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Research Conference 2023 参加レポート

こんにちは。リクルートプロダクトデザイン室の海老田です。

今回は当社九段下オフィスにて行われました、Research Conference 2023の参加レポートを、弊社から参加したメンバーでまとめました。


Research Conferenceとは

Research Conferenceとは、リサーチをテーマとした日本発のカンファレンスです。
https://researchconf.jp/

より良いサービスづくりの土壌を育むために、デザインリサーチやUXリサーチの実践知を共有し、リサーチの価値や可能性を広く伝えることを目的としています。

今年度のカンファレンスは2021年に新たに開設されたリクルートの九段下オフィスのイベントスペース「パノラマ」にて開催。製薬企業からNPOに至るまで、多種多様な企業のUXリサーチャー、デザインリサーチャーによる19のセッションが催されました。

撮影:RESEARCH Conference スタッフ

今回の記事では、カンファレンスに参加した弊社プロダクトマネージャーによる学びを、一部セッションをピックアップして発信していきます。

SanSan株式会社:ゼロから始まったリサーチ組織が、なぜたった1年でプロダクトの意思決定を支援する組織になれたのか

『ゼクシィ』にてオペレーションデザインを担当している黒田です。このセッションでは、Sansan株式会社のUXリサーチャーである大泊杏奈氏、倉内香織里氏により「UXリサーチセンター」の新規立ち上げ、組織に対するゼロからのリサーチ文化の浸透、リサーチャーが企画、開発現場においてリサーチが必要不可欠な存在になるまでの方法論が語られました。

センターの立ち上げ時点の現場は、リサーチャーの役割すら知られていない程リサーチという文化は浸透していない状況だったそうです。セッションではそのような状態を、以下のような手法を用いて打開していったと紹介されました。

  1. 横展開・専門性を見越し独立組織として立ち上げ

  2. 仕組化により必要不可欠なポジションとして確立

その結果、プロダクトの意思決定を支援できる組織にまで成長したそうです。詳細については登壇者により執筆されたnoteをご参照ください。

上記1,2の手法は今後の発展にも期待ができた点と、リクルートのプロダクトデザイン室にも共通する部分があり非常に興味深かったです。

リクルートのプロダクトデザイン室はSansan株式会社同様、プロダクト縛りでなく職種ごとで1つの組織となっています。そのため汎用性のある成功事例は次々にプロダクトに関係なく横展開され、自身の担当プロダクトだけでなくリクルートの全商品の成長に寄与できる環境が整っています。施策考案時に重視されるのは「担当プロダクトにとって良い施策か」よりも「汎用性があるか」。汎用性のある施策を検討することの方が難易度が高く、会社への貢献度も大きいため、より高精度のものができあがります。結果、自身の専門性もより磨かれ、市場価値の高い人材に成長できると日々業務へのやりがいを感じています。

atama plus株式会社:ユーザーに価値を届け続けるためのアジャイル開発とUXリサーチ

HR領域にてデザインマネジメント業務を担当している竹内です。このセッションでは、atama plus株式会社のUXデザイナーである伊藤氏とスクラムマスターである河口氏のお二人から、デュアルトラックアジャイルとUXリサーチを組み合わせたプロダクト開発の事例をご紹介いただきました。

デュアルトラックアジャイルとは、アジャイル開発における戦術の一つで、開発の体制を課題発見やソリューション探索を担当するDiscoverトラックと、UI検討や機能実装、リリースを担当するDeliverトラックの2つに分け、課題検証とプロダクト実装をバランスよく組み合わせて進行する手法の一つです。atama plus社では創業時から不確実性の高いテーマを扱うために、この手法を使ってプロダクト開発に取り組んできました。

具体的な分掌のイメージは、Discoverトラックが「UXリサーチからプロトタイピング、リリース時のMVPラインの決定まで」、Deliverトラックが「以降の開発からリリースまで」を担当。発表内容でユニークだったのが「DiscoverとDeliverを2つのチームに分けるのではなく、状況に応じてバランスよく組み合わせる」という部分です。WF開発のようにプロセスで分断するのではなく、プロダクトの状況に応じて柔軟に役割や分担を変えていく点が非常にユニークだと思いました。

組織が大きくなってくると、どうしても検証からプロダクト実装までが重厚長大になりがちですが、デュアルトラックアジャイルのような手法は「幅広い環境で高速かつ柔軟に、検証ベースでの開発を実現できる良い手法」であると、このセッションを通じて感じました。その他にも、リサーチまでのスピード感やインタビュー時の工夫など、学びの多いセッションとなっており、ぜひ自分のチームでもこれらの取り組みを参考にしていきたいです。

株式会社グッドパッチ:探索型リサーチで広げるリサーチの価値

SaaS領域にて『Airインボイス』のUI/UXデザインを担当している栗原です。このセッションでは、株式会社グッドパッチのデザインリサーチャーである米田真依氏から、深く分厚いヒントを増やし、チームでの仮説構築とアクション設計を可能にする探索型リサーチの方法論が語られました。

【具体的な探索型リサーチの方法】
1.Goal(着地点を明確にする)
→プロジェクトで到達する着地点・実現することを明らかにする
2.Untangle(既知と未知を整理する)
→現状認識と過去リサーチや経験等に基づく既知の可視化を行う
3.Insight(洞察を深く得る)
→問いの設定・リサーチ、設計・実施・分析を行う
4.Direction(方向性を決める)
→洞察を基に着地点までのアクションを決める
5.Entrust(信じて託す)
→洞察、思考プロセスとアクション案を記録に残し伝える

上記プロセスの中でも「2.Untangle(既知と未知を整理する)」について興味深いプロセスがありました。具体的なステップは以下の通りです。

1.フェーズの可視化
検証型/探索型のどちらをリサーチするべきかフェーズを見極め決定する
2.既知の可視化
何がわかっていて何がわかっていないのかを明らかにする

私も担当プロダクトのフェーズの影響で、現在リサーチをする機会が多いです。今まではUntangle(既知と未知を整理する)のプロセスを言語化しないまま行っていたので、今回のインプットを経て、本プロセスの言語化や目的に沿った手段としてのリサーチの重要性を再度認識することができました。

freee株式会社:freeeのデザインリサーチのこれまでとこれから

SaaS領域にてプロダクトマネージャーを担当している池谷です。このセッションでは、freee株式会社の粟村倫久氏から自社でのリサーチの取り組みが語られました。

freee株式会社では、これまでPdMのドメイン知識に基づいて、プロダクトアウトでサービス企画が行われることが多かったそうです。しかし、事業成長を促すためには市場やユーザーをより理解する必要があり、リサーチチームが立ち上がりました。彼らは、リサーチを誰もが実践できるようにするために、「kit」の作成(各リサーチチームメンバーの経験値を集約し、誰でも自力でリサーチを推進できるようになるための資料のfreee社内での呼称)や相談会の設置、ResearchOpsの立ち上げに取り組みました。その結果、仮説検証型のユーザーインタビューやカスタマージャーニーマップ、シナリオの作成、アンケートなどが定着していったそうです。また、業務観察によるリサーチも実践されるようになりました。

freee株式会社における組織規模の拡大や事業フェーズの変化に伴う、今後の「kit」メンテナンスやリサーチ再教育の必要性、さらにいくつかの問題点も含め、リサーチチームの将来の形について模索されていることも語られました。

私自身も、SaaSプロダクトデザインユニット内で、ユーザー理解を強化してプロダクトの価値を高めたいと考えリサーチチームを立ち上げており、freee株式会社の取り組みと状況が非常に類似しているため、今回のセッションが印象に残りました。私たちの目標は、リサーチを専門とするチームだけでなく、企画者やデザイナーが自らユーザー理解を行い、実務に反映させることです。そのために、リサーチに関するHowToを動画コンテンツにして共有したり、相談会を設置してサポートを実施しています。さらに、今期からはSaaSプロダクト担当者約20名でコミュニティを形成し、各自の担当プロダクト内でリサーチを実践し、相互にレビューしながら、日々リサーチの定着とスキルの向上に取り組んでいます。

おわりに

今回の記事では、4つのセッションをピックアップして弊社プロダクトデザイン室メンバーによるレポートと学びを発信しましたが、他にも製薬メーカーやゲーム企業、NPOやアカデミア等の様々な領域、分野におけるリサーチのエキスパートによるセッションが開催され、参加者同士での活発な議論、情報交換が行われていました。

プロダクトデザイン室では、このような国内外のイベントへのメンバーの参加や、イベント協賛、主催を通じて、積極的にUXリサーチやデザインリサーチ分野の発展、コミュニティ醸成に取り組んでいます。

今後もこういったイベントへの参加による社外との知見の交換のみならず、国内のUXリサーチやデザインリサーチ文化の発展に寄与できる自社主催イベントも開催していきますので、是非ご確認ください!

ここまでお読みいただきありがとうございました!


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