『カーセンサー』だけじゃない!_事業クローズアップnote [自動車領域]前編
はじめに
「カーーセンサー・カーセンサー♪」 のCMでおなじみ。中古車情報を中心に車の購入や買い替えに関する情報を幅広く提供している『カーセンサー』。1984年10月5日に情報誌として誕生し、現在はウェブサイトやアプリなど多様なプラットフォームで展開している。
意外と(?)歴史の長い『カーセンサー』だが、振り返ってみると、業界のために何かできないか?と課題を設定し「業界初!」から「当たり前」を作ってきたことがうかがい知れる。上図のように、現在、リクルートの自動車事業は中古車情報の提供にとどまらない変容を遂げているのだ。BtoBプロダクトも展開しており『カーセンサー』掲載店に対する業務支援の拡大を目的とした新たなチャレンジも開始している。
そうしたプロダクトの企画・開発を担当しているのがプロダクトデザイングループ。今回は、自動車業界の変革に熱い情熱を注いでいる二人から話を聞いた。
「すっごく車が好きな人に比べると、車に対してなみなみならぬ想いをもっていたわけではないかもしれないけれど」と笑いながらも熱っぽく語る彼らと、リクルートの自動車事業だからこそ味わえるプロダクトづくりの面白さ、そして描く未来に迫る。
プロフィール
①自動車事業について
◆多様化するニーズを汲み取り、車の売買の最大化を目指す
――リクルートの自動車事業は、「『カーセンサー』のCMを見たことがある」というくらいの認識の人が多いかもしれません。改めて、事業内容について教えてください。
中山:自動車事業が提供する価値は「成約」すなわち、ユーザーの車の売買を最大化することだと考えています。まずは簡単に中古車市場のユーザー(消費者=購入検討者)とクライアント(販売店)の特徴について説明しますね。
ユーザーは中古車という一物一価な商材の中から、自分に合った(ぴったりの)車を見つけ出すことが必要です。そのユーザーに関してですが、近年は通常の現金での購入だけではなく、ローンやリースといった分割購入など購入手段が増えてきていますし、購入後も安心して車に乗れるようにアフターサポートが充実した店舗での購入希望があるなど、車探しにおけるニーズは多様化していると考えています。
また、クライアントはユーザーのニーズに合致する車を見極めて仕入れを行い、値付けなどの商品化・効率的な販促・実際の商談や契約行為・販売後のアフター支援、といった様々な業務を最少人数でこなしていく必要があります。
――中古車業界も多様化が広がっているのですね。
中山:そうなんです。ユーザーのニーズや車との付き合い方が多様化し続けていることを背景に、自分に本当に合った車を見つけ出す難易度が上がっていると思います。また、クライアントの皆さんも日々非常にお忙しい中業務を最少人数で推進されているケースも少なくなく、世の中の変化に対応するのが難しい方もいらっしゃるのが実情です。
そういった状況下で我々が間に入り、クライアントに対しては様々な業務支援プロダクトを、ユーザーに対しては多種多様な選択肢を提供することで、市場の健全なマッチングを促していくことが我々のミッションであると考えています。
――デジタルを活用したプロダクトで中古車市場の在り方を変えようとされているわけですね。具体的にはどういったプロダクトを提供されているのでしょうか?
嶋村:元々は、中古車の購入を検討しているユーザーと中古車を売りたい販売店とのマッチングを生み出す広告ビジネスが祖業となっています。
現在ではその点にとどまらず、「仕入れ」「値付け」「販促」「商談」「アフター」など、中古車販売店の一連のバリューチェーンに対して複数のSaaSプロダクトを提供し、クライアントの業務支援も行っています。
さらに、(冒頭の話にも繋がりますが)ユーザーのニーズの多様化に対応するサービス展開も実現しています。例えば「通常の現金購入」に加え、「ローンやリースといった分割購入」など中古車購入に関する選択肢を提供したり、また購入だけでなく、ユーザーが今保有している車の売却先探しを支援したりといったところです。近年では新車を扱う領域にもチャレンジしています。
以上から、ユーザー・クライアント双方の変化を汲み取り、様々なプロダクトを通して多種多様な選択肢と手段の提供を実現していることを感じていただけるのではないでしょうか。
②自動車事業でプロダクトをつくる醍醐味
◆カスタマーには選択肢を、経営者には意思決定の合理化を
――次に、自動車事業で働く面白さについて教えてください。お二人は、この仕事のどのような部分に魅力を感じていますか?
中山:ひとつは「不確実性」ですね。自動車事業では「プロダクトの力で従来の商習慣を再構築する」という壮大なチャレンジをしている最中で、いわば未来の常識を創造していく段階です。何が正しいかが定まっていないこの状況を楽しめるか、それとも苦しいと感じるかでは大きく異なると思います。
嶋村:確かに、その差は大きいですね。社内外の様々な方とお話していると「ある程度の道筋が見えていて、それに向かって一歩一歩着実に進むことが好きなタイプ」と「未知の場所に足を踏み入れて、何かを試すことを好むタイプ」に分かれる気がしています。自動車事業にフィットするのは、おそらく後者じゃないでしょうか。私自身も自分の好きな場所に行って自由に挑戦したいタイプなので、きっと向いているのだと思います。
――具体的に、どんな案件にやりがいや手応えを感じましたか?
中山:2つ紹介させてください。まずは、『カーセンサー』における「360度画像」の開発ですね。ユーザーが車の外装や内装を360°好きな角度から閲覧できる機能(商品)です。オンライン上のクルマ探しではどうしても情報の非対称性が起こりがちですが、視覚から得られる情報量を増やすことでそれを解消したいと考えました。
というのも、これまで『カーセンサー』に載せられていた車の画像は、綺麗な部分だけを撮影していたり、状態が良くない部分を隠したりしているというケースがあり、実際に販売店に足を運ばないと本当の状態が分からないという問題があったんです。しかし、360度画像であれば全体が見えるためメディアを通じて情報の非対称性が薄まり、安心して購入できる世界を作ることができます。
このチャレンジは非常にやりがいがありました。購入検討者がオンライン上で車の状態を把握しやすくなったため、購入意欲の高い状態で販売店を訪問でき、結果的に来店後の購入成約率も高まったようです。別件で他社の方と打ち合わせした際にも「360度画像はだいぶ浸透して使われているよね」などとコメントをいただくことも多く、カーセンサーがこれまで紡いできた、世の中の「当たり前」を作り出すことに自分も貢献できたなと感じることができました。
※「360度画像」の概要はこちら
また「大規模な商品統廃合」も非常にやりがいのあるプロジェクトでした。中古車業界は古くからの通例が根強く残っており、ある種、感覚的な販促を重んじる文化が残っていました。そういった中で、提供価値である「成約」の最大化を目的として、クライアントの限られた予算を最大限効率的に運用する為に、一部の商品の見直しや広告予算の自動最適化プロダクトを開発したんです。
加えて、プロダクトの改善だけに留まらず営業の提案活動から分析のプロセスに対しても踏み込みました。市場全体に対する「あるべき販促支援の在り方」のアップデートを促すことができ、事業の未来にとって重要な文化の醸成に繋げられたと感じています。
嶋村:私も2つあって、ひとつは「購入者向けの保証サービス」です。中古車が敬遠される理由の一つは、やはり故障のリスク。大手ディーラーなどでは1年間の保証を提供しているケースもあるのですが、資金力のない小規模な店舗ではなかなかそこまでのサービスは難しい。そのことで購入予定者の選択肢が制限される状況があったんです。そこで、小規模店舗でも横断的に取り扱える保証サービスを開発しました。
もうひとつは事業者向けに開発した「業務支援や経営支援」のプロダクトです。小規模な販売店ではお一人で経営されている場合も多く、意思決定を勘や経験に頼っているケースも少なくありません。もちろんそうした経験はとても貴重なものですが、それだけでは限界もある。実際、1年以上経っても売れない自動車が溜まってしまうなどの状況も見受けられました。そのため、『カーセンサー』の物件データや価格データなどを活用し、購入検討者の行動データを分析しながら業務を合理化するプロダクトに取り組みました。
この2つのプロダクトは、私が実現したかった課題解決の具体例だと思っています。
③不確実な事業の未来と、面白さ
◆今は自動車業界のターニングポイント。キャリアやスキルを磨ける機会に溢れている
――自動車事業のユニークネスや可能性をとてもよく理解できました。最後に、自動車事業の仕事に興味をお持ちの方に向けたメッセージをいただけますか?
中山:プロダクトマネージャーとしてスキルや経験の幅を広げていきたいと思っている方は、ぜひ自動車事業にチャレンジしていただきたいですね!
リクルートの自動車事業は「ビジネスの価値を高めるためのプロダクトデザイン」と「性能や機能の向上を突き詰めるためのプロダクトデザイン」の両方を手掛けることができる、非常にやりがいのある仕事です。
加えて、社会的なインパクトもあるので、業界にとっての成長に繋がるようなプロダクトの開発に魅力を感じる人と一緒に働きたいと思っています。
嶋村:私自身も、社会的なインパクトを与えられる点に大きなやりがいを感じています。とりわけリクルートは資産と資源を活かして「世の中の当たり前を作り出す」ことができる会社だと思います。その一方で、大企業でありながら裁量と自由度のバランスが優れているのも大きな特徴ですね。
さらに言うと自動車事業は大きすぎない組織なので個人の裁量も広範囲になります。プロダクトマネージャーとしての経験を積む上で、様々な機会に恵まれていると思います。
――しかも、今後の可能性も非常に大きくチャレンジングな事業であると。
嶋村:そうですね。現在、自動車事業では先進的な戦略を推進しています。これまでは『カーセンサーネット』が主力プロダクトでしたが、これからは流通のラストワン“マイル”の部分であるBtoCのマッチングをより最大化するための、販売店業務支援を拡大していこうとしています。
BtoCマッチングではまだまだ白地も大きく、攻めの成長戦略を描いているので、チャレンジの機会も多いです。
また、デジタル庁の設立で国主導のデジタル化が本格的に進んでいるタイミングで、自動車業界全体もまた変革を迫られています。ある意味ターニングポイントとも言える今、自分の発想や知識で、まだ世の中にないプロダクトを手掛けられるチャンスは確実にキャリアとスキルへの好影響につながるはず。ぜひ一緒に世の中の非効率・非合理を変えるチャレンジをしましょう!