可能性がある全ての出来事に対し、事前の「Why」を通じた仮説設計と事後の振り返りを通じた「学び」を徹底さえしていれば、全ては成功につながるためのタッチポイントとなるため、積極的に失敗を奨励した組織づくりを行っていた Marc Abraham。自組織を担っている身としてメッセージングの仕方が特に参考になりました。

■別日開催のワークショップ形式の講義

前日に参加したワークショップで行われたのは、Strategy(戦略)を支える「Principle(原理原則)」の考え方を、参加していたPdM達の自社プロダクト事例を想定して深めていく実践的な内容でした。講師は『Product Leadership: How Top Product Managers Launch Awesome Products and Build Successful Teams』 の著者でもあり、「Product Tank」の創業者でもある Martin Erikssonです。

内容としては「The Decision Stack(意思決定における階層構造)」の理解を深めるナレッジ共有、その実践に向けてワークショップ形式で自社プロダクトに紐付けディスカッションするという形でした。

特に力点をおいて説明されていたのは「Principles」を組織インストールできているか、という観点。組織における改善行動がautomative(自動的)になされるかどうかは、企画や戦略を考える際、どういうプロセスに則り、何を明らかにするのかという具体内容、加えてプロダクト改善行動の際に基準となる行動規範(Valueと言われることも多い)の設定にかかっている、と語られていました。

自組織でも、企画をどのように作っていくかを参考にする案件フォーマット(PRD)や、意思決定を実施していく際の判断軸の明記を心がけていますが、その要諦を一層徹底せよ、というメッセージと捉えました。everything you said no is principle!と断言されていたように、 Principleが備わっていることによって、組織に属するメンバーの行動生産性が向上する点に加え、日々の改善行動に価値が伴う点が力説されていました。

Strategyを理解させ、 Principleを基準にメンバーが自動的に手を動かし頭を回し、自走できているプロダクトは成長すると考えます。Strategyを考え抜く事業は多いと思いますが、Principleに重きを置く事業はまだ多くはないのではないでしょうか。 Principle磨かれるほどメンバーは自走し、リーダーは Strategyに考えを割ける時間が増幅する。すなわち、Strategyを考え抜ける組織設計を実現するためにも、Principleの策定〜チューニングが不可欠であると実感しました。

■終わりに

カンファレンスでは、変化が大きくテクノロジーに対しても許容されやすくなった社会において、大きなトップダウンでなく、より多彩な変化にそれぞれのPdMが触れていくことの必要性を暗にメッセージしているようでした。(ワークの中でも、今の世の中にスティーブ・ジョブスはいない、と整理されていました笑)

さらにワークショップ~当日の基調講演を通じ、プロダクトの具体内容や提供価値の共有ではなく、下支えする組織設計や在籍するPdMたちの思想をどう設計するか、にとても重きが置かれていた印象を受けました。

個人個人が自走して価値検証を行ったり、改善を加えることで過去に類を見ないスピード感を実現できるなど、「ボトムアップで良質な改善を実現していく組織たれ!」というメッセージも発信されていたと思います。そのためにも、PdM全体に対して基本的な思想を揃えるための”Principle”の考え方が大事であるというワークショップにつなげたのかもしれませんね。
総じて、プロダクト組織を強くしていくために大事な観点が散りばめられていた素晴らしいカンファレンスでした!

■ロンドンのカンファレンスに参加してみて

カンファレンス参加として数日のみの滞在でしたが、ロンドンの街は歴史があり活気に溢れ、何より街全体がおしゃれだったなぁと感じました。特に、カンファレンスにいきたいと声をあげれば参加させてもらえる環境にも感謝したいと思います。

発電所をリメイクして作ったショッピングモールはおしゃれ


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