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プロデザ!BYリクルートvol.10「経験を深く、広く、早く。プロダクトマネージャーの成長を加速する3つの仕組み」



 

 
リクルートのプロダクト制作におけるナレッジをシェアするウェビナー「プロデザ!BYリクルート」。第10回目となる今回のテーマは「経験を深く、広く、早く。プロダクトマネージャーの成長を加速する3つの仕組み」。
 
プロダクトマネージャー(以下、PdM)の役割は、さまざまな手を尽くしプロダクトの成長に貢献すること。では、PdM自身の成長を促すには、どのようなやり方が考えられるのでしょうか?
 
今回はリクルート プロダクトデザイン室のトップとして組織強化に取り組む戸田洋平が、PdMの成長を加速させる3つの仕組みを紹介します。
 


※2023年4月18日に開催したオンラインイベント「プロデザ!BYリクルートvol.10 経験を深く、広く、早く。プロダクトマネージャーの成長を加速する3つの仕組み」から内容の一部を抜粋・編集しています。
 

PdM自身の成長を促す、リクルートの仕組みづくり


 
戸田:リクルートプロダクトデザイン室の戸田洋平と申します。本日は「プロダクトマネージャーの成長を加速する3つの仕組み」と題しまして、お話させていただきます。

戸田洋平(とだ・ようへい)。株式会社リクルート プロダクトデザイン室 室長。大学院卒業後、エンジニア、マーケティング全般のコンサルタントに従事。2007年にリクルート入社。HRや住まい、旅行、飲食など、さまざまな領域でUXディレクター、データ基盤開発、新規事業開発に従事。現在はプロダクトマネージャーが集まるプロダクトデザイン室の室長として、組織作りや組織強化に取り組んでいる。 


そもそも、PdMとはどんな存在なのか。最近は「プロダクトの成長のためなら何でもする“知的総合格闘家”」などとも言われています。つまり、プロダクトを成長させるスキルに長けた存在なわけですが、一方で「PdM自身はどうやって成長すればいいか分からない」という人も多いのではないでしょうか。 本日はこの問いに対して、我々がPdMの成長を促すために取り組んできた「仕組みづくり」をお伝えしたいと思います。 


 
PdM成長のための仕組みづくりにあたり、私たちはまず「イケてるPdM像」について考えることから始めました。それがこちらです。
 
「どんなプロダクトでも、どんな難易度の問題でも、ゴールを定め(WHY/WHAT)、解決方法をデザインし(HOW)、最速でプロダクトを成功に導くことができる」
 
ただ、当たり前ですが、一足飛びにこうした理想像にたどり着くことはできません。そこへ到るには、一つひとつ経験を積み上げて成長していくしかない。自ら手を動かし、意思決定し、成功・失敗を通して感覚を養っていった先に、さまざまな影響を考慮しながら「最速でプロダクトを成功に導くための」意思決定が可能になるのではないでしょうか。
 
ただ、その成長を加速させるために、我々マネジメント側ができることもあるはずです。それが、今回お話する「プロダクトマネージャーの成長を加速する3つの仕組み」をつくることでした。
 
仕組みの具体的な中身について紹介する前に、PdMの成長を加速させるうえでの「経験の重要性」について、もう少し詳しくお話したいと思います。
 

 
上の図解のように、PdMの経験には「プロダクト経験」と「問題難易度」という重要な2つの軸があります。私たちはこの2つの軸をともに伸ばし、“経験の面積”を広げていくことがPdMの成長を加速させると考えました。
 
つまり、より多くの種類のプロダクトで経験を積み、より難易度の高い問題にトライしていける仕組みを、いかに我々マネジメント側が用意してあげられるか。そうやって、PdMとしての経験をいかにマネジメントしてあげられるかが重要なのではないかと。
 


具体的に言うと、上記図解のように
 
「経験を深める」
「経験を広げる」
「経験を早める」
 
という3つに分解し、それぞれの方向に対して適切な仕組みを用意する。これにより、PdMとしての経験をうまくマネジメントできるのではないかと考えました。
 

PdMの「経験を深める」仕組み


 
というわけで、ここからはPdMの「経験を深める」「経験を広げる」「経験を早める」ための、それぞれの仕組みについて詳しく紹介していきます。
 

 
まずは1つ目の「経験を深める仕組み」について説明します。
 
リクルートには200を超えるプロダクトがあり、それぞれ開発規模やPdMに求められるスキル、プロジェクトの難易度は異なります。当然、似たようなプロダクトや難易度の低い案件にばかり携わっていてもメンバーの成長にはつながりません。重要なのは、その人の経験や成長スピードに合わせて案件の難易度レベルを上げ、PdMとしての経験を深めていくことです。
 
そこで、私たちはまず、「難易度(=得られる経験の深さ)を測るモノサシ」をつくるところから始めました。
 


具体的には、案件の難易度を定義する「難易度テーブル」を作成し、経験の深さを測るモノサシとして活用することにしました。上記スライドのように、難易度を構成する軸を6つに分類し、それぞれの難易度レベルを設定したのです。
 


このように細かく難易度を分類したことで、PdM一人ひとりが「これまでどんなレベルの案件を経験してきたのか」、「どんな経験が不足していて、(それを埋めるためには)次にどの案件にアサインすればいいのか」といったことが可視化され、経験の深さをマネジメントできるようになりました。
 
<視聴者からの質問>
 
Q:「課題の深さ」や「難易度の捉え方」は人によってばらつくかと思いますが、ここの決定はある程度トップダウンで行われているのでしょうか? また、その際の難易度決定の基準も伺いたいです。
 
戸田:難易度レベルについては、期ごとに見直しをおこなっています。トップダウンではなく、現場のメンバーと日々すり合わせながらチューニングしていくようなイメージですね。案件は生き物で、ちょっとしたことで難易度は変わっていきます。「これはレベル2に設定していたけど、実際には3に近いかも」なんてことがザラにある。そうしたすり合わせを全案件で行い、みんなでモノサシをつくっていくことが大事だと考えています。
 

PdMの「経験を広げる」仕組み


 


戸田:次に、2つ目の「経験を広げる」仕組みについて紹介します。
 
先ほどは「難易度(=深さ)」の話をしましたが、PdMはさまざまな領域を経験して「視点」を増やすことも大事です。視点が増えれば、そのぶん引き出しも広がり、それぞれの特性に合わせたよりよいプロダクトをつくることができるようになるのではないでしょうか。
 
 
「経験を広げる」仕組みをお話する前に、複数の領域で経験を積むことの意義について、もう少し詳しく説明したいと思います。

上記スライドは、ECやレストラン予約といった「日常利用型」のプロダクトと、住まい探しや結婚式場探しといった「ライフイベント型」のプロダクト、それぞれに対しPdMとして必要な観点の違いをまとめたものです。
 
両者は同じtoCのプロダクトですが、「日常利用型」は年に何度もアクションが発生し、「ライフイベント型」は一生のうち1〜2回程度しか発生しません。当然、ユーザーの意思決定の習熟度もまるで異なるため、PdMとしてはそれぞれのプロダクトに合わせた情報量のバランスや利用者の動かし方を考えなくてはいけません。この視点の違いは、両方を経験していないと気付くことすら難しいと思います。
 
では、実際に私たちがどのようにしてPdMの経験を広げているのか。
とあるPdMのキャリアの事例をもとに説明します。
 


上記スライドのように、4年目まで旅行領域の『じゃらん』で、案件の難易度を上げながら経験を積んだPdMがいたとしましょう。
 
このメンバーを5年目にどこへアサインするか(どんな経験をさせるか)考えた時に、もちろん同じ『じゃらん』のなかでより難易度の高いレベル3の案件にチャレンジしてもらう手もあると思います。ただ、次の難易度に進んでもらいたくても、同じ領域でレベル3に値する案件をタイミングよく用意できるとは限りません。その場合は、旅行領域以外にも視野を広げ、たとえば全く違う住まい領域の『SUUMO』にレベル3相当の案件があれば、そこにチャレンジしてもらう。そうすることで、難易度を上げて経験を深める機会を与えつつ、違う領域を経験して視点の違いを獲得することにもつながるわけです。
 
このように、PdMをプロジェクトにアサインする際には、「メンバーが成長できる機会」を提供することを常に意識しています。
 
とはいえ、もちろん直属の上司や人事だけで異動を決めているわけではなく、最も大切にしているのは本人の意思です。日常的にマネージャーとPdMが1on1で業務やキャリアについて対話する機会を設け、現在のCAN(できること)やWILL(どうなりたいか)を確認し合うようにしています。
 
その上で、半年に1度の人材開発会議で一人ひとりのメンバーの中長期にわたる育成プランを議論していくんです。そして、PdM体制会議の場で、各PdMの育成プランやどんな機会を提供するべきかを踏まえて次期体制を決定し、具体的なミッションをマネージャーと本人がすり合わせていくという流れですね。


 
このように、本人の意思を加味しながら「機会マッチング」の仕組みを回し、メンバーの経験の広がりをマネジメントしています。
 
<視聴者からの質問>
 
Q:PdMのチェンジによって、チームとしての熱量や意思決定の質が落ちたりはしないのでしょうか?
 
戸田:おっしゃる通り、たとえばチームに10人のPdMがいたとして、そのうち半分を一気に異動させてしまえば当然、品質に影響は出てくるでしょう。そのため、徐々に変えていく必要があります。
ただ、今いるメンバーが抜けたとしても、そのぶん新しく入ってきたPdMがこれまでのチームにはなかった観点や切り口を注入してくれます。質が落ちるというより、違う方向に質が伸びていくイメージですね。
また、メンバーの入れ替わりによって熱量が落ちるのではないか? ということですが、リクルートには基本的にパッションがみなぎっている人が多いため、新しいPdMが入ってきてもそこは変わらないのかなと。むしろ、チームに新たなパーソナリティが加わることで、熱量が高まるケースも多いように感じます。
 
Q:PdMが多様な領域を経験することの重要性は理解できましたが、一般的には「技術に強いPdM」や「UXリサーチに強いPdM」といった、何かしらの強みを持ったPdMが重宝されることが多いと思います。リクルートではどうでしょうか?
 
戸田:まさに、チーム内に多様な強みを持つPdMが入り乱れている状態が理想です。同じ案件を担当していても、方々からまるで違うアイデアが出てくるようなチームこそ、良いプロダクトを生み出せるのではないでしょうか。
 
その点、リクルートにはさまざまな強みを持つ人材が集まっています。中途入社組は元エンジニアやUXリサーチの経験者など、本当に多種多様な背景を持っていますし、新卒入社組も各々が伸ばしたい分野を意識しながら働いていて、「PdM×データサイエンス」「PdM×リサーチ」など、何かしらの尖った専門性を持っている人が多いですね。
 
 

PdMの「経験を早める」仕組み


 


戸田:最後に紹介するのは「経験を早める」仕組みについてです。経験を早めるために最も有効なのは、やはり組織のナレッジをうまく活用することです。
 
自分で経験できる領域には限界がありますが、他者の経験を追体験することで「経験を広げる早さ」を上げられます。また、難易度の高い業務の度に自己学習していたのでは非効率ですが、自社にすぐ使える型化された知識があれば「経験を深める早さ」を上げることができるでしょう。
 


そこで、プロダクトデザイン室では、ナレッジ活用のシーンに合わせて4つの施策を用意しています。それぞれについて、簡単にご紹介します。
 


1つ目のナレッジシェアの施策は「UXDB!」というプロダクトグロース案件のデータベースです。プロダクトデザイン室がこれまでに実施した案件の「背景」「目的」「要件」「結果」が一元的に蓄積されていて、さまざまなナレッジを簡単に検索できるようになっています。2023年の3月末時点でナレッジの数は1400件を超えていて、今も増え続けている状況ですね。


2つ目の施策は「UXshare!」という、ライブ形式のナレッジシェアイベントです。成功事例だけでなく、失敗の生々しいプロセスも共有することで、他領域の追体験をしてもらう狙いがあります。こちらは月1回ほどのペースで開催していて、毎回100人以上が参加してくれています。

 
3つ目の施策は「UX BOOTCAMP Plus!」という、オンライン研修動画コンテンツです。リクルートの秘伝のスキルといいますが、先人たちの知恵を型化したもので、メンバーからは「リクルートの業務に最適化されたナレッジを教えてもらえるため、下手な参考書を見るよりも実践的で、すぐに活用できる」と、非常に高評価を得ています。
 


4つ目の施策は「UXchannel!」という、領域を超えて気軽に質問できるオンラインコミュニティです。「グロース」「商品企画」「リサーチ」といったテーマ別にチャンネルを用意していて、Q&Aの投稿や閲覧が可能になっています。プロダクトデザイン室以外も含めて常時1000人以上がチャンネルに接続し、年間100件規模のQ&Aが交わされていて、日々の現場でのスピーディーな課題解決につながっています。
 


これら4つのナレッジシェアの仕組みをPdMに活用してもらい、「成長を早める」ことを実現しています。また、こうしたナレッジシェアの仕組みは、新人や中途入社の方々に早期に仕事のやり方をキャッチアップしてもらうという点でも、大いに役立っています。
 
<視聴者からの質問>
Q:チーム間でPdMが入れ替わることを考えると、事業ごとのナレッジ共有が重要になると思います。そこはどのように工夫されていますか?
 
戸田:まず、我々は事業が属人化しないよう、基本的に情報をオープンにしています。先ほど紹介した「UXDB!」のように各チームの施策における過去のやりとりや意思決定なども全て検索できる施策もありますし、別領域から新しくチームに加わった人がすぐにコミットできるようなベースの知識も全てストックされています。つまり、チーム間で人が入れ替わることを前提とした仕組みがつくられているんです。
 


最後に、お話しした内容のまとめです。今回は「知的総合格闘家であるPdMはどうやって成長すればいいか?」という問いに対し、「経験の【深さ】【広さ】【早さ】を意識すること」が成長につながるということで、我々の具体的な取り組みをご紹介いたしました。
 
もちろん、我々のやり方が全てではありませんが、「経験を深める=案件の難易度を徐々に上げていく」「経験を広げる=さまざまな領域のプロダクトを経験する」「経験を早める=他者の経験や情報に積極的に触れていく」といったことは、PdMとしての成長に確実につながるはず。私たちの取り組みが、何かしらの参考になれば幸いです。
 

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