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Designship イベント参加レポート

はじめに

9/30, 10/1にDesignshipが開催されました!
Designshipは2018年から続くカンファレンスで、デザイナーのストーリー性を重視した引き込まれるようなセッションが多く、社内でも毎年話題になっています。

今年のコンセプトは「広がりすぎたデザインを、接続する。
このコンセプトの下、多様なデザイナーたちが集まり、デザインという仕事をつなぎ、議論を交わしていました。

プログラムの中では、弊社のHR領域でデザインディレクションを行う小島の「スキルと経験」に関連するプレゼンテーションも行われました。
「スキルと経験を掛け算で考えると代替が難しくなる」という話に、SNSでも共感の声をいただきました。

登壇内容はこちらからご覧いただけます。


今回は、8名の参加者による一部セッションを写真と共にレポートします。各事業で働くPdMやデザインディレクターが得た気づきを、記事を読んでくださる皆様と共有したいと思います。


Day1
StageArea

存在しないものをデザインする・AIを「デザイン」するということ
( 『Airシフト』担当 佐藤)

話者の舘山さんは、Google社で会話型AIのUI/UXデザインを担当されています。AIという前例のない新しいものをデザインするプロセスと、その中での学びを紹介されていました。
AI関連のプロダクト作りでは、技術開発のスピードがとにかく早いので、分からないことも多く、エンジニアと協働した技術的なプロトタイピングの実施など、実験的なプロセスから学ぶ割合が多い、ということが語られていました。
また、プロダクト未来像のビジョニングにおける特徴的なプロセスの紹介もありました。それは、1〜15年後の世界をクリエイティブに頭で想像し、アイディエーションするというものです。。
これからの時代は、イノベーション面の不確かさを抱えています。それは答え合わせができない時代でもあります。舘山さんは、そういった背景から、クリエイティブな発想力を持ち、アイデアを試作することが得意なデザイナーがプロダクト作りを主導するべきだと話されていました。

舘山さんの発表を聞いて、AIという未知の技術を用いたプロダクト作りにおいては、下記の3点がデザイナーに求められるスキルだと感じました。

①スピード感を持ってアイデアを発案し、試作して実験する力
新規事業のプロダクト開発全般で同様に必要なスキルですが、イノベーションの波に乗ってパイオニアになると、スピード感が通常の比ではなく求められると思いました。

②プロダクト作りを主導する力(エンジニアやその他の職種の方を巻き込む力)
プロダクトの要件を立てる際は、技術面で不確定な要素が多い状況が生じます。そのため、有識者を引き込むための交渉力や説得力が必要だと考えました。

③未来を想像する力
特にUIデザインでは、人が慣れている体験(UX)が良いとされ、既存の体験を学んで追従する考え方をする機会が多いと思います。
そのため、今までにないようなプロダクト及び体験を定義することは、通常のUIデザイナーだと慣れない思考作業であると感じました。

普段私は1→10フェーズのプロダクトでエンハンスを担当しているため、今自分がとっている動き方や鍛えているスキルとは異なる内容に思えました。しかし将来のキャリアの選択肢の一つとして考えると具体的に想像ができ、参考になるセッションでした。

行政にアクセシビリティをインストールするぞ
(『ホットペッパービューティー』担当 黒澤)

登壇者の伊敷さんは弱視の状態で生まれ、コロナ禍に差し掛かった頃には全盲になってしまい、完全に目が見えなくなりました。

元々伊敷さんは一般企業で自治体省庁や公共機関のウェブアクセシビリティの改善を行っていました。しかしデジタル庁の立ち上げに伴い、障害当事者が中に入ることでアクセシビリティを広く深く根付かせることができるのではないかという思いから入庁されたそうです。そこから携わったデジタル庁ウェブサイトでのアクセシビリティの導入プロセスや、ウェブアクセシビリティ導入ガイド作成にかけた思いを述べられていました。

この登壇を聞いて感じたことは、やはりアクセシビリティの重要性です。
私自身の前職は複合機などのオフィス製品を作るメーカーで、アクセシビリティについては厳しくチェックされていました。アクセシビリティの重要性は理解していたものの、あまり自分ごととして捉えきれていませんでした。
しかし、アクセシビリティが守られていたことで全盲になってからも自立的な生活を送ることができたという伊敷さんのエピソードを聞いて、全盲だから人の手を借りないと生活ができない、という先入観を少しでも覆すことができるのだと感じることができたお話でした。

伊敷さんが最後に、「アクセシビリティを入れるとデザインがダサくなる、制約になってしまうと言われるが、僕はそんなことはないと思っているし、並立することができると信じています」と語られていました。確かにアクセシビリティを守ろうとすると制約が多くなることは事実です。ただ、アクセシビリティを守ることでより多くの方々にサービスを提供できるのも事実です。難題に思えるかもしれませんが、デザイナーとして魅力的なデザインとアクセシビリティの両立について考えていきたいと思います。

Collaboration Area

新規事業/サービスの構想におけるデザイン
(HR領域担当 平井)

このセッションでは、新規事業立ち上げにおけるデザインの重要性に焦点を当て、多様な領域の企業4社のデザイナーが集い、議論が行われました。

結論、新規事業立ち上げにおけるデザインの重要性は
・仮説を目に見えるアウトプットに落とし、共通認識をとれるようにする(デザインの力を使って翻訳する)こと
・スピード感を持ってアウトプットを作成し、社員や顧客からいち早くフィードバックをもらえる状態をつくること
とのことでした。

新規事業立ち上げの経緯はプロダクトニーズや経営戦略であることが多く、データが十分になく仮説で進めるしかない状況も多々あります。
そんな中でも、デザインの力をもってビジョンを可視化することで共通認識をはかることができ、土台を固めた状態で早く次のステップに進むことができるため、デザインの存在は新規事業の推進に大きく寄与すると考えています。

また、新規事業となると、スピード感が大事になってきます。
初期リリースを重く作りすぎないことを意識し、時には後から方針転換する勇気も持った上での早期のアウトプットも大切なのだと感じました。

Day2
StageArea

デザインプログラムマネージャーになって気づいた「これもデザイン」
(『SUUMO』担当 沼田)

登壇されたのは、GMOペパボ株式会社 デザイン部 デザインプログラムマネージャー望月 美憂さん。
自身の業務や体験をもとに、デザインプログラムマネージャーの役割や気づきについて語られました。
デザインプログラムマネージャーの役割は、「デザイナーがクリエイティブに集中できるように、メタワークや組織内の土台作りでかかる負担を最小限に抑えること」と説明がありました。
日々の業務を通して、望月さんは「デザインは組織全体に対して掛け算のような効果を持ち、組織のケイパビリティを底上げできる」ことに気づきを得たそうです。この気づきをもとに、デザイン思考実践のためのデザイン態度を他部門にも浸透させていった実例が紹介されました。
リクルートのデザインマネジメントグループにも、望月さんのような役割をミッションとしているメンバーがいます。

横断的な土台整理や新たな仲間を集めるための広報活動など、中長期的な目線での組織づくりを実践してくれているので、私自身は安心して目の前のクリエイティブに集中できています。

デザイナー個人のスキルやケイパビリティを上げることはもちろん重要ですが、デザイナーがすべてを担うには時間が圧倒的に足りません。
Designship2023のコンセプト「広がりすぎたデザインを、接続する。」に通じる点でもありますが、業務領域が広がったデザイナーがバリューを発揮するために、デザインプログラムマネージャーという役割は今後広がりを見せていくだろうなと期待しています。

科学者とデザイナーの出会いから生まれるもの
(『Airレジ』担当 大河原)

デザインエンジニア/東京大学特別教授である山中俊治先生による、科学者とデザイナーの協働によって生まれるモノづくりについてのキーノートセッションが行われました。
客観性を重要視する科学者と、主観を重要視するデザイナー、まったく異なる視点を持つ両者がコラボレーションすることで、創造的な作品が生まれると語られました。

ここでは、サイボーグをモチーフとした、装着者が制御可能なロボットアーム「自在肢」、電動モビリティとコミュニケーションロボットの機能を兼ね備えた「Canguro」、義肢を美しく設計した「美しい義足」など、未来を感じさせる数多くのプロダクトが紹介されました。

現在私が携わっているのはハードウェアではなくソフトウェアですが、山中先生の数々のコラボレーションの事例は、社内での協働にも活かせると感じました。
特に印象的だったのは「感性と論理の接点を探す」というお話で、そのために重要だと感じたのは、デザイナーと科学者が互いの考えを尊重しながら対話すること。山中先生の言葉の端々から、科学者への敬意が感じられました。

社内では、データ、デザイン、エンジニアリング、セールスなど多様なプロフェッショナルによって業務が遂行されています。組織によって言語や考え方が異なることもあり、コミュニケーションが難しい場面もあります。しかし、互いのこだわりを守りつつ対話しながら協働することで、より良いものづくりが実現するのではないでしょうか。

私が所属するカスタマーサポート部は、「Air ビジネスツールズ」(『Air レジ』、『Air ウェイト』など)の領域の中でも数少ないプロダクト横断の組織です。一つのプロダクトに閉じずに協働を起こせる立ち位置として、対話を実践し続けようと思います。

Collaboration Area

デザインリサーチの重要性
(『ゼクシィ オンライン招待状』 川端)

このディスカッションでは、企業でデザインリサーチを行う上での課題と、それをどう乗り越えるのかということについて、日産自動車株式会社、株式会社エス・エム・エス、株式会社リクルートそれぞれの企業の視点から語られました。
一つ目の大きな話題としては「リサーチ専任のリサーチャーの存在価値とは何か?どのように評価するのか?」という問いがあがりました。
リクルートからは、全員がリサーチスキルを身につける、民営化的な動きが行われている一方で、特定の事業に属さず、中立的な立場でバイアスなくリサーチできることの重要性について話がありました。

プロダクトマネージャーである私自身も自分でリサーチをしたり、より抽象的な問いを解く場合は専任リサーチャーに依頼したりすることがあります。ある程度のリサーチスキルが身につけられる環境にいることで自分自身が行うリサーチの質も上がりますし、理解を深めておくことで、専任リサーチャーとより良い協働ができると感じています。

二つ目は、日頃のリサーチの取り組みにおける重要なポイントについて。
エンドユーザーだけのインタビューにとどまらず、そのユーザーに関わる周辺のステークホルダーや、サービスを実際に利用する環境にも目を向けていくことの大切さが話されました。
定性調査の手法としては、「エスノグラフィー」と言われる方法があるかと思いますが、やるぞ、と決めて簡単にできるものではありません。
多くの人が忙しく働く現場に、リサーチャーが乗り込む時の周囲への配慮など、苦慮するポイントについても、確かに…確かに…と頷きながら聞いていました。
私が担当している『ゼクシィ オンライン招待状』では、「クライアント」「カップル」「ゲスト」と三つのステークホルダーが関わってきます。
この三者が結婚式前・中・後にとる行動、その真意をインタビューだけで理解するのは非常に難しいと自分自身も感じており、実際の結婚式の場に入って調査させていただく、まさにエスノグラフィの実施を検討していたところでした。このディスカッションを聞いて改めてその必要性を実感しましたし、現場への配慮を念頭におくべきである、という点は非常に参考になりました。

新規事業サービスにおけるデザインの魅力とその効果
(『SUUMO』 田中)

登壇3社(株式会社モリサワ/株式会社タイミー/チームラボ株式会社)が、新規事業やサービスをリリースする際に取り組んでいるコミュニケーションデザインのプロセス、その成功事例や課題について議論されました。
プロダクトやサービスの魅力を伝えるデザインに焦点をあて、
①新規事業・サービスのデザイン戦略
②デザイン組織の課題と協働
③ブランドとデザインの関係性
上記3つのテーマに沿ってデザインがどのようにビジネスの成功に寄与しているのかを深堀りしていきました。

チームラボ株式会社 堺さんがセッション中によく仰っていた「積み重ね」というキーワードが特に印象に残っています。
組織デザインやブランディングにおいて、カルチャーやミッションなどを言語化するべきか、する場合はどう整理していくのか、といった課題設定の有無は企業によって差があったものの、
ルールをかっちり決めずとも一つのサービスやプロダクトを多様なメンバーで共に創り上げていくこと、そうした過去からの積み重ねが「〇〇らしさ」になっていることは3社共通のポイントでした。

企業や事業組織が同じベクトルに向かって協働するとき、ミッションやバリュー(最近だとパーパスなども)を言語化することは「必要なこと」なのかと思っていたのですが、
今回のように言語化を必ずしも必要としない成功事例は、今後のプロダクトやサービス開発を進めるにあたり、非常に参考になりましたし新たな気付きにもつながりました。

企業出展ブース

Visual Thinking
(HR領域 齋藤)

VISUAL THINKING PARTNERである株式会社沼野組の「Visual Thinking」のブースでは、「デザイナーの星座を描こう」という企画が行われました。
具体的な手順は以下の通りです。

STEP1:デザインの星を探そう―私にとっての「デザイン」を42個の項目から選択します
STEP2:星を繋ごう―自分が選択した「デザイン」という言葉を、タップして繋ぎます
STEP3:星に名前をつけてみよう―自分で、星座(言葉と言葉のつながり)に名前をつけてみます
STEP4:完成した星座は、星空データとして会場に投影されます―自分の星座と、他のデザイナーの作った星座の繋がりが視覚的に確認できます

2018年に参加した際、同社のブースでは、黒いボードに描かれたグラフィックレコーディングのパネルに、参加者や登壇者が付箋を貼っていくビジュアライズが行われていました。

今回は、今までと印象の違う取り組みだったので、このチャレンジの背景を沼野組の沼野友紀さんにお伺いしてみました。
お話の中で、Designshipが始まった当初から、カンファレンスの在り方や参加者が受け取る情報量も大きく変わってきたことを受けて、カンファレンスへの「参加ハードルを下げたい」「少しでもリフレクション(振り返り)の機会を持ってもらいたい」という観点で、参加者の現在地を可視化してみる取り組みを考えた、とのことでした。
星座を作る、という工程の中で、参加者が「考える余地」を作り、また最後に「星座に名前をつける」ことで自然と振り返るきっかけを生み出している点も面白いと感じました。

私が確認できた星座は全部で237人分。サービスデザインやデザインリサーチなど、この5,6年で浸透してきた職種が見えるのも特徴的というお話もありながら、同じアプローチを繰り返すのではなく、カンファレンスのテーマ、時代の流れやニーズを見極めて、コンテンツをアップデートし続けることの重要性を再認識しました。

また、私自身「リフレクション」と聞くと少し身構えてしまう部分がありましたが、今回の仕掛けのように短時間で簡単にできるということも新しい気づきでしたし、「リフレクション」自体が成長の一環として重要なプロセスだと感じました。

私はHR領域のプロダクトマネージャーとして、WEBやアプリのプロダクト以外にも転職というリアルな体験設計のプロジェクトにも参画しています。
今回の企画を通して、自分が自信を持ってできると思えるデザインの領域が増えていたことへの驚きや、勉強したいと思える領域も見え、自分自身のキャリアの棚卸しのきっかけをもらえたと思っています。

終わりに

Designshipのセッションは具体的なhow toというよりも、それぞれの登壇者の背景・ストーリーを重視して語られることが多く、一つの話題から私たちの事業・働き方を見直す素晴らしい機会となりました。
この機会を活かし、自分たちも、事業も成長していきたいと思います!

また、今回のDesignshipではリクルート プロダクトデザイン室のブースも出展いたしました!
ブース出展への思いをまとめた記事を公開中ですので、気になる方はぜひチェック!


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