プロダクト開発のエキスパートとして、自律的にキャリアを切り拓く
入社以来、一貫してプロダクト開発にこだわり続け、現在はデータを軸に新しいプロダクトを立ち上げるエキスパートとしてキャリアを築いている。「リクルートは、自分の意志でキャリアを切り拓いていける会社」と語る彼は、自身のどんな思いをキャリアへ反映させてきたのだろうか?
データやデジタルの力で飲食店を支援
――植田さんは2016年にリクルートライフスタイル(現リクルート)に転職されたとのことですが、前職ではどのようなお仕事を?
前職は、新卒で入社したIT系コンサルファームです。大企業向けのITプロジェクトに携わり、コンサルタントとしてデータ整備やインターフェースの設計を担当していました。たとえば、鉄道会社の会計システムの刷新プロジェクトで、顧客の帳票をもとに情報分解して取引ケースのパターンデータを作成したり、不動産業向けのシステムを開発したり。もともとITやデータの領域で経験を積みたいと思って選んだ会社だったので、忙しいながらも充実した毎日でしたね。
――では、なぜリクルートへ転職しようと考えたのでしょうか?
POSレジアプリ『Airレジ』のサービスに携わりたかったからです。これからは中小企業向けのSaaSビジネスが面白そうだなと考えていたところ、『Airレジ』にたどりつきました。このプロダクトならこれまでのキャリアを活かせると同時に、僕自身が仕事で実現したい個人的なテーマにも合致していると思ったんです。
――個人的なテーマとは、なんですか?
簡単に言えば「紙からデータへの移行」です。例えば、飲食業界は紙の伝票でオーダーをとるなど、業務効率化が進んでいないところがあります。そのぶんデジタルで改善できる点や、データを活用することで支援できる余地は大きいのではないかと考えました。その点、デジタルやデータを駆使して飲食店などの店舗運営を支援するリクルートのプロダクトは、まさに僕がやりたいことだったんです。
飲食領域からHR領域へ。変わらない問題解決への想い
――リクルート入社後は希望通り、『Airレジ』のプロダクト開発に携わることになったそうですね。具体的に、どのような役割を担っていたのでしょうか?
店員さんが紙の伝票ではなくスマホでオーダーを取れる飲食店向けオーダーシステム『Airレジ オーダー』を担当していました。僕の役割は簡単に言うと、このプロダクトをさらに有効活用するための施策を考えることです。
そのために、当初は実験のようなことばかりしていましたね。例えば、プロダクトを導入してくださっている飲食店に常駐させてもらい、使い方やオペレーションのコンサルをしながら導入効果を検証していた時期もあります。『Airレジ オーダー』で収集できるデータを活用して、「このドリンクを頼んだ人には、このフードをおすすめすると客単価が上がりやすいのでは?」というように、仮説を検証していました。これは誰に言われたわけでもなく、自分の意思で勝手にやっていたことなんです。
――自発的な取り組みだったとは。その原動力はどこから湧いてくるのでしょうか?
先ほどもお話しした通り、やはりデータの力で飲食店を支援したいという思いが一つ。また、個人店や規模の小さい企業のポテンシャルを、データの力で最大限にまで引き出したいという思いもありました。データを有効活用すれば、きっと大型チェーン店とだって渡り合えるはずです。僕自身、子供のころから「ジャイアントキリング(格上の相手から勝利をもぎ取る、大番狂わせ)」のストーリーが好きで、それが個人店や規模の小さい企業を応援したいというモチベーションにつながっているのかもしれません。
――現在は『Airレジ オーダー』を離れ、HR領域のプロダクト開発を担当されているとのことですが、データで人を支援したいという思いは変わっていませんか?
そうですね。変わっていませんし、やはり自分はプロダクトの開発に携わりたいという思いも一貫して持ち続けています。『Airレジ オーダー』から離れたのも、プロダクトが開発からグロースのフェーズに移って、自分の役割は果たしたと感じたからです。そんな時にHR領域で新しいプロジェクトがローンチされるという情報を耳にして、やりたいと手を挙げました。
“Will Can Must”でキャリアパスをつくりあげる
――植田さんのお話を伺っていると、自発的にプロダクト開発に取り組まれているように感じます。となるとキャリアパスについても能動的に、自ら歩むべき道を選んでこられたのでしょうか?
そうですね。リクルートはボトムアップのカルチャーが強く、プロダクト開発に関してもメンバーそれぞれが個人事業主みたいな動き方をします。それはキャリアパスについても同じで、「このポジションをやりなさい」と上から降ってくることはあまりないように感じます。一人ひとりの主体的な思いをもとに、各々の意思でキャリアを切り拓いていくことを推奨する会社ですね。
それを象徴しているのが、「Will Can Mustシート(WCMシート)」という目標管理シートの活用です。本人が実現したいこと(Will)、活かしたい強みや克服したい課題(Can)、能力開発につながるミッション(Must)の項目をまとめて、上司との面談ですり合わせます。「これとこれを遂行できたから、このポジションを渡そう」ではなく、きちんとWillにつながっているのかを、きめ細かく検討することを大事にしているんです。
――そうやって個々のWillを叶えることが、結果的に企業の成長にも紐づく、という考えですよね。
はい。とはいえ、もちろん企業である以上、個人が組織の利益と関係ないWillで自由に動いていたらダメですよね。ただ、その点についてはMVPの表彰やキックオフでのメッセージなど、積極的にビジョンの共有をしているので、大きく外れることはないのかなと。リクルートのビジョンを個々で受け止めて、咀嚼して、あとは各々が勝手に頑張る、みたいな感じですかね。
目指すキャリアに“正解”はない
――植田さんの肩書きは「プロダクトマネージャー」ですが、その先のキャリアパスは一律ではなく、それぞれのプランや職能に応じて様々な方向性があるようですね。
はい。プロダクトだけではなく事業全体に責任を持つ「事業責任者」、組織や人材に責任を持つ「グループマネージャー」、そして、プロダクトマネージャーとしての専門性を磨いていく「専門家」など、さまざまなキャリアパスがあります。
――その中でいうと、植田さんは「専門家」キャリアになりますね。
そうですね。データを軸に新しいプロダクトを立ち上げるエキスパートという位置づけですね。
――既存のポストに当てはめるのではなく、個々の思いを軸に自ら役割をつくっていけるのは、とてもユニークですね。
もちろん、プロダクトマネージャーという役割を与えられている以上、メンバーをまとめる責任や果たすべき職務はあります。しかし、「自分がどんなプロダクトマネージャーを目指すのか、その先にどんな仕事をしていきたいか」という部分は個々に委ねられています。
以前、自分自身のキャリアパスを考えるにあたって、「そもそもプロダクトマネージャーって何だろう」と、言語化を試みたことがあるんです。人によって解釈は異なると思いますが、僕は「問題を発見してプロダクトを作り(製品発見)、市場に投入(市場投入)することで、顧客の問題解決と事業目標達成の双方のバランスをとりながら、定義したプロダクトビジョンを実現することである」と捉えました。そして、そのアプローチは人によってさまざまで、例えば僕の場合はデータを軸にしていますが、UI/UXを切り口にプロダクトを開発する人もいます。どれが正解ということはないんです。
――つまり、プロダクトマネージャーに最も必要なのは、どんなスキルや職能があるかということよりも、問題解決にかける思いの強さであると。
僕はそう思います。実際、僕以外のプロダクトマネージャーや一緒に働くメンバーたちも、そうした思いを誰よりも強く持っている人たちばかりです。だからこそ、同じビジョンを共有して働ける安心感があるんですよね。プロダクトを開発する上では、時に耳の痛い意見を言い合わなければいけない局面もありますが、それは「このプロダクトをよくしたい」という思いからの指摘であることをみんなが理解している。だから、遠慮なく発言できるんです。
リクルートには、プロダクトを立ち上げるときに共感して動いてくれる仲間がいて、コミュニケーションを取りやすい雰囲気があります。その中で日々プロダクトに向き合っていくことで、自分の手で自分らしいキャリアパスを切り拓いていけるのではないかと思います。